俺は小説家になりたいの!報酬を寄こせ!

Gonbei2313

第1話



 小説家を夢見る貧乏騎士とは私の事である。名は、セルギウス。



 私は物心がついた時に、その野望に気付いた。小説家になる。作家になる。そう決めた。私は小説家だ。なりたいではない。なるのだ。



 転生した事は些細な事だ。私は小説家として生きると決めている。それ以外はどうでもいい。至極どうでもいいのだ。しかし、そんな小説家である私には非常に大きな問題……つまり悩みがある。



 それは私が貧乏である事に起因する。



 この世界は恐らく、中世頃の文明水準だ。紙はあるが、大量に手に入れようと思うと資金が足りない。貧乏騎士の私では、手が伸ばせない。公的な文書のための紙を買うので手一杯である。



 私は必死に考えて過ごした。時にはその野望から離れ、己の肉体を鍛えて気を紛らわしたが、それでも飽くなき創作意欲は抑えきれない。従騎士として働きつつ、戦場を駆け抜けても小説家への野望は消えなかった。



 15歳になり、私は正式な騎士となった。この世界では15歳で正式な騎士というのは珍しいらしく、周囲から期待の眼差しを感じるようになった。だが、それでも私の小説家の野望は消えない。むしろ、メラメラと燃え滾り、全てを焼き焦がしてしまいそうだった。



 そして天啓を得る。それは武具の手入れをしていた時だった。



「武功をあげて稼げば良いのではないか!」



 私は思わず声を荒げた。私は貧乏小説家騎士。今は筆ではなく、剣が最も身近にある。そして、幸いな事に私は戦い慣れている。使える才能は全て使うのが創作家の性だ。今の私にあるもの……それを全て利用して、真の小説家になる。



「こうしてはおれん。早速、準備だ。兵を集める。資金は少しある。全部だ。全部を使う」



 私は有頂天になっていた。私の悪癖でもある。この気づきは私の人生を大きく変え、野望を大きく前進させると信じて疑わなかった。



――



「策は我が手中にある」



 家にある宝飾品を全て売り払い、領地も他の騎士へと売った。正確には貸している。建前はそうしているが、面倒なので押し付けた。邪魔でしかない。私は金が要る。野望を叶えるのだ。



「……しかし、自分で兵を集めるのは初めてだ」



 私は部屋をウロウロしながらつぶやいた。少々、不安だった。今までは師となる騎士がやっていた。しかし、今はその師となる騎士は側にいない。書簡を送って意見を求める事もできるが、今の王国の状況では師の騎士も手が空いていないだろう。何より、時間が惜しい。



「何としても兵を集めなければ」



 私は不安をかき消すために、力強く拳を握る。



 国内は荒れに荒れている。王国は存亡の危機にある。それも外敵によってそうなっているのだ。魔物というバケモノが跋扈している。王国はずっと苦戦を強いられ、全てが後手に回っている。



 そう。小説を売るためにも民には平和が必要だ。私が全てを覆す。起死回生の一手を叩き込み、この王国に平和をもたらすのだ。経済は成長し、金が増える。娯楽に小説を手に取るような……富裕層が生まれる。完璧だ。



 しかしそのためには、人手が必要だ。私だけでは足りない。



「傭兵募集所を町に構えるか……」



 そろそろ、冬が到来する時期である事を思い出した。作物が不作だった農民は傭兵になる。この冬を乗り切りたい流れの傭兵は常にいる。国土そのものが今や戦場。戦には困らない。



 私はその戦を無くそうとしているのだが、それは今どうでもいい。



 祭りの時期に合わせて私は動いた。まずは町に赴いた。屋台が並ぶ市場に、募集所を設置する。この世界では珍しい事ではない。人が欲しいのだから、人目に付く場所を選ぶのは当然の結果だ。



 夕方まで募集所を開き、夜に募集をやめた。傭兵は順調に集まった。私が「最年少騎士」である事が良い方向に働いた。一発逆転を夢見る貧しい農民が良く集まったのだ。そして、中には歴戦の風格の傭兵も多くいた。腕っぷしで最年少騎士になった私の噂を聞き、その者達もまた野望に燃えていた。



「貸し切りだ! 好きなだけ飲み食いしろ!」



 非常に良い滑り出しに私は気分が良かった。集まった傭兵達のために酒場を1つ貸し切って、酒宴をひらいた。別に、這う這うの体でやってきた農民に情をかけた訳じゃない。私の気分が良いだけだ。



 それから武具すら持っていない農民出身者に武具を貸与した。武具も無しに戦場へ来ても邪魔なだけだ。戦って金を稼いで貰わねば私が困る。私が欲しているのは共に戦場へ立つ友である。



 各地の村へ移動しつつ、道中で小勢の魔物を粉砕していった。この世界の魔物は醜悪だ。可愛げの欠片も無い。知性や理性も無い。魔族が自身の軍として使うためだけに、生み出された人型のバケモノだ。これから大金を得るため、何より小説を売るために、徹底的に叩きのめす所存である。



 戦い慣れていない者達が多かったが、歴戦の傭兵達が良く引っ張ってくれていた。各地の村を回って、兵を集められたのもそのお陰といっても過言ではない。



 勇ましい……というよりも、金銭欲に素直すぎる彼らは私の傭兵団の空気を明らかに変えていた。私も黄金に今は魂を売っているのもあるだろうが、新兵達に闘争心を植え付けるきっかけとなっていた。元々、明日の身も知れぬ者達の集まりだ。自然と貪欲になっていく。



 1か月もせずに、目標数の兵がある程度は集まった。想像以上に早い。私は驚きつつも、喜びで胸が高鳴った。実際、膝を折って天に感謝した。




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