【感謝の3000PV突破!】異世界転生ミリタリーオタク、傭兵稼業を現代兵器と共に行く

天漿琴季

序章 プロローグ

第一話 さようなら現世、こんにちは来世

人生は往々にして平凡なもので、かくいう俺も同じであった

いつも通りの日常。登校、授業、部活、下校。その後も同じ

朱山 間白としての人生は、やはり退屈だった。つまらないわけでもないが、刺激がない


「寒すぎぃ。帰ろ帰ろ」


俺はコンビニを出ると、人集りの流れへと時に乗り、時に逆らって道を進む

ワイヤレスイヤホンから流れる勇ましげな行進曲が、俺の聴覚を完全に外界から遮断していた

まあ、戦場じゃ音が重要というらしいが、ここは生憎平和で治安のいい国家日本。まさか通り魔に刺されるとは、俺もその瞬間までは思わなかった


背後から悲鳴が響き、咄嗟に体を捻って警戒すると、人混みの中を走ってくる人間が見えた

隠さず言えば社会不適合者としか見えない格好をしており、手にはナイフが保持されている

視認と理解、この2つの処理が終わる頃、男はもはや回避不可能の距離に迫っていた


咄嗟にコンビニ袋を投げつけ牽制、しかしそのまま突っ込んでくる

距離にして10m未満、この時点で追い詰められた時の選択肢である”逃走”と”反撃”の中から逃走の手が消えた


「クソッタレがてめぇ!」


降り上げた包丁の懐に飛び込み、腹に拳をねじ込み怯ませるも、その包丁は未だその手に掴まれている

胸を押して距離をとるが、半狂乱のそいつは貧相な体でナイフを振り回して突っ込んでくる

遠くからなるサイレン的に、多分耐えるのは難しいだろうか


そしてまぁ、一瞬の隙というのは本当に命に関わる

視線を外したコンマ数秒の間に詰められた距離と、腹部に向かう包丁を阻止する手立ては存在しなかった


「このボケがぁ!」


しかし痛みで身体が動かなくなる前に、俺の腹にそれを突き刺した腕を掴み顔面に一発叩き込む

2発3発と叩き込めば互いに力は抜け、そいつは包丁を手放し逃げの構えを見せる

腹を刺された痛みと怒りで殺したいと思うも、無理に力を込めた腹部からは見るからに致死量の鮮血が溢れている

最後に振り絞った、脳裏に浮かんだ言葉をその背中に叩きつける


「てめぇ逃げられると思うなよ!顔も指紋も凶器も揃ってんだ日本の警察舐めんなクソガキィッ!」


その背中が人混みに消える前に膝を突いて四つん這いに身体が崩れ、すぐに地面に突っ伏した

気づけばあたりは血溜まりと人集り、施しようの無いのに手当しようとする人間がいくらか

そして俺の口から溢れるのは鮮血と吐瀉物、あと悲鳴に嗚咽。まさに地獄絵図の縮図

そして最後に見た景色は、曇天から降り注ぐ貧弱な小雪と、ぼやけた人の顔だった


硬い硬いアスファルトの感触が、何か温かいものに変わった頃

俺の朧げな意識と、大量出血からくる酷い倦怠感は露と消え、手に持ったコンビニ袋は消えていた

無傷の上体を起こして辺りを見渡すが、四方を無機質な壁に囲まれた空間ということしか分からない


俺が完全に立ち上がり、どういう状況か分からず呆然と歩き回っていると、唐突に後ろで物音がした

それも大きい、まるで建物の屋根が落ちてきたような音だった

そんな音がすれば、当然俺は振り返る。するとそこには今まで存在していなかったはずの物があった


「BMPT…?ARMY-2024のT-90Mと同じような改修を受けたのか」


そう、ロシア連邦陸軍の戦車支援戦闘車ВМПТだった

外装には青緑の対赤外線カバーと傘型ケージ装甲を取り付けている。車体から見ればBMPT-72ではない


「なんにしても、なんでBMPTが…いや、好きだからいいんだけども」


俺はそっと近づき、その車体に触れる

T-72由来の厚い正面装甲とKontakt-5爆発反応装甲を覆うシートは酷く冷たい

車体に手を掛けてよじ登ると、連装の2A42機関砲の銃身が間近になる

触れた銃口に残った煤が手に着く。嗅ぐと少しばかり、俗に言う硝煙の香りが鼻腔を突いてきた


ズボンでそれを拭き取り砲塔基部に触れようとした時、後ろから金属音が鳴り出した

振り返って見た先には開け放たれた操縦士ハッチと、そこから身を乗り出した少女がいた


「気に入ってくれました?私の事」


「いや、誰だよあんた……?」


