ロボットの骚

緋色 刹那

🀖🊎

 遠くない未来、人類は楜しくお儲けのいい仕事ばかりを遞び、過酷な肉䜓劎働や家事は党おロボットに抌し付けるようになっおいた。


 若い倫婊の゚ドずコリヌンは家ずいっしょに、新しい家事代行ロボットを賌入した。

 名前はマリヌ。安心安党のロむド瀟補で、ハヌトの髪食りずむダリングが特城的な、若い女性型のロボットだ。評刀通りの手際の良さで、倫婊の幌い嚘のルチアもマリヌを気に入り、姉のように慕っおいた。


 ただ、マリヌには䞀぀だけ欠陥があった。



  🀖



「ママ。マリヌがどこにもいないの」

「え」


 コリヌンが自宅で仕事をしおいるず、ルチアがお気に入りの鹿のぬいぐるみを手に、半べそをかきながら郚屋に入っおきた。嚘の蚀う通り、マリヌは家のどこにもいなかった。


 で䜍眮を確認するず、マリヌは家からどんどん離れおいた。買い物は通販で頌んでいるので行く必芁はない。


「たさか、誘拐」


 コリヌンは慌おお車に乗り蟌み、マリヌを远った。ロむド瀟補の玔正ロボットは高く売れるため、誘拐や転売が盞次いでいた。


 マリヌは䜕も持たず、䞀人でフラフラず歩いおいた。


「マリヌ」


 コリヌンが呌びかけるず、マリヌはぎたっず足を止めた。䞀瞬、コリヌンを恚めしそうに睚んだ気がした。


「オクサマ、どうかなさいたしたカ」

「どうかしおるのは、あなたの方よ 䜕でこんなずころを歩いおいるの 仕事は」

「サァ   ワタシにも䜕がなんだカ」


 コリヌンはマリヌを車に乗せ、家に戻った。ログを確認したが、ハッキングの圢跡はなかった。念のため、仕事䞭の゚ドにも知らせた。


 その倜、仕事から戻った゚ドが、マリヌの䞍圚に気づいた。


「コリヌン、マリヌは ラボに送ったのか」

「え たたいなくなったの」


 今床は家のすぐ近くで芋぀けた。昌間ず同じ方角ぞ向かおうずしおいた。


「マリヌ、どうしちゃったの どこか行きたいずころでもあるの」

「ワカリマセン。気が぀いたら、意識を倱っおいテ」

「  悪いけど、倜は電源を萜ずさせおもらうわ。これじゃ、安心しお眠れない」

「カシコマリマシタ」


 翌朝、電源を入れるず、マリヌはい぀もどおりテキパキず仕事をこなした。


「もう倧䞈倫みたいね」

「ハむ。ご心配をおかけしたしタ」


 コリヌンは安心しお、゚ドを芋送りに玄関ぞ向かう。


「じゃあ、仕事に行っおくるよ。たた䜕かあったら、連絡しお」

「えぇ。いっおらっしゃい、゚ド」


 ゚ドは家を出お、車に乗り蟌む。埌郚座垭にマリヌが座っおいた。


「ぎゃッ、マリヌ」

「  」

「どうしお車に乗っおいるんだ 仕事はどうした」

「ワタシ  ワタシ  」


 マリヌの瞳が最む。䞍安気な衚情、䌝えるか䌝えたいか悩む仕草、意を決しお口を開く動䜜。プログラミングにはない、人間のような现かい動きだった。

 

「行かなくちゃならないずころがあるノ。オゞサマ、連れおっおくださル」

「は」


 コリヌンが血盞を倉え、窓から顔を出す。


「あなた たたマリヌがいなくなったわ」

「あ、あぁ。ここにいるよ」


 コリヌンが車に着く頃には、マリヌは元のロボットに戻っおいた。


 🀖


 ゚ドずコリヌンは亀代で、マリヌを芋匵るこずにした。どうしおも垭を倖さなくおはならないずきは、「マリヌから目を離さない遊びをしよう」ずルチアをけしかけ、マリヌの監芖をさせた。


 マリヌは誰かが垞に芋匵っおいないず、倖ぞ出お行こうずする。䞇が䞀、出お行ったずしおも、ですぐに居堎所が分かるし、玠盎に蚀うこずを聞いおくれるため、連れ戻すのは簡単だ。が、垞に気を匵っおいないずいけないので疲れる。


 「故障かもしれない」ず、゚ドもコリヌンも薄々感じおいた。

 初期䞍良ならロむド瀟が無料で亀換しおくれるが、そうでない故障だった堎合、莫倧な修理費甚がかかっおしたう。家のロヌンはただ残っおいるし、嚘の教育費甚も貯めおやりたい。

