魔導戦艦ハラーヘッター

Yohukashi

第1話 と、トゥモはデブ(やかましい←本人の叫び)

 スナズリン星系第3惑星グリグリドール。ここは、魔法と科学の双方が発達した世界。魔法が得意なエルフと科学が得意なヒューマンが、争ったり仲良くしたり、とにかく混沌とした世界…だったのですが、絵の具が混ざりあってよく分からん色になるように、混沌とした世界がより混沌として、意味不明な世界になっていました。

 そんな世界に、異星人が襲来!

 グリグリドール人(以後は長いからグリグリ人と短縮)の魔法科学力では対抗できない異星科学の力で、聖女さまがさらわれてしまったのです。

 異星人が落としていった紙切れ(究極の科学力を持った異星人が、紙なんか使うのはオカシイ、という突っ込みは受け付けません!)を、大勢の魔法科学者が解読①した結果、異星人の星の名はハッスルパフパフ。グリグリドール星から10万光年離れたところにあるとのこと(紙切れなんかに、こんな都合のいい情報が書いてあるなんてオカシイ、という突っ込みは受け付けません)でした。

 そこで王さまは、聖女さまを救出するために二人の勇者を選抜しました。

 一人は、トゥモ・グリズリー。

 王都でパン屋を営む三代目。魔法の力で美味しさを保って超長持ちするパンを作る天才。王宮の出入り業者です。

 もう一人は、ハーミー・チャレンジャー。

 下町で発明機械を作っているメカオタク少女。お祭りで妙な機械を披露してはお客を楽しませるので、王都でコアな人気があります。

 二人とも攻撃魔法も回復魔法も使えないどころか、武器も使えません。勇者とは最も縁が遠い二人が何故選ばれたのか、ある大臣が王さまに尋ねると、王さまは神妙な顔で、

「これは神託である!」

と豪語。あまりにキッパリと言いきるので、大臣はひれ伏して、王さまに対する失礼を詫びたのですが、そばにいる王妃さまは、王さまがダーツを投げて決めたことを知っているので、笑いをこらえるのに必死でした。しかし、救出のための勇者が、こんな方法で選ばれてしまう聖女さまって、いったい…

 トゥモとハーミーは、訳も聞かされずに王宮に呼び出され、聖女さまを救出するよう言い渡されると、旅の軍資金と古地図を押し付けられました。

「休業するとパン屋が潰れてしまう」

「二週間後のお祭りにハミハミ15号を出せなくなる」

と二人は、労働者の権利を持ち出して、ストを決行しようとしたのですが、軍資金が3倍に増やされ、しかも余ったらポッケにナイナイオッケーって言われたので、二人はカネに目がくらんで、喜んで引き受けました。こんないやしい二人から、救出に行くことを渋られる聖女さまって、いったい…

