第一部アースリア編(中編)
ある日、
「アル」
俺に声をかけたのはアリス。なんか後ろに強そうな人たちがいるんだけど。
「アルタイル君」
アリスさんの後ろにいる騎士が俺の名前を呼ぶ。
「あなたは……」
その騎士が名乗る。
「私は《マティリス・クラン》の団長、《ディオン・クリンス》だ」
「あの時の…」
前に助けてもらった。《聖騎士》。
「で、そんな方が俺に何か用ですか」
俺の質問にディオンは笑みを浮かべて答える。
「単刀直入に言う、私のクランに入ってくれ」
「え?」
最高峰のクランに俺が……?だが。
「誘ってもらって申し訳ないんですが……お断りします」
「……アル」
アリスは顔を曇らせる。俺は少し心がキツイが。
「何故かね?」
ディオンの問いに俺は笑って答える。
「人との関わりは疲れるんです。冒険者みたいに命をかけて戦う仕事で、大切な仲間や人をつくりたくないんです。傷付きたくないんです。もう、二度と」
《マティリス・クラン》の人達は何かを察したのか、言葉が出なくなる。
「……なら、自分の自由は、自分の剣でつかみたまえ」
「…は?」
「私、ディオン・クリンスは、貴殿、アルタイル・アリエルに決闘を申し込む」
宿の中で驚きの声が上がる。しかしクランメンバーは何も驚いている様子はなかった。アリスに関しては満面の笑みになっている。
「決闘は明日の午後二時、準備してくれたまえ」
「ちょっ」
立ち去るのを止められなかった。
「……どうしよう」
俺は剣を持ち、とある店に出掛けた。《ベリアス鍛冶屋》
「いらっしゃせー!」
扉を開けて店に入ると
「あら、アル……今日はどうしたの?」
「急いで装備がいる。用意できてるか?」
「……任せなさい」
ベリアスが裏から大きな木箱を持って来る。
「これが……注文の品よ」
その中には二本の剣が入っていた。一本の剣は《ナイトプレート》。
そしてもう一本は《アイアンブレード》。量産型の剣。
「あんた、ホントにあんな戦法を使うつもりなの?」
「ああ」
「そ……、あんたの戦略も分かるけど、戦いの中でそこまで頭回る?」
「何とかするさ」
「二刀流ねぇ……」
「加護の効果もなしに《新約》を破れるの?」
「……」
そう、この決闘で最も重要な要素、ユニークスキル《新約》。ディオンがこの街最強――。いや、冒険者最強を誇る理由。攻防一体の剣技。今まで決闘を全勝。しかも一撃も喰らっていないという。大盾とロングソードを自在に操る無敵の存在。そんな規格外には、《規格外》で立ち向かうしかない。店で武器を受け取り、近くの森で剣を振るう。二刀流十二連撃。大木に切りかかると、木に大きな切れ目が入った。
「…………いけそうだな」
圧倒的な防御力には圧倒的なスピードと火力をぶつける、そんな単純な発想から生まれた戦術。
ただ、これしかないんだ。…………全力を。
俺は徹夜で二刀流を練習。片手剣技も修練を積んだことで熟練度は七○○を超えた。
今まで使ったことのない技も習得して、準備完了。
決闘場に行くと大量の観客が待機していた。ディオンが戦うということで、一目見たいのだろう。俺が待機室で準備していると、アリスが中に入ってきた。
「アル」
「どうした?」
「こんな手段でアルをクランに入れることになるなんてね」
アリスは前々から俺を誘っていた。念願なのだろう。しかし俺も負けるわけにはいかない。切り札の二刀流を使うんだ。ディオンの守りを破れるのは、それしかないんだ。
「俺は負けません」
「…………団長が待ってる」
会場の中央にその男はいた。白髪に銀色の眼。鎧を身にまとった騎士は、大盾と長剣を手に黒き剣士を待っている。
「始めよう」
「ああ」
「《最終決着条件》で構わないかい?」
「構わない」
この条件はどちらかが気絶、もしくは戦闘不能になった場合に決着する。
俺は《ナイトプレート》を引き抜き相対する。周りからは《アイアンブレード》は予備の武器だと思われているはずだ。
(まずは片手剣で様子を見る…………)
ディオンは攻撃する気配がない。俺は
通常、発動した剣技に途中から動き始めて追いつくことはないはずなのだが、奴は盾で簡単に止めて見せた。
「なんで追いつけるんだよ……!」
俺は思わず、ディオンに聞いてしまった。
「私の《新約》は今の人体学でも解明されているものだ。私の秘密は《脊髄反射》さ。」
「なるほどな…………」
脊髄反射、要するに目で見ての動作ではなく、脳を通さない即時対応をしているわけか。それに奴の重心が全然ブレない、つまり…………。
(奴の存在自体が最高の守りの根幹!)
スキルだけならまだ希望があったのだが……俺の全てをぶつけるッ!
(あの武者もこれには耐えられなかったぞ!)
片手剣四連撃技、《エクシア》
片手剣六連撃集中技、《パーティクル・リンク》
片手剣垂直二連撃技、《スラット・リンク》
おまけだ!片手剣単発突進技、《ソニックスラスト》!