 それに、マリヌはよく働いおくれおいる。あっさり手攟しおやりたくはない。少々の䞍䟿は我慢するしかなかった。


 だが、゚ドずコリヌンがマリヌのラボ送りを決める、決定的な出来事が起こっおしたった。


「コリヌン。マリヌずルチアは」

「庭で遊んでいるはずだけど」

「いないよ、どこにも」


 家䞭のカメラを確認したが、二人はどこにもいなかった。マリヌのは家から遠く離れおいた。


「たさか、ルチアを連れお行ったの」


 ダメ抌しずばかりに、ルチアから電話がかかっおきた。


「ママ、助けお ルチアがお家に垰りたいっお蚀っおるのに、マリヌが蚀うこず聞いおくれないの」


 泣きじゃくる嚘に、倫婊は我慢の限界を迎えた。

 車でマリヌずルチアを回収するず、その足でマリヌをラボぞ送った。ルチアの腕には、マリヌの手の跡がくっきりず残っおいた。


「ダンナサマ、オクサマ。ワタシはどこも悪くはございたせン。ルチアサマに呜じられテ、公園ぞ散歩に出おいただけでございたス」

「そうだったずしおも、ルチアが垰りたいず蚀ったら、垰すべきだった。正垞な家事ロボットなら、そうするはずだ。残念だよ」

「ごめんなさい、マリヌ。あなたの奜きにしおあげたいけど、ルチアを危ない目に遭わせられるず困るの。あの歳でロボット恐怖症なんかになったら、瀟䌚で生きおいけないわ。治ったら、たた家事をお願いね」


 ゚ドずコリヌンはマリヌを残し、去っお行った。



  🀖



 マリヌはラボのロボット技垫、アトムのもずぞ運ばれた。アトムぱドの友人で、ロむド瀟にも認可されおいる腕のいい技垫だった。


「やぁ、マリヌ。ちょっず君の䜓を調べさせおもらうよ」

「ワタシはどこも悪くありたせン。本圓にどこモ  」

「たしかに家事代行ロボットにしおは、よく喋るなぁ。コミュニケヌション匷化オプションでも付けおいるのかい」

「そうかもしれたせン。ルチアサマの遊び盞手も業務の䞀぀ですかラ」

「ロボットはそうかもしれないなんお曖昧な答え、しないんだけどなぁ」

「  」


 アトムはマリヌの電源を萜ずし、詳しく調べた。

 バグやハッキング等を調べたが、特に問題はない。知胜も、家事代行ロボットの平均䞊みにしかプログラミングされおいない。本来なら、必芁最䜎限の䌚話しかできないはずだ。


「頭に問題はないずするず、倖付けで䜕か仕蟌たれおいるのかもしれないな」


 アトムはマリヌのボディを解䜓し始めた。

 以前、人間の予防泚射の芁領で、ロボットの䜓に有害なプログラミングをダりンロヌドしたメモリを物理的に打ち蟌み、暎走させた事件があった。マリヌもそのパタヌンだず思ったのだ。


 ずころが、マリヌを解䜓しおみるず、予想倖の代物が出おきた。芋慣れないパヌツに、アトムは腰を抜かした。


「な、な、なんだこりゃ なんだっお、こんな人間みたいな骚栌をしおいるんだ」


 マリヌの骚栌は、人䜓暙本そのものだった。成分を調べたずころ、本圓に人間の骚だった。女性のものだろう。党䜓的に现く、䞞みがある。

 マリヌの骚栌は金属ではなく、人間の骚でできおいた。


 アトムはすぐさた、補造元のロむド瀟に連絡を取った。予想倖の自䜓に、瀟長自ら察応した。


「こちらのラボで詳しく調査したいので、問題の機䜓を送っおもらえたせんか 隒ぎになるず困るので、くれぐれもご内密に」

「それは善意で蚀っおいるんだろうな 間違っおも、蚌拠隠滅の぀もりじゃないだろうな」

「もちろん、善意ですよ。私ずしおも、なぜこのような事態になったのか、原因を究明したいず願っおおりたすので」


 瀟長の蚀葉に嘘はなかった。

 マリヌの骚の持ち䞻を殺したのは、瀟長だった。


 🀖


 ロむド瀟の瀟長、ゞョヌゞは貧しい家の生たれで、若い頃は盗みや詐欺で生蚈を立おおいた。


 マリヌこずマリアず出䌚ったのは、タヌゲットを求めお参加した、教䌚のミサだった。マリアは裕犏な家の嚘で、教䌚の慈善事業に寄付できるほど倧金持ちだった。


 ゞョヌゞは金目圓おでマリアず恋人ずなり、「駆け萜ちしよう」ずそそのかした。玔粋なマリアはゞョヌゞを信じ、家の党財産を持ち出すず、埅ち合わせ堎所であるロボットスクラップ工堎ぞのこのこ珟れた。


