王子の行方①

 冥府の門をやっと一基破壊した翌日、昨晩の報告会(軍議)通り、リシャールとローラン、ニア、ガストンにミゲルと、6名の兵士を加えた少数部隊でピサン村へ向かうことになった。だが、そこで予定と少し違うことが起こった。シャルリーヌが突然同行を申し出たのである。

「今回は休んでいる余裕もあまり無いんだぞ?」

「分かってるわ! それでも、セルジュ兄様に会いたいの!」

 リシャールが何とか諦めるように諫めると、シャルリーヌはすぐさま反論する。このやりとりが数回続いたそのとき、

「失礼します殿下、そろそろ出立の時間です」

 ローランが少し気まずそうにリシャールに告げた。

「分かった」

 リシャールはそれだけ返事をすると、シャルリーヌの顔をじっと見て、大きなため息をついた。そして、

「・・・何があっても泣き言は言わないな?」

 改めて問い掛けると、シャルリーヌは真剣な表情で大きく頷いた。

「・・・では、隊に入って貰う。自分の身は自分で守るように」

「分かった!」

 シャルリーヌは一瞬嬉しそうな表情になるが、これは命の危険もある任務であると気付くと、すぐに表情を引き締めた。

「それでは、砦の守りは任せたぞ」

「はっ、お任せ下さい!」

 リシャールの頼みに対して、オリヴィエが代表して応えた。リシャールたちは力強く頷くと、砦から出発したのであった。




「・・・意外だな。強く引き留めなかったのだな、エリーナ」

 ジョセフィーヌは背後にいたエリーナを振り返りながら尋ねた。

「勿論、それも考えました。・・・しかし、殿下と無事再会出来たときの、シャルリーヌ様の安心しきった表情を思い出すと、あまり強く引き留めることは出来ませんでした。姫様の幸せを考えるならば、直接セルジュ様にお会いすることが一番ではないかと思い、今回は殿下にお任せすることにいたしました」

 エリーナは力強い眼差しで、ジョセフィーヌを見て答えた。

「なるほど。・・・ただシャルリーヌがかわいいだけと言うことはない、ということだな。確かに、外に出て様々な人や物に触れることはシャルリーヌの成長のためにも良いことだろう。・・・シャルリーヌもリシャールも、無事にセルジュと会えると良いが・・・」

「ええ、本当に・・・」

 ジョセフィーヌの言葉に、エリーナは深く頷いた。



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