合計十三連撃の攻撃に思わず観客たちもざわつく。しかしこの男は確かに少しばかり驚いたっぽいが、的確に全てを防ぐ。
「確かにアリスが推薦するだけはあるな。最初に君の話を聞いたときは耳を疑ったがね……、彼女がレベル1の剣士に一本取られたというのだからな。しかし今なら彼女の気持ちが理解できる。君が欲しい、アルタイル・アリエル君」
この人が言っていることはとても魅力的だ。最高のクランに入って悪いことはないだろう。だけど。
「……俺は、クランに入るつもりはない」
「何故かね?」
昨日もこんな会話だった気がする。けど、俺は別の言葉を述べる。
「俺は、俺自身の力で強くなりたい。そう……」
いつも読んでいる、俺の、始まりの英雄のように。
「俺は、英雄になりたい……」
小さく呟いた言葉を聞き取ったのかディオンは、そうか、と優しい笑みを浮かべる。この男は、俺と同じなんだ。ただ自分の存在を見せるために、戦って、戦って、戦って。最強を手に入れてからも鍛錬を続けて、周囲を引っ張っているんだ。これが、俺が目指したものではないのか。俺は……いや、違う。俺とこの男は違う。魂に刻まれたたった一つの違いは、他人を信じられない。いや、その資格がないんだ。名も知らぬ同業者すら助けられなかった俺には、孤独がお似合いだ。それでも、この憧れは消えない。世界の英雄になれなくても、たった一人を守れる英雄に、俺はなりたい。
「あんたの言うように俺の夢は、俺が掴んでみるさ。この剣で」
「さあ、やろうか。これが俺だ。抗うことしか知らない未熟者の進む道だ」
あいつは俺の答えに納得したのか知らないが笑っている俺を見て、どこか心の底から楽しんでいるように感じた。ディオンは初めて剣を構える。盾で体を隠しながら攻撃を仕掛けてくる。
俺はサイドステップで回避を試みるが、盾で殴られ、剣が俺の寸前に現れる。俺は片手剣反撃技、《アンタル》を発動してギリギリで防ぐ。
「あんたは大岩かよ……!」
ディオンは上段突進技の構えを取る。長剣上段突進技、《クリンク》。これで決めるつもりかな。だけど……。
(これを待っていた!)
二刀流を使うまでの布石。思っていたよりも時間がかかってしまったが。
「ハアァァァァ!!」
片手剣上位反撃技、《リバーサル》。ディオンの剣を弾き、少しだがディオンの体勢が崩れる。だけどこの技はこれで終わりじゃない。剣を弾いた直後にキィィィィン!という爆音がディオンを襲う。ここだ。俺は《アイアンブレード》を引き抜き、二刀流で攻める。
「セァアアア!」
二刀流で十六連撃を打ち込む。これには驚いたようで思わずディオンは体勢を崩す。
(…………行くぜ)
右、左、右、左。剣を振るう体にスキルの補正はない。しかしその剣には俺の想いが乗っている。そして十八連撃。ディオンが俺に答える。
「ああ、やろう……《黒き剣士》!」
最後の攻防となる次の手に、ディオンは腰を落として、どっしりと構える。俺はその騎士に向かって走り出した。
「せぁああああああああ!!!!」
俺は全身全霊の二刀流十四連撃を放つ。そして
(目覚めろッ!《ナイトプレート》!《アイアンブレード》!)
俺の意思に答えるように、剣撃のスピードが上がり、ディオンの防御を突き破る。
「これが、俺の意思だ!」
右手に握る《ナイトプレート》を《アイアンブレード》で押し出し、ディオンの左肩に直撃する。しかし、ディオンは踏ん張り、剣を握ったままの拳で、俺の腹を殴る。
「ぬおおおお!!」
「がっ…」
俺は地面に倒れてしまった。
次に目が覚めると、冒険者ギルドの医務室だった。
「……負けたのか」
俺は悔しかった。いくら命を賭けていない決闘といえ、負けるのは悔しい。そこにディオンが現れる。
「アルタイル君」
「ディオン……」
「君の意思は見せてもらった。どうだろう、クランに入らずに、我々との協力関係を築いてくれないだろうか?」
「……えっ?」
―――俺は……負けたのに?
「確かに君は素晴らしい人材だ。実に欲しい。喉から手が出る程にね、しかし……私は君がどんな力を持つのか見てみたい、どうだろう?」
「本当に、いいのか?」
「まあ、アリスを説得するのは大変だったけどね。だから条件として協力することになった場合は君とアリスと君をコンビにすることを提示して何とか説得できたのさ」
「は?」
……………………なんで?
俺に会いに来た後、ディオンはギルドの外で、ボーっとして考えていた。
(……君は気付かなかっただろうが、今も肩が痛むよ……。しかし、《俺は英雄になりたい》か)
「面白いじゃないか」
第零時・プロローグ《〝神々に嫌われた男〟》
ゴーン、ゴーン。七時の鐘が鳴り響く。それで目を覚まし、簡単な朝食を食べる。
「おはようございまーす――」
冒険者ギルドに顔を出すと
「アンタ……!」
「げっ……」
ベリアス――。彼女は俺の首元を掴み
「また無茶して!武器だけで良かったけど、あんた死ぬところだったらしいじゃない!」
「うぐっ……」
「《アイアンブレード》を寄こしなさい!」
「…………はい」
背中の鞘に入れているアイアンブレードをベリアスに手渡すと
「あらー見事にボロボロ…」
「すまん」
「いいわよ別に、カモがまた来たみたいなもんだし」
「あ、鍛冶場借りるわよ」
冒険者は大体がベリアスに世話になっているため、ギルドは断れない。どうぞどうぞと道を開ける。
「相変わらず使われないくせに設備だけはいいのね。ここ」
「まあ、中央ギルドだからな」
「それより、さっき言ったこと、本気なんでしょうね」
「…………ああ、頼む」
ベリアスはただ、分かったわ。とだけ言い、アイアンブレードとそれを取り出す。それは《ホワイトディザスター》の魔石。俺はこいつの罪を。後悔を背負う。それが名も知らないあの人達へのせめてもの贖罪だ。
