第4話
そして立ったままの私を見上げる。
「詩織、疲れないの?」
「どうして?」
「超うるさくない?」
そして和政は私の手を握り座らせる。
「うるさくないよ。
みんな優しくて、すごく安心してる」
「……そっか」
和政は優しく笑って私の唇に軽く触れた。
「キスしたくなってきた」
私の目を見て相変わらず、色っぽい低い声で真剣に言ってくる。
「お父さん帰ってくるんでしょう?」
「……うん」
そう言いながらも私の眼鏡を外す。
「でも、キスしたい」
私が何か言う前に引き寄せてゆっくり唇を触れる。
舌で唇をなぞられて、そのまま私の舌もなぞる。
ドキッとしたけど抵抗はしなかった。
最初の頃は正直、すごくビックリしたけれど最近は私も和政にノッてみたり、して。
唇を離すと和政が私を抱きしめる。
「父さん、帰ってくるな」
和政が私からゆっくり離れた瞬間、コンコン、と部屋の扉が鳴った。
和政が立ち上がり扉を開けた。
「おかえり、父さん」
「あぁ、ただいま」
そして私を見つけるとにこやかに笑う。
「こんにちは」
「こんにちは、本宮詩織です。
お邪魔させてもらっています」
「いえいえ。
こちらが呼んだ様なものだしね」
そして私をジーッと見る。
「すごく綺麗な人だねぇ」
その雰囲気に思わず頬が赤くなる。
「ちょっと、父さん。
詩織びっくりしてるから」
「でも本当に綺麗な人だ」
「いえ、そんなことないです……」
和政はどうやらお父さん似らしい。
雰囲気も笑顔も目もなんだか、和政そっくりで見つめられた時、少しドキドキした。
「夕飯なんでしょ?ほら、行って」
和政がお父さんの肩をポン、と叩いた。
「詩織も、行こうか」
私は小さく頷き上った時のようにゆっくり階段を下りた。
食事はとても美味しくて、和政の家族はとても優しくて、弟さんとも仲良くなれたし。
そして食事もそろそろ終盤、というとき。
「詩織ちゃん、良かったら来週の食事会、参加しちゃったら?」
和政のお母さんがふと思い付いたように言った。
「食事会……?」
「かあさん、」
聞き返した私を見て和政が話を止めようとする。
「良いじゃない。
あなた達くらいの子、みんなお友達連れて来てるし」
和政のお父さんも笑って言った。
「そうだよなぁ。来たら良い。
どうせあんなの食べて飲んでをするだけだしな」
「ねぇ、詩織ちゃん。どうかしら?」
和政が隣で首を横に振る。
「えっ、と……」
「詩織さんが来たら、兄さんも他の人に構う必要ないかもね」
「詩織、行こうか」
雅志くんがポツリと言った一言に、さっきとは意見がコロッと変わる。
「他の友達も呼んでも良いかな?」
和政の質問にお父さんが小さく頷いた。
「確か招待は3人まで、だったかな」
すると和政は少し静止して笑顔を私に向けた。
「詩織、行ける?」
どんなものなのかはちゃんとは分からなかった。
だけど和政がそう言うなら行きたくなってきた。
「うん、行きたい」
この時、断っていたら私は今でも甘い夢ばかりみていたのかも。
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