1年生編
第32話 夏休み
幕井のパスミスと同時に試合が終わった。
選手達はグラウンドの真ん中に立ち、審判の笛と共にお辞儀をした。
その後、それぞれ相手チームの監督に挨拶をして今日の試合は終了となった。
神龍高校の選手達は山崎監督の下に集まる。
「こういう大事な試合で勝つことが重要になってくる。
勝利は手に入らなかったが、それだけ伸びしろがあるってことだ。
ポジティブに考えよう。
お疲れ様でした。」
『お疲れ様でした。』
山崎監督の声とともに解散した。
解散した後、選手達はストレッチをして着替えていたが、幕井はずっと考え込んでいた。
「(最後のパスミス。
なんで読まれた。
あの30番、完全に大宮先輩のパスコースを切ってた。)」
幕井は深く考え込む。
「今日の試合、良いプレーしてたな幕井。」
朝日が幕井に話しかけに来た。
「ありがとう。
でも、最後パスミスしたし。」
「まぁ、読まれてたな完全に。」
「うん。
だから、予測力上げれるように頑張る。」
「おう、頑張れ。
と言いたいところだが、俺だって試合に出るからな。
幕井よりも多く試合に出るから覚悟しとけよ。」
「うん。
俺も負けない。」
約2カ月後。
8月。夏休み。
幕井や朝日はトップチームの試合にも多く絡むようになった。
その後のリーグ戦は全勝。現在首位。
渡辺先輩と伊藤先輩は怪我が完治し、神龍高校サッカー部は万全の状態で試合に臨めている。
8月の上旬。部活終わり。
松長先生が1年生を集めた。
伝えたいことがあるらしい。
「デ・ヨングが国体近畿ブロックの大阪府代表に選ばれました。
拍手!」
パチパチパチ
選手達でデ・ヨングを称える。
デ・ヨングは『何で俺が?』というような顔だった。
「デ・ヨングには、より高いレベルでプレーしてもらってチームに還元してもらいたいです。
そして、もう一つ。
国体予選の1週間前に1年生だけで練習試合があります。
相手は同じ1年生の藤井寺商業高校です。
以上、解散。
あと、明日部活休みね。」
松長先生の話しは終わった。
デ・ヨングの国体メンバー選出の話と同時にとんでもない話が聞かされた。
『デ・ヨングおめでとう。』
みんながデ・ヨングを称える。
「ありがとう。」
デ・ヨングは嬉しさよりも自分が選出されたことへの疑問の感情が大きい。
「それだけじゃない。
BIG8の藤井寺商業高校と試合が出来るぞ。」
全員、BIG8と試合が出来ることに喜びを感じていた。
その後、みんな着替えて帰ろうとしていると。
「明日部活休みだしさ、俺の家でバーベキューしない?」
加藤がバーベキューの誘いをした。
「おーいいじゃん。
久しぶりにやろうよ。
加藤の家で。」
朝日は乗り気だ。
どうやら中入生は以前、加藤の家でバーベキューをしたことがあったらしい。
だが、高入生は。
「えっ。 俺らの学年のサッカー部、合計15人いるぞ。そんなに家に入るの?」
「てか、1日前からバーベキューなんて準備できるの?」
高入生は様々な疑問が頭の中に溢れる。
「みんな、明日用事ある。」
朝日が尋ねる。
シーン
誰も反応はない。
「じゃあ、決まりね。
明日、加藤の家でバーベキュー。」
全員用事はなく、明日、加藤の家でバーベキューをすることが決定した。
次の日。
寮生の佐藤と幕井と千葉の3人は、加藤がスマホに送ってきてくれた地図を頼りに加藤の家に向かった。
幕井はエコバッグを持っている。
加藤の家に近づくにつれ一軒家が多く立ち並んでいる。
目的地に着くと、どの一軒家よりも大きい白色の家が建っていた。
「えっ。 ここ?」
3人はあまりの家の大きさに言葉を失う。
ピンポン
幕井は家のチャイムを押すと。
「おっ 幕井来た!