彼女は魔石を剣に押し付け、炎で熱する。それにより刃は溶けて、混ざっていく。そして金槌で叩く。千回ほど叩き、水で冷却。その刀身はただの魔法鉱石だった頃と違いエメラルドグリーンとホワイトに輝いている。
「これが…………」
「それが、その剣の新しい姿、《ベールリオン》。意味は…………《獅子の布》」
「ベール、リオン……」
「その剣はアンタの魂の鏡。あんたの願いを、後悔を、未来を切り開く剣」
「べリアス。ありがとな」
「いいわよ別に。お得意さんなんだから」
「……ああ」
《ホワイトディザスター》の負の力。俺の願いの力が宿ったその剣を背中の鞘に入れる。
「二刀流。似合ってるじゃない」
「だろ?」
「…………ふふっ」
穏やかな時間。しかしこういう時に限って、悪いことは起こるもんだ。
スキルは神の加護の一つだ。しかしスキルには普通の技と違う点が四つある。一つは威力だ。発動すれば体が半ば自動的に動き出し、そこに力を込めることで威力が上昇する。二つ目はスキル発動中に急に違う動きをしてはいけないこと。これを破ると三つめの特徴である硬直が課せられて、一瞬動けなくなる。戦闘中に隙を作るのは命取りだ。なので常に頭を動かし続けることが必要となる。そしてこれが最も大きな違い、スキルはあらゆる法則より優先されるということだ。四Ⅿジャンプするスキルの時は重力よりそのスキルが優先されるため使用者は重力を受けずに跳躍できる。といった感じにスキルは冒険者の生命線となる技術だ。
しかし、この世界には《ユニークスキル》と呼ばれる唯一無二のスキルが存在する。ディオンの《新約》や俺の《英雄の炎》がいい例だろう。そしてこの街にはもう一人、ユニークスキルを持った人物がいる。
その女性の名は、《セナ》。冒険者登録はしているが戦闘はせずに最近流行している《歌手》というものをやっているらしい。しかもその人気は凄く、何万人ものファンがいるという。
そんな彼女のユニークスキルは、《奇跡》。彼女の歌声を聞いたものは心に安らぎを得て、戦うものは心が鼓舞される。そんな能力は《新約》と違って戦闘向きではなく、戦闘の補助として輝く能力。しかし彼女は人々の心を照らすために歌っている。そんな彼女の二つ名は《天使》。
そんな天使様に近づきたい男などごまんといる。今、目の前に座って飯を食ってる冒険者のオッサン、《カイン》もその一人だ。こいつとは冒険者になった頃に出会ってから、たまに協力したりしている。
「おまえ、そろそろじゃないのか?」
「やべっ、速く食い終わらせないと!」
俺の指摘にこいつは飯を頬張る。こいつがこんなに急いでいる理由は簡単、それは。
「急がねえとセナちゃんのライブに遅れるぜ!」
飯を食い終わって会計を済ませた男は全力で走り出した。
「そんなにハマるもんかなぁ……」
俺は男の背中を見ながら呆れるように呟く。もうカインは見えなくなっているが、あいつ、どんだけ急いでるんだよ……。あいつあんなに俊敏度上げてたっけ……?ま、馬鹿だからだろう。
そんな事を考えつつ、俺も店を後にする。
俺は飲み場と化した宿に戻り、《ベールリオン》を見つめる。そして《ナイトプレート》を見つめる。俺はこいつらの真価を発揮できていない。武器の力を最大限解放する
「……」
俺は背中の鞘に納刀し、宿にあるポスターを見つめる。
《大人気歌い手セナの二周年ライブが今日から明日まで!》
という大々的な宣伝がある。しかも冒険者ギルドの署名付きときたもんだ。ギルドの事だからこういう戦力は匿っておきたいもんだと思うのだが。そんな事を考えていると。
「どうしたんだいアル、もしかしてあんたもセナのファンなのかい?」
「ガイナさん、そんなわけないでしょ」
「ま、それもそうだね。そうだアル、ギルドから手紙が届いてたよ。」
「手紙?」
「ほれ。」
ガイナさんから渡された手紙を開けて、中身を読むと。
《貴殿、アルタイル・アリエル殿に《天使》セナ様の護衛を依頼したい。回答のため、冒険者ギルドに来るように。》
「「はぁ?」」
俺とガイナさんの驚きは当然だろう。しかも当の本人である歌姫はライブ中だぞ。どう護衛するんだよ。
(ま、適当に断るか)
「断りますかね……」
「そうだねぇ。強制依頼じゃないんだろう?なら好きにすればいいじゃないか」
「そうしますか……」
俺は冒険者ギルドに向かう。ライブの事もあってか街はお祭り騒ぎだ。
「なんで俺が――…」
ギルドの受付に行き。
「アルタイル・アリエルです」
「確認しました。依頼の件ですね。それで、受けてくださりますか?」
「お断りします」
「そうですか。了解しました。」
「それでは」
俺は冒険者ギルドから外に出て、道を歩く。
(ったく、今日はゆっくりしようと思っていたのに)
それにしても、俺の所には変な依頼ばっかり来るもんだ。
(そういえば……)
俺は《黒き剣士》の代名詞である黒いコートのポケットを漁り、一枚の紙を取り出す。カインから貰ったセナのライブチケットだ。俺は断ったのだが、来たかったら来い!と渡された。
(確か会場はここら辺だよな……)
俺がどでかいドームを見上げると。
うおおおおおお!と歓声が上がって、俺は思わずビックリしてしまった。
(どんだけ人数いるんだよ……)
ポスターには一万人ドームと書いてあったが……そんなまさかな。
「ウソだろ……」
俺のカンは当たっていた。満員以上に入っていた。そこの中央のステージには金髪の歌姫。いや、幼さが残った天使というべき女性が歌っている。彼女がセナか。
そして俺はとあることに気付く。ドームの中に暖かい金色の光が漂っていた。俺は試しにその光に触れてみると、過去の記憶がフラッシュバックした。あの時守れなかった者達……彼ら彼女らは俺を恨んでいるだろう……。なのに記憶の中に現れた六人は笑顔でこっちに手を振っていた。そして彼らの口が動く。
が ん ば れ よ。
だ い じ ょ う ぶ だ。
き に す る な。
