Verse of Goddess -Sword of Salvation-

鐘方天音

序章

百年前・三十年戦争

 ――今から百年、大きな戦争があった。当時グラ

ンジュール大陸は、資源の支配権を各国が奪い合う戦乱の時代であった。


中でも軍事に力を入れたアルディア帝国は、群を抜いて強大であり、元は大陸の端にあった王国が、周辺諸国を掌握したことで領土を拡大させていった。


その支配地域はグランジュール大陸の半分にまで及び、アルディアは残りの半分も手に入れるべく、侵攻を開始する。


 アルディアは当然、難なく大陸全土を征服できると確信していた。しかし、その目論見は大きく外れることとなる。

アルディアの次の標的であったリュヴェレット王国が、自国の民を団結させ、さらに支配が及んでいない諸国を束ねあげて抗戦したのである。


帝国はこの同盟相手に苦戦し、果てには疲弊したことで自国領土まで撤退した。

疲弊していたのは同盟側も同様であり、帝国の領土を奪い返すことは不可能であったものの、帝国との間に休戦条約を結ぶことに成功した。


こうして、後世の人々により“三十年戦争”と呼ばれることとなる戦争は終結し、一旦大陸には平和が訪れた。


この同盟側の事実上の勝利には、リュヴェレット王国の二人の王女が大きく貢献した。


二人は姉妹であり、姉のジャンヌは月と戦いの女神・セラディアーナの神託と加護を受け、聖剣・クラージュクレールを手に戦場を駆け抜けた。妹のルイーズはそんな姉を支え、民や周辺諸国に『我々は女神に護られている。敗北することはない』と使節を送り、ときには危険を顧みずに直接現地に赴き、そう説いた。


この二人の王女により、バラバラであった諸国は団結し、同盟側の士気が衰えなかったことが勝利へと繋がったのであった。


休戦条約締結後、帝国の内乱や元同盟国の内外で分裂が起き、大陸の勢力と地図は少しずつ変わった。依然帝国の強さは不動であり、大陸の各国は帝国を警戒し、帝国側も捲土重来を狙う緊張状態が続いた。


 その緊張の糸は、百年後、アルディア帝国に新しくグラディスⅡ世が皇帝に即位したことで切られることとなる――

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