意味が分かると怖い話

左腕サザン

1. アシッドアタック(硫酸事件)

 私は山本静香やまもと せいか25歳。22歳で大学を出てから、今は東京のとある製薬会社で働いている。


 始めは、東京はキラキラしていて、皆楽しく働ける場所なんだって思ってたけど、実際に働いてみるとものすごく辛い。


 毎日満員電車に乗って通勤しないといけないし、通勤時間が長いせいで、家ではろくな睡眠が取れないから、毎日電車でがっつり寝ちゃってる。


 そんな私には、仕事とは関係ない、ある悩みがあった。


 それは、毎朝乗る電車で、必ずある男の人が私の隣に座ってくるということ。


 その人はものすごく太っていて、おまけに禿げている。


 しかも、内面まで終わっていて、私が電車で寝ている間に、私の太ももや胸などを触っているらしい。ちなみにこれは、起きた時に周りの乗客の人が教えてくれた話。


 いやだなぁと思いつつも、寝ている間だから分からないし、それで警察沙汰にするのも面倒だったから、私は特に気にしないでいた。


 けれど、私はある日、最悪な事件に巻き込まれることとなる。


 


 それは、いつも通り、朝7:30の電車に乗り、通勤をしている時のことだった。


 私の乗る駅の2つ先の駅で、いつもの変態おじさんが私の隣に座ってくる。


 私は、意識があるうちに変なことをされたら嫌だと思い、すぐに寝ることにした。


 それから1時間ほどが経ち、そろそろ職場に着くという時……


「おい! あんた!」


 ぼんやりとした意識の中で、男の人が叫ぶ声が聞こえると同時、電車が大きく揺れた。


 その瞬間、私の鼻から口の方にかけて、何かの液体がかかった。


 私は電車の揺れと、顔にかかった液体で、はっきりと意識が戻った。


 私は、顔にかかった液体部分の、ぱちぱちとするような痛みに襲われた。


 私はその瞬間、何が起こったかをはっきりと理解した。


 最近テレビのニュースで見たことがある、“アッシドアタック”。女性の顔に硫酸をかけ、顔を溶かしてしまう事件だ。


 私は咄嗟に叫んだ。


「きゃぁぁぁあああ!!! 酸! 酸をかけられました!」


 私が叫ぶと同時、目の前にいたフードを被った怪しい男は、怯えた様子で電車から降り、走って逃げていった。


 なんとか目にはかかっていなかったから、その男の特徴はなんとなく掴めた。


 しかし、私に男を追いかける気力はない。とりあえず、今はこの酸をなんとかしないと。もうその思いで頭がいっぱいだった。


 すると、いつも隣に座ってくるおじさんが、水を差し出してきた。


「こ、これを使って! 顔を洗い流して! 僕があの男を捕まえてくるよ!」


 いつもは変態だけど、優しいところもあるのかな、と私は思ったが、そんなことを考えている暇はない。


 私は藁をも掴む思いで、おじさんから水を受け取り、顔だけでなく、頭の上から被るように水をかけて洗い流した。


 しかし、私は焼けるような痛みに耐えられず、そのまま意識を落とした。




 目を覚ますと、私は病室にいた。


 しばらくすると、先生がやってくる。


「いやぁ、ひどい事件でしたね。ついこの前、事件が起きたばかりなのに、またですか」


 私は状況がよく理解出来ず、先生に話しかけようとするが、口が上手く動かない。


「山本さん……非常に残念なのですが、山本さんは、アッシドアタックにあったようです。しかもかなりの重症で、頭部から体の方にかけてガッツリと火傷を負ってしまっています。左目は無事でしたが、右目はもう視力が治らないでしょう。頭部の火傷も酷く、髪が自然に生えてくるのは難しいので、これからはウィッグをつけてもらうしかないですね」


 先生の言葉を聞いて、私はある違和感に気がついた。


「ですが安心してください」


 先生はそう言って、病室にあるテレビをつける。


「ほら、どうやら山本さんに硫酸をかけた犯人は捕まったようですよ。犯人は池田慶斗(いけだ けいと)、大学生なのに何をやっているんですかねぇ」


 私はテレビに映る男をじっと見つめる。


 金髪、黒いフードつきの服、若い……確かにあの時のフードの男……


「とりあえず、しばらくは安静にしていてくださいね」


 そう言って先生は病室を出ていった。


 あれ……なんで頭を火傷してるんだろう……なんで体も火傷してるんだろう……


 もしかして、硫酸をかけたのって……




【解説】

主人公が電車内で寝ていた時、いつものようにおじさんは、主人公に痴漢をしていた。それを見兼ねたフードを被った男性は、声をかけようとするが、電車が揺れたことで、持っていたジュースが零れ、それが主人公の顔にかかった。主人公はそれを硫酸だと勘違いして、おじさんから貰った水を勢いよく被った。しかし、後に頭部から身体にかけて火傷をしていたことから、その水が硫酸であったことが分かる。つまり、おじさんはこの日、主人公に硫酸をかけようとしていたのだ。

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