あ り が と う。
最後に聞いた少女の言葉に、俺は涙を流した。
…………俺こそ、ありがとう。
涙を拭い、俺は今の状況を確認する。これが歌姫のユニークスキル、《希望》か。
ただ俺には《慈愛》にも感じるよ。そしてこの光の正体は《心象転写》。自身の心を世界の一部にユニークスキルを通して転写する力。つまりこれが、彼女の心か。
これが人気の秘密。いや、これが心を集めない訳がない。
「……」
俺のカン、いやスキルが何かを感知する。俺は単独冒険者(ソロ)としての最低限の能力として基本スキル《索敵》、《気配察知》を習得している。そして、そのどちらもが反応している。俺はスキル精度を限界まで集中させて、一万の人をかき分ける。どこだ。
この気配は殺気。しかも相手の武器は弓、そして狙いは歌姫本人。こんな状況どうすれば……。いや、思い出せ、父さんが言っていたことを。
いいか?アルタイル、これから先困っている人がいたら迷わず助けるんだ。
(助ける……細かい人物は分からない、気配だけじゃ姿まではわからないんだ。なら弓を放った瞬間に投剣スキルで)
俺は腰から二本の投擲針を取り出し、左右の手に一本握る。集中。そして歌姫の顔に向けて矢が放たれる。ここ、投剣スキル《ショット》
「そこか」
俺は弓が放たれた場所に向けてもう一本の針を投げる。ギャアァァァァ!と弓使いの声が聞こえてその後、歌姫の足元に弓矢が転がる。
「えっ……」
私の目の前に矢が転がった。ライブ中、歌っていた最中にそれは落ちてきた。私を狙ったであろうその凶器は、狙いが外れたのか分からないけど、直撃はしなかった。私は観客席を見つめる。そこには何かを投げた後の体勢をしている黒い人影を見つけた。さっき聞こえた何かがぶつかったような小さな音。恐らく彼が弓の軌道をずらしてくれたのだろう。驚いたが私もプロ。ファンの為に歌わなければ、私は歌い続ける。暗くなった時まで歌っていた。そして今日最後の
「ふう……」
私は休憩室にあるベッドに飛び込み。
(助けてくれたあの人、誰なんだろう。黒い人だったなぁ)
俺は彼女を狙った矢をずらした後、妙に疲れて家に帰っていた。冒険者として稼いだお金で買った一軒家だ。大分高かったぞ。その額、一千万リル。普通の量産型の剣が五千リルなのに高すぎだろ。フカフカベッドに座り、自分のステータスプレートに記されたスキルロットを確認する。《片手剣》《索敵》《気配察知》《投剣》《隠蔽》《英雄の炎》《反撃》《闘気》の八つ。
ソロは一人でどんな状況でも対応しなければいけないため、これを使い、生き残らなければいけない。そのために俺は普通の冒険者が四つ程のスキルロットを持っているのに対して、その倍のスキルを習得している。緊急事態には二刀流も使うが基本はこれらのスキルでやり繰りしている。眠気に襲われた俺は、眠った。
「ふぁ…」
起きた俺は朝食を取った後、装備を整えて家を出る。平和な日常。
「おーい!」
俺を呼ぶそれはカインだった。
「どうした?」
慌てているカインを見て俺は、呆れたような声で聞くと。
「それがよ!今朝セナちゃんからの発表があったんだけどよ…………」
「それがどうかしたのか?」
カインが叫ぶように言う。
「だからよ、セナちゃんが《黒き剣士》を探して欲しいっていう依頼を出したんだよ!」
「はぁ?」
「そんな事しなくても、ギルドを通じて呼び出してくれれば顔を出すのに」
「だろ?なんか変なんだよ」
「それで、その捜索の条件は?」
「……………《捕獲許可》」
「……っ」
思わず息を呑む。《捕獲許可》とは犯罪者などに適用される。要するに強制連行を許可する条件。俺が自ら冒険者ギルドに行けば話は解決するのだが………。
「……ここからギルドまで結構距離があるな」
「多分それがセナちゃんの目的なんだと思うぜ。」
「どういうことだ?」
カインから出てきた言葉は驚くものだった。
「情報系の冒険者に聞いてみたんだけどよ。何故か冒険者にギルドの周囲に囲むよう指示が出ているらしいぜ」
「まさか………ギルドの上層部は何を考えているんだ」
「さあな、だけど、その冒険者が言うにはまるで、お前を試すような陣形が組まれているんだと」
「試す……」
「…………カイン」
「どうした?」
「自分で聞いて確かめたい、力を貸してくれ」
オッサンは俺の背中を叩き、任せろ、と言った
「相手は完全武装だと思うけどよ、どうすんだ?」
「正面突破だ」
「…………面白れぇ!」
カインはズボンの中から赤いマフラーを取り出し、首に巻く。そして腰から飾り気のない直剣を引き抜く。赤い鞘に赤い持ち手の鉄剣。路地を出ると早速冒険者が出てくる。
「見つけたぞ!」
こっちに切りかかってくる。完全に捕縛する気だな。
「どりゃあ!!」
直剣上段技、《スラスト》。直剣共通の上段斬り。
「殺すなよ?」
「手加減はしてるっての」
こいつは二つ
今度は重騎士が構えていた。俺は全力で走り出しスキルを発動。片手剣上段突進技、《ソニックスラスト》。兜を叩き割った。
「おめぇこそ手加減というものを知らねえのか?」
「?」
その時俺らは何かを察知してステップでよける。
「……アリス!」
そこにはレイピアを構えたアリスが立っていた。
「アル、何をしたの?」
アリスはかなり怖い顔をしている。
「何もしてません誤解です!」
「そう………けど、依頼だから」
「……アルよう、……ここは任せろ」
「……すまない」
俺はギルドに向かって駆け出す。カインは直剣を構えて
「さあ、お嬢ちゃん。俺と遊ぼうぜ?」
「はっ、はっ……」
走っている俺の目の前にまた一人、大盾を持った騎士が。
「っ、せ、ああああああ!」
片手剣単発突進技、《ソニックシュート》。盾に向けて放った一撃が通り、その騎士を越えていく。
「行きたまえ」
「ああ」
騎士は俺に道を繋いでくれた。進む。最後の壁を破り、ただ進んでいた。まだ、進め!
