第51話 今更ではありますが。
「…………ん」
柔らかな光の中、ぼんやり目を覚まし瞼を擦る。何とも心地の良い、幸せな朝で――
「……おはようございます、
「……っ!! あっ、その……」
「……おや、どうして目を逸らすのですか? 悲しいではありませんか。……昨夜は、あんなにも熱烈に求めてくださったというのに」
そう、そっと頬を手を添え告げる清麗な少女。その雪のような頬が真っ赤に染まっているのは、きっと気のせいではないだろう。
まあ、それはそうと……うん、自分でも今更だとは思うけど……その、一糸纏わぬその姿を改めて直視するのは少し……いや、すごく恥ずかしくて。
「ところで、由良先生。薄々そうかなとは思っていましたが、もの凄く鍛えられてますよね、先生のお身体。実際にこの目で拝見して流石に驚きました」
「……へっ? あ、ありがと
それから、一時間ほど経て。
食卓にて、閑談の
まあ、それはともあれ……そっか、そう見えるんだ。一応、あの日から日々トレーニングはしているけど……こうして実際に……それも、他でもない彼女に褒めてもらえると、きちんと成果が出ていると自信が――
「――それで、先生。いかがでしたか、私の方は?」
「…………へっ?」
自信が湧いていた
……うん、自然だと思うよ? 流れから言えば、ごく自然な
「……おや、いかがなさいましたか? よもや、お答え出来ないほどに何の印象も残ってな――」
「いや残ってる! 鮮明に残ってます!」
すると、にっこり笑顔のまま再び尋ねる蒔野さん。私は言いましたよ? ――心做しか、そんな圧が伝わってくる笑顔で。……うん、そうだよね。もう、こうなったら覚悟を決め――
「……その、すごく綺麗だった。大袈裟でなく、この世のものとは思えないほど」
「…………へっ? あっ、その……ありがとう、ございます……」
そう、じっと
「ふふっ、今日はドキドキの一日でしたね。誰にも言えない秘密を胸に、視線で会話を交わす二人――こんな日が、ずっと続くと良いですね? 先生」
「……いや、ドキドキと言うかは……」
それから、暫し経た放課後にて。
茜に染まる空の下、
さて、あらかたの流れを説明すると――あの後、些か居た堪れない
そして、一限目。我らが一年二組の授業は、古文……まあ、僕の担当する科目で。なので、と言うのもおかしいけど……授業の間、終始ある一点から意味深な視線を感じて……うん、たいへんやりづらい。
ともあれ、平時にはない緊張の中一日を終えこうして二人家路を――
「……あっ、ちょっとごめんね」
断りを入れ、ポケットからスマホを取り出す。たった今、通知を知らせる電子音が響いたから。そして、発信相手と内容を確認し――
「――ごめん、蒔野さん。突然だけど、少し寄り道しても良いかな?」
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