第16話 夢喰らう"愚者"と記憶 其の六 『四季編α』Ⅱ

草達が風に揺られ、一人の美しい銀髪の髪がなびく。寂しそうな彼女はどこか遠い目をしていた。そんな彼女に四季は声をかける。


「やっぱ此処に居たんだな。探したぞ咲夜。」四季の声に彼女はそっと四季の方を向きあたかも全てを知っているかのように告げる。


「"創られた世界で私と貴方は幸せになれるのかな"?、血で染まった私達は償えるのかな?」


「何を言っているんだ咲夜、この"世界"は 戦争もない優しい世界。だからもう汚す必要はない。」


「本当にそう?、貴方は血塗られた世界じゃないと言った。それなのに何で剣も銃もまだ持っているの……」


「それは捨てる暇がなかった。」


「貴方は私にそうやって嘘をつくの?、また私一人を護るために。此処にリリアナという変な"人間"が来たわ、それで私も全て知っているのよ。」


「そうか、なら咲夜。我儘ですまないがまた俺とこの"世界"で暮らさないか?、今度はお前を置いて行ったりはしない。」


「男に二言はない?、これで最後よ。私に嘘つかないでよね。」


「分かってる、前の"世界"では俺が先に逝ってしまったもんな。」


「笑い事じゃないんだからね。」


「ああ、すまんすまん。」


「あとちゃんと秘密は共有して。言葉じゃなくても分かるけど、言葉で伝えて欲しいの。」咲夜は優しく笑い手を四季の前に出した。そして四季はその手を握り言う。


「ああ、分かってる。この"未完成な世界"で、咲夜の命尽きるまで傍に居るよ。

あの日伝えられなかった言葉もちゃんと言うよ、約束する。」と。



「"世界"が始まったばかりとゆうのにまるでハッピーエンドだね。"四季"、咲夜。」

会話をしていると空からリリアナの声がした。空見上げるとリリアナがそこに居て地面に着地した。


「何がハッピーエンドよ、戦争が消えても「"異変"」が有るからハッピーになれないわ。

それに私が一番先に寿命がくるじゃない、そしたらまた貴方が独りになっちゃうわ。」


「確かに、君だけ本当の"人間"だもんね。まあ三人が集まったんだ、折角だし拠点に移動しよう。」指を鳴らすリリアナすると地面からまたもや黒紫の魔法陣が生まれる。


「これに乗って二人とも。移動するから。」俺と咲夜は指示に従いその魔方陣に乗るのだった。




「ここが拠点?、豪邸過ぎない?、まるで武士の家みたい。」それは咲夜が今言ったように本当に武士のような家で訓練所と書かれている所やその近くに池や弓道所のようなものもあった。



「この家は好きにして良いよ。僕はこの家の書庫に居るから二人のプライベートは守られているよ。だからイチャイても平気だよ。」




「んな気遣いいらねぇよ。それに俺らは前の記憶も在るんだぜ、そんな若くねぇよ。」



「そうよ、リリアナ。体は若くても心まで若くないんだからね。」


「そうだったね。僕はこれから書庫でやることがあるから二人はゆっくりしてて、また用があったら来るから。」


「あいよ、なら行こうぜ咲夜。」


「そうね。」とリリアナと別れ咲夜と共に拠点に入る。武士のような家と言っても中もやはり広くリビングがあったりと様々な家具やらがあった。


「いざ、二人きりになると暇じゃないか?」


「そんなことはありませんよ。家具やらいろいろと確認したいことだって沢山ありますし、貴方と違って暇じゃないです。」


「そうか…。」と俺はソファーに座り溜め息をつく。咲夜は一通り確認し終ったのか床に正座で座り、太ももを手でさす。まさかと俺は思いつつ聞く。


「それは前のようにしてくれるのか?」


「はい、貴方が好きだった膝枕ですよ。」


「いつ以来だ?、咲夜が膝枕してくれるのは。」


「それは大分昔のことですよ。」とそれから俺と咲夜はいつも通りの会話をしてこのひとときを楽しんだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る