カインと騎士に繋いでもらったこの道。たどり着いて見せる!
「どりゃああああああ!!」
冒険者ギルド支部長室のドアを蹴破る。
「お、来た来た」
「さあ、聞かせてもらおうか。なんでこんな事をした。支部長!天使!」
「いやぁ、俺の権限じゃ断れなくてね……本当にすまなかった」
頼りなさそうなオッサンの謝罪を聞いた後。
「ごめんね。君の実力を確かめたくてこんな依頼を出したんだけど……」
「流石にやりすぎだよね」
「ああ、やりすぎだ。ギルドに慰謝料は請求するからな」
「あはは……」
「で、なんでやった?」
「えっとね。昨日のライブで弓矢の軌道を変えて、助けてくれたのは君なんでしょ?」
「どうして分かった」
あの投擲針には《隠蔽》の効果を付与していたはずだ。鑑定スキルでもそう簡単には……。
「ウチにはお抱えの鑑定士がいるからね」
「……はあ」
専門家の目は誤魔化せないか。
「なんで探してたんだ?」
「えっと、私の依頼を断った件について聞きたくて」
「え?ただただ、めんどくさかっただけだけど」
「え?」
「え?」
「は?」
支部長、天使、護衛の騎士の三人が、ふざけてる?という反応だったので俺は、
「いや、ホントにめんどくさくて。しかも昨日休日申請してたし」
「そう…………なら、私の眼を見て」
「?」
「いいから」
「……分かった」
言われた通りに俺は彼女の眼を見る。すると彼女の眼が薄い紫の光を纏う。俺は危機を感じてバックステップしようとしたが今は座っていて動けない。
「《私の騎士になって》」
俺の中に何かが入り込んで……魅惑の光が俺の心に入ってくる。鎖が、俺を縛る。これはまさか……《魔眼》。ユニークスキルとは違った、派生したスキル。意識が……塗りつぶされて……。コツ、コツ、俺の中で誰かが歩いている。その男は俺にそっくりな姿をしている。黒いロングコートに二本の片手剣。その男は二刀流の構えを起こしてこっちを見る。キイィィィンとスキルの起動音。《二刀流スキル》。
「……」
技名を言ったらしいが俺には聞こえなかった。二刀流の連撃。その剣は俺を縛る鎖を断ち切る。
「うら、ああああああ!!」
俺は自身の意思を立ち上げ、立ち直る。
「うっそぉ……」
「なんと!」
「何をした……!」
俺の怒りが籠った問いに彼女は
「いやぁ、わたしの《恋成眼》で護衛になってもらおうかなって」
「ほうほう、ま、これで用はないんだよな?……それじゃあな」
俺はソファーから立ち上がり、部屋を出る。
(疲れた。後でカインに礼を言っておかないとな。)
後で聞いた話によるとカインはアリスさんの攻撃に耐え、倒れなかったという。
あいつすごいやつなんだな……。アリスはなんで強い人は一人がいいんだろう……って俺に聞いてきた。いやディオン団長じゃん!というツッコミはやめておいたが。
「疲れた」
マジで休めねぇんだけど。しかもカインは明日のライブに行くつもりらしい。
よくそんな体力あるよな、バカだからだろうか。あいつ今頃くしゃみしてんのかな。しかし天使とはいえあんなことするんだな…………。
「…………眠い」
ふと自分のステータスカードを見ると、
「なんだこれ?」
習得スキル一覧に《■■■》と文字化けして読めない物が表示されていた。
「こんなの初めてだな……」
三文字?なんかあったっけ?まあ、不具合だろうからすぐに直るだろう。それにしても、平和だな。これが続くといいんだけど。しっかし、まだ気になる事がある。なんで今更冒険者の護衛が求められたのか。天使の護衛には《騎士団》から精鋭が選抜されると聞いているんだが。普通それで十分のはずなのだ。他に冒険者の護衛は要らない。なのに、天使は魔眼まで使って俺を護衛にしようとした。なんでだ。こんなこと気にしてもなんもならないのは分かっている。だけど、何故か引っかかる。俺は家に帰る。
「…………なんなんだよ、…………疲れた……」
休みだったのに。俺は家のベッドに寝転がる。もう暗くなっているので、俺は眠った。
次の朝俺は、家から出たくなかった。しかしドアをノックされ、俺は起き上がる。
「…………どちらさま……」
「やべぇぞ!アル!」
「カイン……朝からうるさい」
「いや、それどころじゃないんだって!」
「?」
「いいから、早く装備を着てこい!」
「あ、ああ……」
とんでもなく焦っていたカインを見て、俺は急いで準備をする。
「どうしたんだ?」
「ついてこい!」
走り出し、しばらくすると二日前に来た場所に来る。
「…………普通のライブじゃないか」
「よく見ろ!」
歌っているセナの周りには騎士達が殺陣を行っている。けどなんだ、この違和感。
「…………死んでいるのか?」
「《隠蔽》で傷も血も見えないんだが、ピクリとも動かねぇんだ」
「急いで止めるぞ」
「おう!」
俺達はそれぞれ得物を引き抜き走り出す。観客席を飛び下り、ライブステージに突撃する。
「オリャあああああ!」
先にカインが両手単発突進技、《リース》を発動して、騎士達に向かう。ふん、と剣の側面で叩き、気絶させた。
「《黒き剣士》に《旅月》⁉」
「おう、ライブを殺戮に変えんじゃねえよ」
カインは楽しみを潰されたことに怒り、半ギレ状態だ。
「悪ぃが、手加減なしだ」
マフラーの剣士はそう言いつつ、剣を敵に向け
