第51話 イコアライザー

失点直後、神龍高校の選手たちで集まる。

警戒していたフリーキックなだけあって、これは痛い。

「大丈夫 大丈夫!

まだ時間あるから、点取りに行こ!」 

右サイドバックの松田先輩はチームを鼓舞する。

「ミーティング通りファールは減らしていこ!」

キーパーの阿部先輩も声をかける。


 

 ピー

神龍高校ボールで試合が再開する。


神龍高校はダウンスリーを上手く使ってビルドアップを成功させる。

東大阪工業高校のハイプレスが上手く機能しない。



 ボーン

東大阪工業高校の①キーパーの早坂がロングボールを蹴る。


⑪シャドーとインサイドハーフの小泉先輩が競り合う。

⑪シャドーが落下地点に入る。


 バン

小泉先輩が⑪シャドーに体を当てて、ボールの落下地点に入る。

ファールにもならない程度に体を当てた。


 ピタッ

ロングボールを胸トラップしてボールを右にずらす。

小泉先輩が右を見る。


 ボーン

小泉先輩が右サイドの裏にロングボールを蹴る。



右サイドハーフの佐藤が走る。

相手の左センターバックの②斎藤が寄せる。

右サイドで②斎藤と佐藤の1対1。


 ポッ

佐藤が左にボールをズラす。

すぐに、クロスモーションに入る。

②斎藤がクロスをブロックしようと足を出す。


 ポン

しかしこれはキックフェイント。

縦にボールを蹴って縦突破をする。

②斎藤を抜く。



そのまま中に侵入する。

ペナルティエリア内に入る。

位置は右斜め20゜


「ハイ!」


「ハイ!」


左ウイングの春日先輩とセンターフォワードの大宮先輩が中でボールを要求する。

2人はデフェンスがマークについている。


 左足一閃

佐藤が左足でシュートを蹴る。


 バーン


しかしシュートはポストに当たり、ゴールラインから出る。

ゴールキックになる。



「俺に出せよ」

春日先輩はご立腹だ。

大宮先輩もご立腹だ。


小泉先輩の技術と佐藤の突破力が見えた良いシーンだった。



シュートが外れた後、佐藤に幕井が寄る。

耳元で幕井が囁く。

「次、擬似カウンターするから準備しといて。」



神龍高校ボール。

ビルドアップのシーン。

渡辺先輩がボールを持っている。


幕井は下がらずダウンスリーをしない。

小泉先輩と日村先輩と幕井の3人の中盤は、相手のフォワードとボランチの間に立つ。

相手のボランチは引きつけられる。

バイタルエリアが大きく空く。


「(次は下がんない?

クソ。 持ち手が多いな。)」

相手のボランチの⑥岩澤が悔しがる。

神龍高校のビルドアップの手数についてこれていない。


サイドバックの松田先輩と加藤が低い位置に立つ。

相手のウイングバックが引きつけられる。


大宮先輩がバイタルエリアに落ちる。

センターバックが1人マークする。

中央の裏のスペースが空く。


前線では、ウイングの佐藤と春日先輩2人と相手のセンターバック2人で2対2になっている。



 ポン

渡辺先輩がデ・ヨングに横パス。

佐藤と春日先輩がサイドから中央へ裏のスペースに走る。

大宮先輩が空けた裏のスペースを使う。


 ボン

デ・ヨングが裏の中央のスペースにダイレクトでロングボールを蹴る。

蹴ったボールの方向は佐藤。


佐藤には②斎藤がマークについている。

「(届く!)」

②斎藤がヘディングでロングボールを弾き返そうとする。


 ピョーン

②斎藤が跳び、ヘディングで跳ね返そうとする。

だが、

「届…かない!」

ロングボールの軌道が②斎藤の予測した軌道よりも高かった。

ロングボールは②斎藤の頭上を越えた。


佐藤が裏に抜ける。

ロングボールをトラップして前に置く。

ドリブルでボールを運ぶ。


キーパーと1対1。

キーパーの①早坂が前にポジショニングを置く。

佐藤と①早坂の距離が5mになる。


 左足一閃

佐藤がコントロールシュートを撃つ。


 ゴール


シュートは左のサイドネットに流し込まれた。

 


『ナイス!』

佐藤にみんなが駆け寄る。


この擬似カウンターは新チームになったときから練習していた。

ロングボールの狙いもミーティング通り。

②斎藤を狙うことはチームで共通認識を持っていた。



「よしよし。

練習通り。」

松長先生が喜ぶ。

擬似カウンターの練習のコーチは松長先生だった。

それだけにこの得点は嬉しい。


山崎監督が腕時計を見る。

「あと5分か。」


試合は1-1で同点。



 ピー

東大阪工業高校ボールで試合が再開する。



東大阪工業高校ボール。

相手のトップ下の⑩菅原が右サイドのアタッキングサードでボールを持っている。


加藤が寄せる。

1対1


⑩菅原がアウトサイドでボールを運ぶ。

加藤もついていく。

 チャリン

⑩菅原がインサイドで股を抜く。

加藤が抜かれる。


 ボン

⑩菅原が中にクロスを蹴る。

⑪シャドーにクロスが通りそうになるが、


 ドーン

右サイドバックの松田先輩が絞って、ジャンピングヘッドでコーナーキックにした。



「ここ凌ぐぞ!」

阿部先輩の声が飛ぶ。

時間的にもこれがラストプレー。

なんとしてでも守り抜きたい。


選手たちが守りを固める。


東大阪工業高校の右コーナーキック。

キッカーは⑩菅原。

幕井が⑥岩澤のマークにつく。


②斎藤は守備に残る。


東大阪工業高校の選手は阿部先輩の前に密集する。

神龍高校の選手もマークしないといけないため、阿部先輩の前に密集する。

選手同士でごちゃごちゃになる。

阿部先輩は人が密集して、中々動けない。


⑩菅原がボールを蹴ろうとした瞬間、守備のため残っていた②斎藤が走り出す。



 ポーン

⑩菅原が高速のグラウンダーパスを蹴る。

ボールの軌道はペナルティエリアアーク付近。

そこに走り込んでいたのは、②斎藤。

急なランニングなため誰もマークできていない。


 ドーーン

②斎藤が左足で豪快にシュートを右に蹴り込む。


 バーン


しかし、デ・ヨングが体に当ててブロック。

こぼれたボールは右サイドにこぼれる。


右コーナーキックを蹴った⑩菅原がボールを右足の前にトラップ。



「蹴ってくるぞ。

マークしっかり!」

松田先輩がマークの確認の声を出す。


 ボーン

⑩菅原が右足で高精度のクロスを蹴る。

ボールの軌道は⑥岩澤へ。

幕井のマークなため幕井は競り合う。


 ピョーン

⑥岩澤が幕井よりも高く跳ぶ。

幕井は競り負ける。


 ドーン

⑥岩澤がヘディングをする。

しっかり叩きつけている。


 パーン


阿部先輩が叩きつけたヘディングをなんとか右手で触り、ボールをかき出した。


 ドーン

幕井は阿部先輩が触ったボールをクリアし、コーナーキックに逃げた。


 ピー

審判が笛を吹く。

前半終了。

試合は1-1で折り返すこととなった。








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