遅かったね。
もうみんな着いてるよ。
早く入りな。」
チャイムから加藤の声がした。
家の敷地に入らせてもらうと。
「庭広っ!」
家の敷地のデカさに千葉は思わず声が出る。
眼鏡を掛けてる佐藤は、現実か確かめるために、眼鏡を外す。
「いや佐藤。
眼鏡外したら余計に見えないだろ。」
千葉がツッコむ。
「お邪魔します。」
3人は家の中に入る。
「おー、3人とも遅かったな。」
もう他のメンバーは全員来ていた。
1年生15人全員集合した。
「いらっしゃい。」
加藤の母親が挨拶しに来た。
「こんにちわ。
お邪魔してます。」
3人はちゃんと挨拶をする。
「全員揃ったし、バーベキューの準備しよう。」
加藤の声とともに、みんな庭に出てバーベキューの準備に取り掛かった。
男15人ということもあってか、あっという間に準備は終わった。
ジュー
肉や野菜を焼く。
香ばしい匂いが食欲を注ぐ。
「あっ忘れてた。」
幕井はエコバッグの中身を開く。
「3人で来る前にラムネ買ってきた。」
そう言って、エコバッグの中身から15本分のラムネを取り出し、みんなに手渡した。
「ありがとう。」
みんなは3人に感謝を伝える。
「てか、マネージャー2人は来ないの?」
森田が疑問を抱く。
マネージャーの山田と名村が来ていない。
「連絡したけど2人とも来ないって。」
加藤が答える。
「なんか、あの2人って喧嘩してんの?
あんま2人で話してるイメージないんだけど。」
森田は2人の仲に疑問を抱いた。
ジュー
肉と野菜が焼けてきた。
デ・ヨングと加藤がトングで皿の上に肉を置く。
「いただきます。」
みんな食べ始めた。
美味しそうに食べている。
会話も弾む。
幕井の隣にいるキーパーの八木に幕井は質問した。
「八木って、中学の時どこのチームでサッカーしてたの?」
「大阪府内の強豪クラブ。
ベンチだったけど。」
「え?
八木レベルでベンチなの?」
幕井は驚く。
幕井は八木のキーパーとしてのレベルの高さを尊敬していた。
「俺とスタメンのキーパーの技術差はそんなになかったんだけどね。
何なら、キックとかなら俺の方が上手かったし。
でも、とにかく身長差があったんだよね。
俺、高校入学当初166cmだったんだけどスタメンのキーパーは中3で178cmくらいあったんだ。
そりゃー、キーパーの技術差が小さいなら身長高い方選ぶよねって話よ。」
八木は黙々と話してくれた。
「なんか分かる。
俺も身長166cmで同じで同世代の奴らにフィジカルでぶっ飛ばされてた。
でも、ボランチやってみたらフィジカルに頼らないサッカー知れた気がする。」
「俺も早くトップチームに絡むからな。」
田中とデ・ヨングの方も会話が弾んでいる。
「デ・ヨングって父親がオランダ人だよね。
オランダに住んでたの?」
田中が質問する。
「うん
10歳までオランダに住んでて、親の仕事の関係で日本に来た。」
「言語とかで苦戦してなかったの?」
「日本語は母親に教わってたから、そこまで苦戦はしなかったかな。
話変わるけど、田中ってなんでサッカー部入るの遅かったの?」
デ・ヨングは急な質問する。
「まぁー
色々あったんだよ。」
「へぇー。」
デ・ヨングはこれ以上この話題に首を突っ込まなかった。
そのまま時間は過ぎていき、今日のバーベキューはお開きとなった。
『お邪魔しました。』
挨拶をしてみんな帰っていった。
5日後。
BIG8の藤井寺商業高校との練習試合の日になった。
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