あの5歳の日からレノは、もう何十何百もの命を奪ってきた。


それはいつもスバルから指示される。


「はい、コレ」

ターゲットとシチュエーションを書いた紙を渡されたレノは、それにより適切な方法、武器、その場に適した衣装やメイクなどを考え、実行に移す。


失敗をしたことはない。

レノの嗅覚はヒトの急所を適切に嗅ぎ分け、一撃でしとめる。

怖いとも思わないかわりに、酷いことをしているとも思わない。


だってそれは、スバルがやれと言ったことだから。


レノの絶対であるスバルからの指示は、レノにとって絶対だ。しなければならないこと。やって当然のこと。


それに、それをきちんとやり遂げれば、スバルは頭を撫でてくれるのだ。

「よくやった」

ぶっきらぼうに、細いけれど骨太の指で。

そして二人で手を繋いで家に帰る。

それがレノの日常だった。


なぜスバルがそのような指示をしてくるのか。

なぜレノはスバルと二人なのか。

なぜこんな暮らしをしているのか。


そんなことどうでもよかった。

スバルのその手さえあれば、それでよかった。


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