山奥のペンション旅行が、「白の夜」を境に現実ごとバグりはじめる――読書と芸術が怪異の入口になるホラー作品。
草凪梓と久坂茉莉は、春の連休に山奥のペンション「夕星荘」へ遊びにいきます。料理も交流も、目的の芸術鑑賞も大満足……「月誕祭」が始まる前までは。
本作品はホラーですが、怖がらせ方の前に「人」が面白いです。
梓は本・物語への執着が強いタイプ、茉莉はノリと行動力で前へ行くタイプ。会話の温度差が気持ちよく、序盤は旅ものの楽しさがちゃんと出ます。
宿で出会う人々との距離感が絶妙で、信用していいか迷う感じが、後半の緊迫シーンで効いてきます。
後半のシーンに繋がるという意味では、舞台設定も効いてます。
富永弥の物語がモチーフになっている絵画、高遠春輝の作品への違和感、夕星荘と富永弥記念館ができた理由。
舞台設定がただの飾りではなく、そこに配置されることに意味があります。
後半の怖さは、いきなりドン、とくるのではなく、ルールが崩れる感覚で上がっていきます。
空の廻転、時間の崩れ、空間のゆがみ……。
そこから一転、後半は逃走・突破の連続で、「HERO」的な展開が入ってきます。
しかも敵の動きに負担や癖が示され、ただの理不尽ではなく、勝ち筋が見える作りになってるのが気持ちいいです。
物語初期の平和が崩れて、「白の夜」から現実が壊れ、そこから生きて帰れるのか?
一本の映画を見た感が残るため、読むのであれば、一気読みをおすすめします。