赤のリベンジ

第48話 キャプテン

「やめる！

どういう事ですか？」

佐久間コーチが戸惑いながら質問する。

「言葉通り。

来年で監督をやめる。」

山崎監督の言葉は本当のようだ。

「来年やめたら、再来年の監督は誰がやるんですか？」

松長先生が質問する。

山崎監督は松長先生の顔を見る。

「再来年の監督は探してる。

俺は長年監督をやってるから、ツテはある。

再来年の監督は必ず見つける。」

山崎監督はそう断言した。

佐久間コーチや松長先生は受け止められない。

まさか、来年やめるとは。

「今年は、嬉し涙を見たいな。」

山崎監督が話す。

「毎年、毎年。

選手達の悔し涙を見るのはツライ。」

山崎監督は赤裸々に話した。

翌日の昼休み。

職員室。

　コン　コン

「失礼します。

山崎監督に用があってきました。」

「おお。

山崎。

あっちで話そう。」

安室先輩は山崎監督に呼ばれ職員室に来たのだ。

山崎監督は職員室の会議スペースに安室先輩を連れていった。

「今日呼んだのは、キャプテンについてだ。」

山崎監督が話を切り出す。

「アンケートの結果は、小泉と松田と阿部に票が入った。」

2日前の昼休み。

1年生、2年生、3年生のサッカー部を全員、会議スペースに呼びアンケートを実施した。

アンケートの内容は次のキャプテン。

キャプテンを誰にするかの投票だった。

投票結果は小泉先輩、松田先輩、阿部先輩の3人に票が入った。

1番多く票が入ったのが松田と小泉だ。

松田と小泉の票数は同じ。

よって、この2人からキャプテンを決める。

「安室、おまえなら誰を選ぶ？」

山崎監督は安室先輩に質問する。

安室先輩は即答する。

「松田です。

松田しかいません。」

安室先輩の顔と言葉に一切の迷いはなかった。

「分かった。

松田にしよう。」

山崎監督はキャプテンを松田先輩にすることにした。

「安室、もう1つ話がある。」

「え？」

安室先輩は疑問を浮かべる。

安室は、もう1つの話があるなんて思っていなかった。

「おまえに大学からの推薦がきた。」

「推薦？」

安室先輩にとって、初めての推薦だった。

安室先輩は大学が熱視線を送っていたと知らなかった。

「本当ですか？

なんで？」

安室先輩はまだ信用しきれていない。

「もともと、蒼天男子高校のキャプテンの6番の視察に大学の監督が来ていたらしい。

だが、おまえがあまりにもシュートを止めていたから大学側が獲得に動いたんだ。」

試合後に、観客席で安室先輩のことを見ていた中年の男性は大学のサッカー部の監督だった。

安室先輩のことを推薦した大学は、関西でそこそこ強いサッカー部。

「その推薦受けます。」

安室先輩はすぐに決めた。

「分かった。

が、親御さんにも話して決めてくれ。

大学の方には、推薦を受ける方向で話しておこう。」

安室先輩は大学の推薦を受ける方向で話が進んだ。

その日の部活。

山崎監督が選手達を全員集めた。

「キャプテンは松田だ。

頼むぞ。」

「はい。」　

山崎監督がキャプテンを伝えた。

松田先輩は『はい。』と言ったが、少し不安そうな顔をしていた。

「キャプテン頼むぞ。」

「松田キャプテン！」

2年生の先輩たちが松田先輩に話しかける。

松田先輩は2年生の言葉に、少し安心した表情をした。

山崎監督が口を開く。

「もう言ってる間に新人戦。

今日は新人戦のメンバー争いもかねて、強度の高い練習でいくぞ。」

『はい！！』

※大阪府の男子の部の高校サッカー新人戦は行われていません。

存在しない大会です。

この物語はフィクションなため、ご理解のほどよろしくお願いします。

練習後の寮までの帰り道。

寮生の1年生の佐藤と千葉と幕井の3人で帰っている。

「キツかった〜。」

千葉が空を見ながら言う。

練習の強度は高く、練習後は誰もが腰に手を当てていた。

「話変わるんだけどさぁ。

俺らの代のキャプテン誰だと思う？」

佐藤が他の話題の話をする。

千葉が最初に答える。

「う～ん。

デ・ヨングかな。

一番上手いし。」

千葉らしい理由だった。

たしかに、デ・ヨングはセンターバックなだけあって、キャプテンシーもある。

国体も経験しており、色々なことをチームに伝えることができそうだ。

「俺は朝日かな。」

幕井が答える。

「チームのみんなにも積極的に話してるし、明るいし、後輩と上手く接してそう。」

幕井は朝日に一票を挙げた。

「佐藤は誰なんだよ？」

千葉が佐藤に質問する。

「俺は幕井かな。」

「え？

俺？」

幕井は自分だと思っていなかった。

「なんで俺なの？」

幕井が佐藤に問う。

「うーん。

成長してるおまえを見てたら、そう思った。

なんとなく。」

佐藤の理由はふんわりしていた。

「俺がキャプテンは無理だな。

中学のとき補欠だし。」

幕井は小さい声でつぶやいた。

その後の大阪府2部リーグは、2試合を残して優勝が決定した。

来年からは大阪府1部リーグで戦うことになった。

新人戦1日前。

「これが新人戦のメンバーとスタメン。

メンバーは部室からユニフォームを取るように以上。」

山崎監督のメンバー発表が終わった。

フォーメーション4-3-3

神龍高校スタメン

1　　GK　　　阿部流星

2　　CB　　　涼太デ・ヨング

3　　RSB　　松田来斗(キャプテン)

4　　CB　　　渡辺直人

5　　LSB　　加藤亮平

6　　DMF　　日村望

7　　RWG　　佐藤晴久

8　　CMF　　幕井竜二

9　　CF　　　大宮涼

10　 CMF　　小泉海里

11　 LWG　　春日洋之助