応援コメント

9 谷崎潤一郎『春琴抄』」への応援コメント


  • 編集済

    本作を読むのが楽しみで、久しぶりに『春琴抄』を読み直してきました。以前読んだときは句読点が無くて四苦八苦したように思うのですが、いやいや、一文一文のリズム感が完璧で成程点や丸は寧ろ邪魔、この文は春琴そのもののように気高いものなんだ、と漸く気付きました。

    僕もサディズム、マゾヒズムには非常に興味があるのですが、世にいう『加虐性』『被虐性』という解釈をそのまま受け入れることに若干の疑問があったりします。加虐、被虐はたんなる行為、遣り取りの手段に過ぎず、その本来は自らを離れ渾然一体に繋がろうとする欲求だったりするのではないか、そんな風に思ったり。故にSとMは入れ替え得るものという解釈は分かる気がします。ただ、Sは相手により与えたい、Mは欲求そのものにより忠実、その微妙な差異が両者に役割を与えているのではないかと思うのです。春琴は生まれながらの姫様ですが、しかし非常に脆い。対する佐助は従順のようで非常な強さがあります。むしろ主従師弟の関係を壊すことなく継続しようとしたのは佐助の方であり、春琴の美が失われることを許さなかったのは佐助であったことをみても、単に加虐と被虐とでは語れない繋がりを二人の間に感じます。

    それにしましても気高く無駄なき文章、学ぶことはまだまだ多いです!深く広がりのあるご指南、いつも本当に有難うございますっ!学ばせて頂きますっ!

    作者からの返信

    ありがとうございます!
    『春琴抄』、読み直していただいたんですね。たしかに最初は手こずるんですよね、、でもこれに慣れてしまうとじつに心地よいリズム。春琴のように気高い、その通りだと思います。
    SとMは単純に「加虐」「被虐」で括れるものではない、渾然一体に繋がろうという欲求だ、というのも同感です。微妙な違いが役割を変える、、そうですよね。
    この関係には佐助の側に主導権、というか関係性を規定するのは常に佐助の方である、、卓見ですね。新たな視点を得た思いです。さすが勇者と従者のエロスと関係性に飽くなき探究を注ぐ呪文堂さんです!
    本当に、谷崎潤一郎の文章は勉強になりますね。と同時に、うっとり浸るのにもぴったりです。学びの道は尽きませんね!

  • 『春琴抄』と『細雪』は読みました。
    文章の素晴らしさはもちろんですが、キャラの立ちっぷりも凄いですよね。ノーベル文学賞を逃したのは面白過ぎるからかなー、なんて思ってしまいます。春琴なんて、ラノベの女王様キャラの元祖みたいな感じすらするけど、それを流麗な文章で綴っているというのが面白いです。

    作者からの返信

    ありがとうございます!
    ノーベル文学賞を逃した理由が、面白過ぎたから! 面白い解釈ですね(^^) だとしたら、谷崎潤一郎も面目躍如と満足しているかもしれませんね。
    女王様キャラの元祖みたい、、ほんとうに、女王道のど真ん中を堂々歩んでいるような・・・キャラの立ちっぷりと流麗な文章とが両立しているのが稀有ですね!

  • 谷崎潤一郎氏の作品は、「痴人の愛」「瘋癲老人日記」そして「刺青」が既読、
    ちょうど「卍」を読んでるところで、おぉ次は「春琴抄」だなっ、て思いました☺
    ある意味、戯画的なまでに感情ないし情念の振り幅が大きい登場人物が醍醐味の作家さんだなという印象で、
    さすがにこんなオトコはいないでしょ!(痴人の愛の譲治くん)
    いやいやこんなオンナありえる!?(卍の園子・光子)
    そうしてひとしきり爆笑したあとでふと、でもそれは自分が世間知らずなだけで、情念の坩堝とやらに吸い込まれたらこうなってしまうんだろうか??
    と、ちょっと空恐ろしいような感覚もありました。
    ストーリー展開で十分楽しめる一方、文章表現の技術にも意欲的だったんだろうなぁと、文章の良し悪しは評価できないながらも思います。
    「瘋癲老人日記」はカタカナの旧文体で、初見だと大日本帝国憲法的に非常に読みづらいんですが、我慢して読んでるとそれが味に思えてきたりもし、
    引用されている「春琴抄」の一文を読むと、また別の味わいがありそうですね。

    作者からの返信

    ありがとうございます!
    晩年の作「瘋癲老人日記」も独特、というか率直に言ってしまうと…読みづらい文体ですよね。仰るとおり、それが味でもあるのですが。
    戯画的なまでに、というのがまったく同感で、それが醍醐味であるというのも同感です。胡散臭さがクセになるというか。でもたぶん、じつは人間はそういう戯画的な部分をもっている/戯画的に生きようとする性向をもっている、というのが本当のおそろしさ、おもしろさなのかも、、と思ったりもします。
    次は「春琴抄」、そう思っていただけたなら書いた甲斐がありました! ぜひ文章と、戯画的なふたりの物語をお楽しみくださいませ!