第21話 避難所を守れ

(ファイアーバレット!)


 空へと飛び立った僕は空からの爆撃を開始した。ゴブリン達を倒すことよりも、よりたくさんのゴブリンの気を惹くため、広範囲に魔法を振りまく。


「ギャワァァァァ」


 さらに、あえて低空飛行で飛ぶことで、ゴブリン達に攻撃が届きそうだと思わせる。僕が気をつけるべきは、ゴブリン達が闇雲に投げてくる石とどこかに潜んでいるかもしれないゴブリンシャーマンの魔法だ。


 ゴブリン達の気を惹きつつ、僕は探知を使いながらゴブリン達の上位種を探す。その結果、ゴブリン達の集団の後方にシャーマンが十体、剣を持つゴブリンナイトが二十体、さらにはこのゴブリン達を従えているゴブリンキングの存在を確認した。


 まずはあいつらが来る前にできるだけゴブリン達を減らさないといけないな。できればその間に人間達の援軍が来てくれるといいんだけど。


 一方、まるとルナは僕との約束通り、無理に深入りせずに陽動にかからず街に向かう個体を各個撃破してくれている。


「必殺、かみつき攻撃だわん!」


「こっちは、猫パンチだにゃん!」


 現在、まるのレベルは15に上がっておりスキル〝かみつき〟を手に入れた。レベル14のルナはまだ猫パンチしか持っていないので、ひょっとしたらルナも15に上がったときにスキルが手に入るのかもしれない。


 攻撃力はまるの方が高いので、楽々とゴブリン達を退治している。ルナは一撃では倒せず、何度か攻撃して倒している状況だけど、素早い動きで相手を翻弄し安定した戦いぶりを披露していた。


 これなら上位ゴブリン達が来るまで大丈夫そうだ。


 そんな状態で戦うことおよそ三十分。少し、まるとルナに疲れが見え始めた頃、ようやく援軍が到着した。


「な、なんだこのゴブリンの数は!?」

「まさか、本当にゴブリンどもが……」

「おい、見てみろ! ゴブリン達の死体があんなに!? どうなってるんだ!?」

「まさか、あそこにいる犬と猫がこれを!?」

「冗談だろ!?」


 集まったのは十数人の守護者ガーディアン達。そのほとんどがEランクといったところか。正直、上位種相手には厳しそうだ。これはきちんと手助けしないと全滅もありえるな……


「とりあえず、ゴブリン達を街に近づけるな! 街の人達の命は俺達にかかってるぞ!」


「「「おう!」」」


 十数人の守護者ガーディアン達が一斉にゴブリン達へと襲いかかる。一対一だとゴブリンと互角の彼らも、二対一の状況を作ることで優位に戦えている。


 もちろんそれは、僕が大半のゴブリン達を引きつけているのと、ルナとまるが彼らのサポートをしているからだ。


 だがそれも、そろそろ終わりを迎える。一向に街に到達しないことに業を煮やしたのか、上位ゴブリン達が動き出したのだ。


「気をつけろ! 上位種が現れたぞ!」


 僕らと守護者ガーディアン達の活躍で百体ほどのゴブリンを倒すことができたが、まだ二百体ほど残っている。それに加えて上位種が参戦してくるのだ。ここからは、本気でサポートに徹しないと犠牲者が出てしまうだろう。


 僕は上空を旋回しながら、複眼を最大限活かし全ての状況を把握する。


(そこだ!)