「継承展開、《孤月》」
その言葉の後、カインの剣と鞘をライトベールが覆う。しかし、普通と違うものが。通常のライトベールは刃そのものが発光したように見えるのに対してそれは、まるで青い炎のように剣を覆い、揺らいでいた。
「孤月壱式」
「《夕刻》」
神速の抜剣術。刃が触れる前にライトベールがぶつかり、その直後、剣が敵の鎧に直撃した。
これがカインの一族に伝わるエクストラスキル《孤月》。広げたライトベールに斬撃を付与する能力を持つ。
「貴様ぁああ!」
騎士の一人がカインに切りかかる。
「《残影孤月》」
「ガッ……」
設置された斬撃に当たった騎士も倒れていく。
「次はどいつだ!」
「来ねぇなら、こっちから行くぜぇぇぇぇ!!!」
「俺も混ぜてくれよ」
「へっ、好きにしな!」
両手単発上段突進技、《アトラシュ》。上段からの振り下ろし。
カインは筋力と技術で攻めるタイプなので、敵からしたらキツイ筈だ。
案の定騎士は倒れる。俺も負けないように剣を振るう。片手剣垂直二連撃技、《スラスト・リンク》。二連撃技を受けて、騎士は一歩下がる。
「何故気付いた…………《隠蔽》はどうした!」
「悪いけど、《索敵》持ちなもんでな」
「クソがああああ!!!」
騎士にあるまじき言動と行為だな。
片手単発突進刺突技、《ソニックシュート》。鎧の横腹をえぐりとばし、気絶させる。
「お前達、偽物だろ」
「チッ……」
そう、こいつらは《弱すぎる》。本物の騎士なら、こんな芸みたいなことに紛れて殺し合いをしない。こいつらは《犯罪者クラン》だろう。冒険者ギルドに属さない法外組織集団。殺しや窃盗、破壊工作などを行い、モンスターの次に冒険者の敵となる勢力。
「この野郎ッ!!死にやがれェ!!」
偽騎士は両手剣垂直斬りを放ってくる。しかし、本物の騎士より圧倒的に遅い。本来はナイフや短剣を扱っているのだろうその相手の剣を避けて俺は
「死にさらせぇぇぇぇぇぇぇ!!」
「悪いがごめんだな。」
「セアアアァァァァ!!!!!」
奴は剣を止めて盾を構えている。しかし、片手剣上段技、《グランデ》で奴の盾のバランスを崩す。そして
「カイン!」
「おうよ!」
両手剣刺突技、《シングルショット》。男は鎧を着けているとはいえ胴体に大ダメージを受け、膝を付き倒れる。一人が敵の防御を崩し、もう一人がトドメを刺す。スキルの硬直時間の問題も連携すれば問題ない。敵の集団を全員を倒すと、歌っていたセナが目に入る。……おかしい。
(こんな状況を見てなんで平気で歌っているんだ……)
まさか…………。
俺の予感は的中していた。彼女に声を掛けると、セナは倒れてしまった。……決まりだ。
これは《洗脳スキル》によるもの。
「おい!しっかりしろ!」
俺の声に反応しない。
この症状は《特定付呪品》で発動しているタイプ。どこかにあるそれを壊さなければこの呪いは解除されない。
「やあ、これを探しているのかな?」
「あんたは……」
そこには眼鏡をかけた若者が笑って立っていた。その手には土偶。間違いないだろう。こいつがセナに呪いをかけた張本人!
「僕は《クリスハイト》。犯罪者クランのトップをやっている者さ」
「そんなお前がなんでこんなことを!」
「なんでだって?それは《依頼》だからさ」
「依頼だと……」
「そ、君たちも誰かの依頼で働いているんだろう?それと同じさ。僕達が受けた依頼は彼女の信用を無くすこと。のはずだったんだけど、君たちが気付いちゃったからそれも出来なくなってしまったよ」
「なら……」
俺が意見を言う前に奴が叫ぶ。
「だけどね。もう一つ依頼は残っているのさ!」
「彼女を殺すという依頼がね!……やれ」
ドゴーン!という爆音と共にステージが割れて何かが這い上がってくる。そう、モンスターが。この街に侵略してくる。
「誰か!冒険者を!」
「助けて!」
「子供がまだあそこに!」
「キャアァァァァァァァァ!」
「死にたくない!」
「うわあああああ!」
モンスターが侵略してきて三十分が経過した。俺達は今、前線で戦っている。いや、生きている。
今、運命が進み始める。モンスターを押し返し始めたその時、後ろから大きな影が現れる。それは……あの武者が子供のように思えてくる巨人だった。
俺はクリスハイトと名乗る男に切りかかる。
(巨人の方に行きたいのに、こいつ)
魔眼持ちか。能力は……。
「ハッ!」
奴の眼が金色に光り、黒いひし形の模様が四つ入った様な眼になる。
「ソードフェイク・サード」
男の手元に剣が三本現れ、こっちに向かってくる。
「せやっ!」
俺は二刀流を使い、それを叩き落す。こいつの能力は《剣を生み出し、それを操る能力》だろう。
「へえ、僕の《擬剣眼》をここまで防いだのは君が初めてだよ。いや、一人いたか。けどこれならどうかな?」
「ソードフェイク・フィフス」
五本の剣がこっちに来る。同時には防げないので、回避しながら叩き落す。
(大体分かってきた)
こいつが生み出せる剣はおそらく《見たことのある剣》のみ。そして剣には追尾性能があるが、叩き落せば操作不能。
「うーん、流石にこれ程とは予想してなかったなあ」
「ソードフェイク・ハンドレット」
「は?」
今度は百本。
「せっ、ふっ、てやああ!ハアア!」
防ぎきれない!
