2.始まりの合図
第2話
ここは全国でも有名な権力者や財閥などの子どもたちが集まる高校。
大学は実力次第でストレートに進学でき、ここに入学すれば将来は国の重鎮的存在になったり会社の社長など、将来は引く手あまたで安泰が確定しているような高校である。
そのため、授業には国語や数学、英語のほか、社交界に出るための食事マナーや作法などが学ぶ時間や、定期的に他の学校などとの交流会もある。その関係か、生徒たちの中には交流会で人脈を形成し、自身の立場を確立するような人もいる。
授業の終わりのチャイムとともに学生たちが我先にと部活や自身の習い事のために移動を始める。
一番後ろに座っている、否、机に突っ伏している生徒は窓から差し込むオレンジ色の夕日の眩しさと夕日があたり続ける異様な暖かさに目を覚ました。
ムクリと起き上がったその生徒は、瞳は大きくて分厚い眼鏡と分厚い前髪で隠れており、口元しか見えず、長いうしろ髪はきれいな三編みを腰まで垂らし、スカートはヒザ下までの長さといったような典型的な地味を現した格好をしており、先程寝ていたことをみていなければ、どこからみても目線の合わない地味で幽霊のような女生徒にしか見えない。
その生徒はゆっくりとした動きで帰り支度をしていると、ふと動かしていた手を止めた。ためらいを持った雰囲気で通学カバンに手を入れ、恐る恐る、といったような雰囲気で手を引き抜き、左手に持っている手紙を見ると、────いや、みたような姿勢になると、それはもう驚くほど深く長い溜息をついて重い腰をあげる。
「行かないといけないのか……」
少女はそうつぶやくと左肩に通学かばんをからって重い足取りで目的地まで歩いていく。
他の生徒達はやはりこの女生徒の容姿が気味悪いのか、女生徒をみてはコソコソと話し、決して近寄ろうとはしない。
少女が歩いた先にあるのは金文字で”生徒会室”と書いてある部屋の前。
少女は目を閉じて息を吐き、覚悟を決めたような顔で生徒会室につながる扉を見上げる。その間も生徒会室の前で立ち止まる少女をみて生徒たちはチラチラとみては通り過ぎていく。
少女が生徒会室の扉を開き、
「失礼します」
といって静かに入る。
生徒会室の中は誰も居ないらしく、シンっと静まり返っている。
「誰も居ないのか…」
手紙を黙って置いて帰るわけにもいかず、いたたまれなくなった少女は豪華なテーブルの正面に置いてあるソファに座り、手紙はかばんに入れてじっと待つことにした。
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