 ゴブリンシャーマンが放ったストーンニードルを、守護者ガーディアンに当たる前に結界で防ぐ。


「あ、ありがとう!? でも、一体誰が??」


 助けた守護者ガーディアンがキョロキョロと辺りを見回している。だけど、遙か上空にいる僕は見つけられまい。


 僕は十体いるゴブリンシャーマンの魔法を全て見切り、タイミングよく結界で防いでいく。守護者ガーディアン達がその度にキョロキョロするのが面白い。


 そのうち、シャーマン達が僕を狙って魔法を放ち始めた。だが、かなり距離があるので躱すのは簡単だ。


「あ、あいつらなんで空に向かって魔法を?」


「わからんが、今がチャンスだ。今のうちに残りのゴブリンを減らすんだ」


〈ルナ、今のうちにゴブリンシャーマンを倒してきて欲しい。まるはゴブリンナイトの相手を頼むよ〉


〈わかりましたにゃ〉


〈オイラに任せるわん!〉


 守護者ガーディアン達が参戦したことで生じた混乱に紛れて、ルナがゴブリンシャーマンを一体ずつ片付けていく。こっちは大丈夫そうだね。


 まるの方は、ゴブリンナイト二十体を正面から相手しなければならない。ここからはまるのサポートに集中しよう。


「かみつき攻撃だわん!」


 特に工夫もなく、一番近くにいたゴブリンナイトに飛びつく柴犬まる。一体だけならいいが、二十体を相手にするには安易すぎるね。


 僕は、味方がやられている隙にまるを狙ったゴブリンナイトを、ストーンニードルで串刺しにする。まるはそのことに気がついてもいない。この戦いが終わったら、もうちょっと周りを見て戦うことを教えよう。


 しかし、僕の完璧なサポートがあれば二十体のゴブリンナイトもまるで十分対応できるだろう。そうなると、問題はゴブリンキングなのだが……さすがにこれはまるとルナじゃ厳しそうだ。


 かといって守護者ガーディアンに任せるのはもっと厳しい。仕方ない。ここは僕が直接相手をするしかないか。


〈ゴブリンキングは僕が相手する。二人は守護者ガーディアンのサポートをしながらゴブリン達の数を減らしてほしい〉


〈はい、サポートありがとうございましたにゃ〉


〈オイラの活躍見たのかわん!? オイラに任せておけば安心だわん!〉


 まるの方はちょっと心配だけど、ルナがいれば大丈夫だろう。二人にこの場を任せ、僕は今まさに動き出そうとしているゴブリンキングの背後へと回った。


(ファイアーアロー!)


 僕は上空から高速で降下しながら、ゴブリンキングの背中めがけてファイアーアローを撃ち込む。だが、今まで全てのゴブリンを一撃で倒してきた自慢の魔法がゴブリンキングには通用しなかった。


「ガァァァァ!」


 魔法に気がついたゴブリンキングは、驚異的な反射神経でファイアーアローを持っていた剣で打ち落とした。これは気を引き締めていかないとまずそうだ。


(おおう!? 危ない!)


 ゴブリンキングは、持っていた剣を反対の手に持ち替えて、地面にある石を拾って投げ始めた。これがなかなかの勢いで、危なく当たるところだった。


 しかも、こいつはなかなか賢いようで、僕があまりに高く逃げるとすぐにまるやルナ、守護者ガーディアンの方へと向かっていく。だから、ゴブリンキングの射程から逃れるわけにもいかない。


 まずは防御に徹して、動きを分析しよう。それから、体力を削って反撃に移るとするか。


 そう考え、できるだけ石や剣は回避し避けきれなかったものは結界で防いでいく。


「きゃぁぁぁぁぁ」


 そんな攻防を何度か繰り返していたその時、街の方から人々の叫び声が聞こえてきた。


〈ルナ!? まる!? 二人は急いで街へ! 侵略者アグレサーに襲われている!〉


〈にゃ!? まる、急いで戻るにゃ〉


〈それはまずいわん!? ルナの家族がいるかもしれないわん! 急いで戻るわん!〉


 これは僕のミスだ。戦いに夢中になってしまって、探知をおろそかにしてしまった。しかし、ゴブリンキングの相手をできるのは僕しかいない。僕がこの場を離れるわけにはいかない。


 探知の結果は、ネズミ型の侵略者アグレサーだから間に合いさえすればルナとまるの二人で大丈夫なはず。


 守護者ガーディアン達は街からの悲鳴には気がついていないようで、ゴブリン達と戦い続けている。でも、役割分担としてはその方がいい。


 彼らには僕がキングと戦っている間に、ゴブリン達の数を減らして貰おう。


 僕はルナとまるを信じて、再びゴブリンキングに相対する。

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