「下がってな」
「…………えっ」
俺の前に現れたのは、狐の仮面を着けた男。
「……」
その男の眼は、アインハルトと逆の色をした魔眼だった。
「セイバー・オン」
同じく百本の剣が百の殺意を弾いた。アインハルトは呆れたように
「やはりゼオン、君の《剣滅眼》は」
「「セイバー・オン」」
「近接の方が良さそうだ」
「俺もそうする」
アインハルトはサーベルを。ゼオンと呼ばれる者は片刃曲刀を握り、接近する。
「ふんっ!」
「せいっ!」
キン、と音がした後、またその音が鳴る。連撃同士の衝突。しかしそれは言うなら……。
凡人の剣。才能のない普通の剣筋。努力の結晶。
「「セイバー・オン!」」
手持ちの剣が壊れるとほぼ同時に剣を複製する。……何故だろう。手が出せない。この二人自身がやらなければいけない戦いな気がしてならないんだ。見守るしかないのか…………?
「セイバー・オン、
「セイバー・オン、
「「エッセンスト・リバレーション!」」
「なっ……」
真相解放……
「リード・オブ・セイバー!」
「カウンターセイバー・セット」
「ファイア!」
高く飛んだアインハルトの後ろから数え切れない剣が絶え間なく降り注ぐ。それに対しゼオンは手に持った黄金の剣を構える。
「ストライクカウンター」
最初の一本を弾くと、他の剣が塵となって消えてしまった。――黄金の剣も。
「…………アンティス、代償の反撃か……」
「ご名答」
「セイバー・オン!」
また片刃曲刀を作り出す。
「せやっ!」
そこにサーベルの一撃。曲刀で防ぐ。
「油断しちゃダメだよ!」
「そっちこそ」
「リードカリバー・エクステンション!」
アインハルトのサーベルが伸びて、刺突。
「破ッ!」
曲刀でサーベルを地面に叩き付け、てこのようにアインハルトが吹っ飛ぶ。
「うわっ⁉」
ゼオンは追い打ちをかけるように
「同時展開(セイバー・セット)」
片刃曲刀を両肩、両腰に一本ずつ複製する。
四本を発射し、アインハルトの気を逸らす。そして高く跳躍し、アインハルトの懐に接近する。
「これは……やばいね」
「遅い」
「〝菊斬六連〟」
手に持った剣で上段斬り、そして下段からの切り上げ。ザン、と切り裂いた音で倒れたのは先程俺が気絶させた偽騎士だった。その男は腹に二連撃を浴びたことにより絶命。
「なっ……」
おそらく地面から剣で運んだのだろう。そしてもう一本の剣にはセナ。するとアインハルトは
「ちょっと分が悪いね。細工も済んだし、撤退!」
剣を掴むと浮かび上がり、立ち去ってしまう。
「逃がすか!」
ゼオンも同じく飛び去る。
「一体何だったんだ。そうだ、巨人は!」
外を見るとまだ巨人が暴れている。俺は巨人の元に走った。
「せやっ!」
二刀流状態ではスキルが使えない。隙を見せない限り、二刀流の単純火力で討伐するしかない。
…………これが、アインハルトが言った「細工」。巨人が片刃の大剣を持ち、振り上げる。
知能のない巨人が大剣を振れるはずがない。振れるまで調教したのだろう。
「グオオオオオオ!!!」
バックステップで回避するが、風が吹き荒れる。
「こんの……セァアアアアアア!!」
十六連撃を放つが、傷は付かない。硬すぎる。ありがたいことに住人はみんな避難しているようだ。全身全霊でこいつを、倒す!
「頼む。力を貸してくれ!」
俺は二本の剣を見つめる。必ず剣は答えてくれる筈だ。
(行くぞ!)
「せ、あああああ!」
二十連撃。ライトベールも纏っていない、ただの斬撃。しかし俺の魂、いや、《俺達》の魂が乗ったその剣はあまりの速さにライトベールの残像のように光を残す。右、左、右、左、右。交互に振り、同時に振り、突き刺す。脳が焼き切れるかのように、ただ剣を振るう。
巨人の剣を弾き、回避。斬撃。
「お、おおおおおお!!!」
「グルアアアアア!」
三本の剣が衝突し、お互いに吹っ飛ぶ。俺の筋力パラメータでは本来、大剣を弾き返すことなど不可能。俺は今、限界を超えるとともに成長している。
「ガッ!」
巨人は大剣を両手で振り下ろす。
俺はゼオンの戦い方を思い出す。奴の動きを二刀流でトレースする。
「せあっ!」
バックステップで避けた後、巨人の大剣を二刀の剣で地面に叩き付ける。流石に浮き上がったりしないが、奴の体が一瞬硬直する。俺は駆け出し、大剣を走り抜ける。腕を斬り、胸を斬り、首に二刀流同時単発技とでも言うべきものを繰り出す。俺は剣が触れた瞬間に雄叫びを上げた。
「ウ、オ、オオオオオ!!」
「グガアアアアア!!!」
巨人は最後の方向を上げ、死んでいった。
「ハア、ハア……」
俺は慣れた動作で二本の剣を払い、背中の鞘に納める。周囲を見渡しても誰もいない。逃げ切ったのだろうか。カインは救助に間に合ったのか。
「……っ」
俺は《ナイトプレート》を引き抜き、走り出す。
「え?」
ドームを出て、俺を待っていたのは。
「アリス!」
「アル!探したんだよ!中で何が……」
「実は」
俺は全てを説明した。セナに呪いがかけられたこと。アインハルトと名乗る犯罪者クランのトップ。それに敵対するゼオン。その最中セナが攫われたこと。
「なんてこと……」
「会議を行う。来てくれ」
ディオンに案内されたのは元、冒険者ギルドアースリア支部。半壊状態だがまだ使えるそうだ。
