第12話:秘剣
◆
はなびの怪腕と、かざりの刀がぶつかり合った。
互いに一歩もゆずらない攻防。
本来鬼の力は並外れている。一撃で人体を叩きつぶす。
けれどもかざりは恐れない。
勇敢だからではない。
天才だからではない。
かざりは気が弱く、天才には遠い。
かざりは思い出す。
あの夏の合宿(?)を。
百目鬼家の別荘で、はなびに付き合ったバスケットボールの練習を。
はなびのディフェンス。シュート。ドリブル。そのすべての動きを。
覚えている。体が覚えるほどに、熱中した数日間。
はなびの動きは、覚えている。
この戦いを、あのバスケの練習の続きだと思う。
だから、怪腕がくり出す暴風のような攻撃をかわし、前に踏み込む。
刀が振られる。
一撃で骨まで斬る刃を、はなびの鬼の腕はその甲殻で受け止める。
二度、三度、四度。
正面からまっすぐ切り込むだけでは、鬼の腕は斬れない。
怪腕の甲殻を断つことはできない。
はなびがすきを見せない限り。
けれども、今は戦いのただなか。
戦いを好む鬼の血が、はなびをつき動かしている。
五度。六度。七度。
刃が弾かれる。
かざりの上半身が泳ぐ。
おそらく、鬼の腕がかざりの動きに慣れたのか。
反撃。
怪腕が槍のようにかざりに迫る。
「かざり!」
はなびが叫ぶ。よけて、と。
けれども――
かざりは、
見届けているかざりの祖父は、
笑った。
「――秘剣」
それは。
相手を幻惑した後放たれる必殺の一撃。
七回の攻撃はその準備だ。
一回一回が相手に気づかれないまま、その意識をそらしていく。
相手がこちらの動きを見切ったと思った瞬間。
それとまったく異なる一撃を正確に差し込む。
自然に生じたすきをとらえるのではない。
相手を幻惑し、すきを強制的に発生させる。
ゆえに秘剣。
「残月」
はなびの左の怪腕が根元から断たれた。
しかし――
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