第3話

「ばあちゃん、ぼけたのか?ってか、じんって誰?親戚の子?」


「ううん、知らない。あーやってたまに変になるようになっちゃった。この間も、『サメだーーーー!!サメがきた!!!しゅう!!』って騒いでて、大変だったのさ」



その時のばあちゃんの、鮫に襲われてるかのような怯えてる表情と、必死にお父さんを呼ぶような手振りもつけて再現して健に見せたら、健は「ぶッ!」と吹き出し、ゲラゲラと手を叩いて笑いだした。



「役者になれるな!みゆ」


「あんたに相談しても、ロクなことないの忘れてた」


「まあまあ、またなんかあったら相談して」


「そうやってネタ集めて、お酒の席で言うんでしょ?」


正解せいかーい。まあいいじゃない。カレイ美味いから食えよ」


「うん、ありがとうね、健」



健は軽トラックの窓に掛けていた腕をスッと上に上げるから、私も同じようにあげて『バイバイ』した。



腕を窓からぷらーっと出しながら、ゆる~く走ってく様は、一人前漁師を飛び越えて年寄りっぽくみえる。

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