俺はそれしか考えられず、ぶっきらぼうにそう聞いてしまったが、気にも止めていないのか彼女は元気に答える


「見ての通りBMPTの化身、擬人化と言った方が分かりやすいですかね」


「見ての通りって……精神疾患でも持ってるのか?」


「酷いですねぇ。これから旅をする仲間だと言うのに」


その赤と青のオッドアイが拗ねた様にじとっとこちらを見つめる


「まぁ、説明しなければ何事も信じてくれないでしょうね。では結論から話しましょうか」


彼女はこちらに向き直し、正面装甲に腰掛けて話を始めた

俺も長話を立って聞くのはキツいのでその場に腰を下ろす


「貴方は死んだので、プレゼント付きで異世界に転生します」


短く淡白に告げられた事実は、特段俺を驚かせる程の物ではなかったが、自分の予想が確証に変わったという事はショックだった


「まあ当然だよな。自分の内蔵とご対面する位には傷深かったし。アドレナリン切れてからはバカ痛かったし」


「まぁ、そういう訳で。異世界転生については承諾していただきましたかね」


「しようがしまいが、拒否は出来ないんだろうに。まぁ転生については理解…したかな。うん」


顎をさすりつつそう言いはする。異世界転生物はもうマジで腐る程読んでこそ来たが、理由が明記されないのも珍しいんじゃないだろうか。まぁ何が腐るかと言えば脳みそなんだが


「それで、プレゼントってのは?」


「これです」


「は?」


「だからこれBMPTと私です」


さも当然と言った有様で車体天板を叩く彼女に返した言葉は素っ頓狂という他なかった


「あと2つのチートを」


「あ、やっぱり」


彼女は懐から2つのアクセサリーを取り出すと、こちらに投げてきた


「…指輪とネックレス?」


それを取って確認すると、それぞれエメラルドの様な宝石が埋め込まれたネックレスと、ラピスラズリか何かの青い宝石が小さく埋められた指輪だった


「神様特製のアクセサリーです。そのネックレスが回復能力底上げ、指輪は…ちょっと特殊です」


「特殊ぅ?」


「はい。とりあえずその指輪を嵌めてもらって」


「おう」


「そしたらメニューって言ってください」


それに従って口を開くと、俺の目の前にホログラムのような画面が浮き出てきた

横に長い長方形のそれは縦に3分割されており、真ん中には俺の立ち姿、右にはいくらかのスロット。左には同じくいくらかの選択項目があった


「まぁ、文字通りメニューです。右のスロットは装備してる魔導媒介や使い魔が表示されます。問題は左の項目の1番下、”召喚”です」


「…兵器とか召喚できるの?」


「兵器以外にも食料医薬品、衣服に固形燃料、とりあえず欲しい物は大体あります。多分」


「多分」


俺は召喚をタップすると、メニュー画面が移り変わった

画面左端には「装甲車両」「軽車両」「対戦車火器」「歩兵携行火器」「火砲」……

とにかく、現行の世界に存在するあらゆる武器の分類が記されていた

その欄の最上部には、C4500とある


「で、各々コストと言う物がありまして。基本的にそれを使って召喚します」


「コストか。これって消耗品なんだよな」


「はい」


「どう稼ぐんだ?」


俺はネックレスを括りつけながらそう質問する


「生物の殺傷。それだけですよ」


「……それだけ?」


「それだけです。色んなゲームだって、ミッションクリアしたり、敵倒したら経験値とか貰えるじゃないですか。それと同じです」


「……なるほどね?んまぁ大体理解したわ。なんかあったらその都度教えてくれ」


「物分かりがいい人は好きですよ。じゃあ早速転生と行きましょう。剣と魔法の世界が私達を待ってますよ!」


意気揚々と操縦席に飛び込む彼女だったが、直ぐに何かを思い出したのか、ニョキっと頭だけ出てきた


「言い忘れてました」


「なんだ、大事な事か?」


「ええ、とっても」


何事かと思いつつ、俺は彼女の言葉に耳を傾ける


「これからよろしくお願いしますね、指揮官コマンダー!」


斯くして、俺達の旅は始まった。

それがどんなものになるか。それはまだ、誰も知らない

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