第9話:私ってやっぱり、鬼なんだって
◆
一週間が過ぎた。
一人で歩く高校からの帰り道は、暗く長く感じる。
その時だった。
突然僕は、鬼崎の家の人たちに呼び止められた。
「お嬢様が、あなたに会いたがっています」
その一言で僕は何も考えずに、用意された車に乗っていた。
一番驚いたのは、すでに祖父が乗っていたことだ。
案内されたのは鬼崎の家の屋敷。その一番奥。
まるで座敷牢みたいなところに、はなびが座っていた。
一目見て、息が止まった。
はなびはヒガンバナが描かれた着物を着ていた。
その理由。
はなびの腕が――四本あった。
あれじゃ、洋服は着られない。
普通の腕が二本。
そして、肩からもう二本、腕が伸びている。
人の腕じゃない。色は濃い赤。硬い甲殻に覆われている。
怪腕。鬼の腕だ。
「……あ、来てくれたんだ。かざり」
はなびは僕を見て弱々しく笑った。なんて言えばいいか分からず、僕はバカなことを言った。
「学校に来ないから、心配したよ」
「あはは……これじゃバスケはできないよね。
逆に考えれば便利かな? う~ん、でも反則?
あれ? バスケに『四本の手でボールをドリブルしてはいけない』なんてルールあったっけ?」
はなびは変なテンションでそんなことを早口で言ってから、ため息をついた。
「私ね、やっぱり鬼だったんだ」
「うん」
「私は誰も傷つけたくない。だからずっと抑えてきたんだ。
だけど、あの試合で、つい力を出しそうになっちゃった。頭に血がのぼって……」
「でも君は、誰も傷つけなかった」
「たまたまだよ。よく分かったんだ。私ってやっぱり、鬼なんだって。
何かあったら、人間なんて簡単に殺しちゃうかもしれない。
この腕は、私の鬼の血の結晶みたいなもの」
僕は何も言えなかった。
その時、祖父が口を開いた。
「鬼崎の娘。我々久賀の鬼斬りがここに呼ばれた理由はご存じか」
「ええ。知ってます」
はなびは姿勢を正した。
「昔からの取り決めにより、久賀は鬼と戦いしずめる。だが、それは私ではない」
「え……?」
はなびの目が丸くなる。
「久賀かざり。私の孫がせん越ながら今回の
一瞬、何を言われたのか分からなかった。
僕が……はなびと戦う?
祖父は僕を見つめて、当然のようにこう言った。
「鬼の血という病、見事に
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