第31話
壁際に男がずらりと十二人も正座で並んでいる。一番若い者で二十歳後半ぐらいだ。その瞳は青く、クライゼンが知る限りこの国で青い瞳を持つ人はいない。やはり外の国からやってきた者たちの集まりなのだろう。
「じゃあ最初の質問。君たちは何者?」
クライゼンの問いかけに静寂が答えた。少し質問が抽象的過ぎたようだ。誰も答える様子がない
「じゃあ‥‥‥。そこの君」
少しの間静寂が支配した後、一番若い蒼い瞳の男を指さした。すると彼は棒読みな口調で話し始めた。
「…俺の名前はエルブル・ヘルスビス」
「じゃあエルブル。答えて。この組織は何人で構成されていて、何を目的にして今まで何をしてきたのかを」
「この組織の名はイレブン・クロー。全員で27人いる傭兵部隊だ。依頼された人物を暗殺し、死体を処理して金銭を稼いでいる。多分だが今までに百人以上は葬っている筈だ」
クライゼンは同じ質問をもう三人にも繰り返した。そして得られた答えは皆だいたい一緒。エルブルと名乗る彼が言うことは本当のようだ。
「誰に雇われている?」
クライゼンが尋ねた。
「C-TAT社のCEOだ」
「どうしてC-TAT社が傭兵を雇っているの?」
「それは分からないが、俺たちはC-TAT社に雇われているわけじゃない。あくまでCEOの私兵部隊だ。彼の依頼以外で動くことはない」
「ほかにも傭兵組織は存在するの?」
「存在する。中にはC-TAT社に属する組織もあると聞いた。だが数はそこまで多くない筈だ。俺が知っているだけでも三つしかない」
同じ質問をリーダーに尋ねると、彼の口からはもう二つ組織の名があげられた。
「じゃあ次、五年前にフェルナンドを殺した?」
その質問を右から順番に一人ずつ聞いていく。クライゼンの心の中では一つ心配事があった。フェルナンドを殺した人物がこの組織には居ない可能性だ。
だがそれと同じくらい、この組織がフェルナンドを殺した可能性は存在する。多くの場合、裏稼業では縄張りを敷いている。もしフェルナンドがこの街で殺されたというなら、この街を裏で支配する組織が関わっている可能性が大いに高い。
そしてクライゼンのその勘は見事に当たっていた。
「私がフェルナンドを殺しました」
クライゼンはそう言った彼女の顔を近くで見たとき、唖然とした。どうして今まで気が付かなっただろうが不思議でならなかった。彼女は四十代ぐらいの女性で、顔にはナイフで切られて血みどろにはなっているが、よく見ればだれか分かる。
彼女はフェルナンドの母親・ローサであった。
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