第2話
私の方が絶対に義旭くんを好き。
だけど私は別にそのことを気にしたことは一度もないの。むしろ誇りに思う!
義旭くんについてけるのなんて多分、私くらいだし。
「ほんとドMも良いとこだよね」
友達の結奈にはため息をつきながら、よく言われるけど別にMでも何でも、義旭くんと一緒にいれるならどうでも良い。
◇◆
「明日香ちゃん!
ウサ耳つけるって噂で聞いたんだけど!」
文化祭の準備をしてたら三年生の先輩何人かがクラスの前まで来て言ってきた。
「あ、はーい。
私のクラスの出し物バニー喫茶なんで。
ぜひ、来てください!」
私の笑顔に激しく頷き「当たり前だよ!!」と、叫ぶように言った。
「でも、明日香ちゃん。料理は作らないでね」
弓道部の松崎先輩がわざとらしく笑って言う。
「あんなの食えるの、まじで伊達弟くらいだよなぁ!」
「俺が、何ですか?」
その冷たい声に先輩達が静かに振り返る。
「サボってて良いんですか?
本番、明日ですよね?」
伊達弟こと義旭くんがD組に入りながら言う。
義旭くんが教室に来ると先輩達が潮が引くように去っていく。
「ね、義旭くん。
先輩達にウサ耳付けるの楽しみって言われたよ!」
「あぁ、みたいだな。
お前、可愛いからな、顔は」
すごーく冷たくサラッと言われた。
「かわいいなんて……。
義旭くん、ほんとは私のことそんな風に思ってくれてたんだね!」
「お前はバカか??」
はぁ、とため息をついて呟いた。
「ナデシコ決定戦で去年、優勝しただろ。
俺の感情論の話じゃない。世間一般の話をしてるんだ」
「とか言って本当は……」
私の言葉を無視して黙々と仕事を続ける。
義旭くんは照れてる訳じゃない。本気で呆れてるの。
でもその呆れてる顔がまた、かっこいいんだな!
その顔見たさに私はわざとバカみたいなこと言ったりしてます。
もちろん、義旭くんには秘密だけどねっ!
「ねっ、義旭くん。当日一緒にまわろ?」
「無理。生徒会の仕事」
風のような速さで即答する。
多分、義旭くんにとって文化祭っていうのは会長としての大切な仕事。
私達にとっての文化祭とは訳が違うんですよ。
「そうだよね。お仕事、頑張って!」
「あぁ」
「一方通行な会話だな。」
私達の会話を見ながら隣にいた秀に言われる。
「ウサ耳付けるからって八つ当たりしないでくれる?いま、義旭くんと話してるの」
「話せてないから。それ会話じゃねーよ」
「会話だからっ!
何なの?!私達の邪魔しないで!」
「邪魔してないですー。
事実を言っただけですー」
私と秀の喧嘩を見ることもなく淡々と仕事を続ける義旭くん。
もう、本当にかっこいい!
「私、悪いけど秀と話してる場合じゃないから。
さっ、仕事、仕事」
「明日香、代わるよ」
何をすべきかもよく分からなかったけど、義旭くんの見よう見まねをしたら詩織に微笑みながら言われた。
「役立たずだな」
秀が私に言うと義旭くんが立ち上がる。
「秀、いい加減にしろ。こいつを怒らせるな」
相変わらずの冷たい声で言った。
「余計うるさくなって周りに迷惑だろ」
そして私を睨む。
「お前も、できないならやるな。大人しくしとけ」
本当に怒ってる義旭くんに私は小さく「はーい」と答えた。
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