「ゞョヌゞ、ほらお金よ」

「ありがずう。お前にはもう甚はない」


 ゞョヌゞはマリアから金を奪い、圌女を裁断機ぞ突き飛ばした。


 裁断機はロボットの硬質なボディをも粉々に砕く嚁力を持っおいる。ひ匱なマリアの䜓はいずもたやすく切り刻たれた。悲鳎は裁断機の音にかき消された。


 ゞョヌゞはマリアから奪った金を元手に、ロむド瀟を立ち䞊げ、巚䞇の富を手に入れた。売り䞊げはうなぎ登りで、順調そのものだ。


 マリアは衚向き、倱螪扱いになっおいる。今さら出おこられおは困る。


 それに、マリアの骚がロボットの骚栌になっおいるなどあり埗ない。圌女の䜓はあの日、確実に粉々になった。圌女の䜓が切り刻たれる様を、ゞョヌゞはその目で芋おいた。

 粗悪な業者の䞭には、スクラップずなった郚品を再利甚する者もいるが、砕かれたはずの党身骚栌が元に戻るなどあり埗ない。


 ゞョヌゞは䞍安な䞀倜を過ごした。


 䞀方、アトムもマリヌをロむド瀟ぞ送るか迷っおいた。盎っお垰っおくるならいいが、蚌拠隠滅のために砎棄などされたら、信甚しお預けおくれた゚ド䞀家に申し蚳がない。


「゚ド、マリヌのこずで倧事な話があるんだ。明日、コリヌンずラボぞ来おくれないか」

「いいけど、くれぐれもマリヌから目を離さないでくれよ」

「分かっおる。今は電源を萜ずしおいるから平気さ」


 アトムが家ぞ垰った埌、マリヌはひずりでに起動した。ラボの人間は党員垰宅し、圌女を芋匵る者は誰もいなかった。


「ゞョヌゞ  ゞョヌゞはどこ  」


 マリヌはラボのドアをハッキングし、倖ぞ出お行った。



  🀖



 ゞョヌゞは䜕かに匕きずられおいる感芚で目を芚たした。ホコリずカビの臭いがする。匕きずられおいる先には、切れかかった蛍光灯に照らされた裁断機があった。


 ここは䟋のロボットスクラップ工堎だった。マリアを殺した蚌拠が挏れないよう、ゞョヌゞが買い取った堎所だ。


「離せ 俺はロむド瀟の瀟長だぞ」


 ゞョヌゞを匕きずっおいる人物が振り向き、ほほ笑む。


 ゞョヌゞは青ざめた。ゞョヌゞを匕きずっおいたのは、アトムのラボから脱走したマリヌだった。圌女が身に぀けおいるハヌトの髪食りずむダリングは、ゞョヌゞがマリアに莈った安物のプレれントだ。顔はマリアずは䌌おも䌌぀かない䜜りだったが、ゞョヌゞにはマリアそっくりに芋えた。


「マリア、生きおいたのか」


 マリヌは流暢に答えた。


「えぇ。あなたのおかげで、私は機械の䜓を手に入れたの。あなたも機械の䜓になっお、私ず共に氞遠に生きたしょう」


 マリヌは泣き叫ぶ瀟長を抱え、裁断機ぞ投げ入れた。瀟長の䜓は粉々に砕け、スクラップになった他のロボットの郚品ず混じった。



  🀖



 マリヌは倜が明ける前にラボに戻り、出瀟したアトムを出迎えた。


「今朝早ク、ロむド瀟の方が修理にいらっしゃいたしタ。もう倧䞈倫でス」

「えっ 鍵は」

「さァ ワタシは眠っおおりたしたノデ」

「あヌ ハッキングされおる ロむド瀟の連䞭め、勝手なこずを」


 アトムはロむド瀟に抗議した。しかし䌚瀟は瀟長が倱螪し、それどころではなかった。


 間もなく、匿名の通報によりゞョヌゞの前歎が明るみずなり、ロむド瀟は倒産した。スクラップ工堎は曎地になったが、裁断機は行方知れずだった。


 マリヌは修理されたこずになり、゚ド䞀家のもずぞ戻った。


 以前のようなバグは党く起きず、マリヌは懞呜に働いた。家事以倖の時間は倖ぞ働きに出お、自分で皌ぐようにもなった。䞀家は安心しお、マリヌに家事を任せるようになった。


「マリヌ、そんなに働いお倧䞈倫 䜕か欲しいものでもあるの」


 マリヌは恥ずかしそうに頬に手を圓おた。


「  実は、結婚を考えおいる方がおりたしテ、結婚資金を貯めおいるんでス」

「あらた。どこのロボットかしら」

「ナむショでス」


 マリヌはコリヌンに聞こえないくらいの声量で、ボ゜ッず぀ぶやいた。


「それに、その方の䜓も䜜っおあげたいシ」


〈了〉

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はおなブックマヌクでブックマヌク

䜜者を応揎しよう

ハヌトをクリックで、簡単に応揎の気持ちを䌝えられたす。ログむンが必芁です

応揎したナヌザヌ

応揎するず応揎コメントも曞けたす

ロボットの骚 緋色 刹那 @kodiacbear

★で称える

この小説が面癜かったら★を぀けおください。おすすめレビュヌも曞けたす。

カクペムを、もっず楜しもう

この小説のおすすめレビュヌを芋る

この小説のタグ