 二人は王宮の喫茶店に入ると、王さまから押し付けられた古地図を広げます。王国のある大陸の東側に離島②があるようで、そこに✕印が書き込まれていました。

 お盆にホットコーヒーを乗せたおじいちゃんが二人のそばを通りかかったとき、二人が広げた古地図に目を落とします。

「ほお。ジュズカバン島か。懐かしいのお」

「おじいちゃん。この場所のこと、知ってるの?」

 おじいちゃんのつぶやきに、ハーミーが食いついてきました。おじいちゃんは、自分の立派なアゴヒゲを撫でて、神妙な声を出しました。

「うむ。夢の島じゃよ」

「ゆめのしま??」

 王都の郊外にある「夢の国」という巨大なテーマパークが大好きなハーミーは、目を輝かせます。トゥモの両目は通貨マークになっています。パンを売る気マンマンですね。

 そんな二人から異様な気配が漂って、おじいちゃんは気圧されてしまいます。何とか気を取り直し、一つ咳ばらいをしました。

「まあ、その、何じゃ。そこへ行くには、この通行証があると便利じゃ。持っていくがいい」

 懐から一枚のカードを取り出すと、おじいちゃんはトゥモには目もくれずに、ハーミーに差し出しました。

「わあ。ありがとうございま~す」

 おじいちゃんが差し出したカードをハーミーはつかんだのですが、おじいちゃんは放してくれません。

「ただし、条件がある」

 おじいちゃんは、神妙な声を出しました。

 おじいちゃんから、ただならぬ気配が立ち込めます。

 ハーミーは、思わず生唾を飲み込みます。

 いったい、何を言われるのか。

 ダンジョンに潜って、賢者の石を取ってこいとでも言われるのか。

 あのお方に封印を施しに行けとでも言われるのか。

 はたまた、軍資金の一部を寄越せと言われるのか…

 おじいちゃんは咳ばらいをすると、じっとハーミーの瞳を見つめました。












「トリプルドアせんせー、ファイトぉ!がんばれー。大好き~と、この場でワシを応援してくれたら、差し上げようぞ」

「さっ、トゥモ、出発しようか」

 ハーミーは絶対零度の眼光でおじいちゃんを串刺しにすると、全身から冷気を噴出させて立ち上がりました。ハーミーの冷気の余波に震えながらトゥモも立ち上がります。

 冷気の直撃を受けたおじいちゃんは、氷の彫像のように立ち尽くしていたのですが、さすがホグホーグ魔法学園の校長先生。すぐに立ち直りました。

「ま、待て。このカードがないと、夢の島には入れないぞよ」

「私の腕にかかれば、不可能なことなんてないの。さようなら、変なおじいちゃん」

「わ、分かった。トリプルドアせんせー、がんばれー、だけでいいから。最近、女子生徒たちがワシに冷たくて寂しいんじゃ。それくらいしてくれても、バチは当たらんじゃろ」

「おい、ハーミー。それくらい言ってやってもいいだろ」

 何だか哀れに見えてきたおじいちゃんの肩をトゥモは持ったのですが、ハーミーはキッとトゥモを睨み付けます。ハーミーの絶対零度の視線で心臓を貫かれながらも、トゥモは折れようとしません。ハーミーは大きくため息をつくと、いやいやそうにか細い声で、

「トリプルドアせんせー、がんばれー」

と言ってあげました。何もそこまで嫌そうにしなくてもいいだろうと思いながら、トゥモはおじいちゃんを見やると、おじいちゃんは涙目になっていました。

「ありがとう、ありがとう!ワシ、これでまだ頑張れるよ。ホントにありがとう」

 そう言うと、おじいちゃんは、ハーミーの手をつかむと、その手に通行証を握らせました。絶世の美女というわけでもないフツーの女の子に嫌々応援されただけで、これだけ感激するなんて…トゥモは「おじいちゃん。頑張れ!」と心の中でガッツポーズを作りました。

 一旦、二人はトゥモのパン屋に寄ります。トゥモのパンを大量に持っていって、食費をケチるためです。それと、

「そんなにいろいろ持っていく気?」

 ハーミーはビックリします。魔法で保存効果を高められたパンだけでなく、ヤカンやコーヒー豆、ティーバッグ、茶器のセットだけでなく、トースター③まであります。

「夢の島で青空喫茶店を開けば、ただパンを売るよりも高く売れる」

 トゥモは商売っ気マンマン。軍資金を使うどころか増やす気かよって、ハーミーはあきれ返りました。

「そんなにたくさん、どうやって持っていく気なの?」

「フン。俺の目を節穴だとでも思っているのか?」

 トゥモはビシッとハーミーの肩掛けカバンを指さしました。

「それ、無限収納カバンだろ。俺の目はごまかせない」

「な、何で分かったの!!?」

 ハーミーは大きく目を見開いて驚きます。そんなハーミーをトゥモは得意気に眺めました。

「おまえの姿を見たら、全てお見通しだ」

「そ、そんな。絶対バレないと思っていたのに…」

 ホグホーグ魔法学園の支援魔法使いの制服姿のハーミーは、とんがり帽子を目深にして顔を隠しました。

 見た目が幼く見える無邪気なハーミーに、誰も突っ込みを入れることができないから、みんなが暖かい目で、ハーミーのことをメカオタク少女として見守っていただけなんですよね。しかも、ハーミーの機械が魔法で動いていることも、実はみんな知ってます。

 恥ずかしがるハーミーにトゥモは優しく語りかけました。

「その年で無限収納カバンを作れるとは、実に素晴らしい科学者だ。俺はお前をソンケーするよ。使わせてくれたら、利益の2割をお前にあげるから、使わせてくれないだろうか」

「に、2割?使わせてあげただけで、2割?」

「ああ。お前の科学力には、それだけの価値がある」

「そ、そんなに褒めてくれるなんて、ウレシイ!!」

 その場で小躍りするハーミー。お祭りで自信作を披露しても小金しか稼げないハーミーは、今までこんなに評価されたことがありません。それを暖かい目で見守るトゥモ。こいつ、ちょれーって心の中でトゥモが舌を出していることなんて、浮かれているハーミーには気付きようがありませんでした。

 いよいよ明日には出発。たった二人の冒険の旅には、一体何が待ち受けているのでしょうか。さあ、請うご期待!!


こんなメチャクチャな話、つづく…のか??



「おい作者、俺の出番は?」

「は?お前、だれ??」

「何だと。この物語の真の主人公ハラーヘッターだろうが。作者のくせに、そんなことも知らんのか」

「お前のことなんか知らん。課題の3つの単語使い終わってミッションクリアしたから、もうおしまいだ」

「ふざけんな。出番のために昨日から準備してきたのに、俺の苦労をどうしてくれるんだ」

「そんなの、私の知ったことか」

「ふ、ふざけんなあああぁぁ!!!」

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