第4話

「ほら、早く出るよ」


「えっ…ちょっと、若菜!?」


私は若菜に連行されるように居酒屋を後にした。


「ちょっと、もう少しくらい話を聞いてくれたっていいじゃないのよ!」


外に出たのと同時に若菜からカバンを受け取りながら、私は言った。


「あのね、こっちにだって時間があるの。


莉亜の愚だにつきあわされたせいで、履歴は正文さんだらけよ!」


ズイッと若菜が私にスマートフォンの着信履歴を見せてきた。


「出たよ、旦那自慢が…」


若菜は去年の4月に直属の上司と結婚をしたのだ。


私がそれを知ったのは結婚から半年が経った10月なんだけど。


「自慢しているつもりなんかないわよ。


夜10時を過ぎると正文さんから電話とメールが1分間隔でくると言うシステムなんです」


若菜はやれやれと息を吐くと、スマートフォンを耳に当てた。


「もしもし、正文さん?」


何がシステムよ。


世間ではそう言うのを“旦那に愛されてる”って言うのよ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る