「役割分担しよう。私、アリス、アルタイル君の三名で《天使》の奪還を行う。リーフィアは一番隊を率いてその援護。五番隊はアースリアの警護」
「了解!」
「分かった」
「早速動こう。そうだ。ギルドマスター。依頼主の情報を洗ってくれ」
「あー、はいはい。任せてよ。俺にはそれしかできそうにないからね」
「頼む」
「各自、配置につけ」
俺は今、《索敵》スキルを発動しセナの捜索にあたっている。
「見つけた!」
「どこだ」
「西門近くの一軒家。なんだ、こいつ……」
「どうした?」
「何かがいる……モンスターか……?」
「仕方ない、行こう」
俺、アリス、ディオンでその家に突撃する。この家では狭すぎて二刀流が使えない。片手剣も突進技が使用不可。通常技で対抗するしかない。俺達がその家に突撃すると中には椅子に縛り付けられたセナと土偶が。そして。
「《喰人》(グール)!」
「やっかいな……」
「けど、やるしかない」
「ギギギギギギ、グルァ!」
喰人とはつまり元人間。死体が動き出し人々を喰らう。特徴は意識消失と
「せあっ!」
「ふんっ!」
「ハア!」
体から生えている触手。しかも硬い。
「アリス、スイッチ!」
「了解!」
片手剣水平二連撃技、《クランタル》。奴の触手を跳ね除け、細剣四連撃技、《アンスト・シンク》。
見事に直撃。しかし、すぐに再生してしまった。これが一番の問題点だ。再生能力を上回る火力をぶつけるしかないのだが。
「ディオン、頼む!」
「任せたまえ」
ディオンが触手を防ぎ、俺は片手剣四連撃技、《エクシア》で四肢を斬り飛ばした。再生したけど。
「これではジリ貧だな……」
シュッ!という音で触手が飛んでくる。片手剣反撃技、《エンター》。
「こんの、野郎!」
片手剣水平斬り《エンタス》。片手剣刺突技、《シュート》。片手剣六連撃技、《パーティクル》。
スキルを繋げて連続攻撃。再生速度が鈍る。
「今だ!」
「セアアアアアアア!」
「破!」
片手剣上段単発技、《スラスト》。
「ハアアアアアア!」
(イメージしろ……俺が知る最強の一撃を!)
父さんが見せてくれた――擬似
「〝竜牙穿月(リュウガセンゲツ)〟!」
本来は命を削る秘剣だが、効果まで再現されている訳ではないので勿論俺は何ともない。しかし意志力とでも言うのだろうか。闘気を纏った俺の剣は加速し、家ごとグールを叩き切った。
「今のはまさか、《勇者》の……」
ディオンの呟きに気付かなかった俺は剣を鞘に戻し、家を出る。
「うわぁ……」
やっちった。家を斬っちゃった。弁償だよなぁ。土偶も一緒に斬れたみたいだけど。
「家のことは気にしなくていいよ。元々誰も住んでいなかったし、補填もギルドがやってくれるから」
「ほ、本当ですか……?」
「うん」
「よかったぁ」
事件後、犯罪者クランに依頼したのは貴族階級の婦人だということが判明。その者の判決も出され、刑務所にぶち込まれた。
しかし動機がハッキリしない。最初は『あの女が悪いんだ。あの者が戦争の引き金になる。』とか言っていたのだが、後になると『何も知らない』と本当に忘れたかのように否定しだした。
まるで、操られていたのがいきなり自由になったような……。
これはなにかの始まりなのか……それとも、もう始まっているのか……。
《勇気あるスレイブ・《黒き剣士》》
俺が街を歩いている時だった。その時、俺の身体から赤炎が溢れ出す。もちろん神威は持っていないし、金庫に入れたので誰かが抜いたというのもない。これは、何かに反応しているのか?
「やあ、ギルガメッシュ」
「は?」
長い黒髪の女性。しかし今なんと?俺がギルガメッシュだって?冗談じゃない。
「あんた誰だ」
「おや、まだ記憶が戻っていないのかい?う~ん困ったなぁ。ロゼラリアがそろそろ黙っていないと思うし。名前だけ名乗っておくよ。僕の名前は《エンキドゥ》。君のお嫁さんだ」
「はあ⁉」
「じゃあね」
そう言って彼女は姿を消した。俺の炎も静かに消える。
「何だったんだ。一体」
ピコン、ピコン、その音は冒険者カードから鳴っていた。その部分をタップすると
『今すぐ冒険者ギルドに来るように』
と表示された。内心戸惑いつつもギルドに向かう。
「アルタイルさん、こちらへ」
職員に案内され、入ったのはギルドマスターの部屋
「《黒き剣士》よ。君に強制任務が発令された」
「え?」
マスターから言われたのは意味不明の言葉だった。強制任務、つまり拒否権なし。
「一体誰から……」
「愛と平和の女神。《ロゼラリア》」
「ロゼラリア……」
あの騎士の主神。
「依頼内容は《ブリタニア王国》の救出」
「ブリタニア王国っていったら……」
「ああ、神の加護を受けず、《科学》で国防を行っている自衛国」
「そんなところで一体何を」
「ブリタニア王国は未だに奴隷制を行っている唯一の国。国防も彼らに一任されている」
「無茶なことを……」
「そしてそれを勧めている者こそが、ロゼラリアなのさ」
平和と愛の女神が奴隷制度を?――マジで?
「第一、 そんな国なら俺は何をしろって……」
「戦線に加われとのこと」
「……はあ?」
次の日俺は《アースリア》を出る。
王国北部戦線第一戦団隊長。通称、《ブレイバー》
「コードゼロワンより各機。間もなく接敵。戦闘準備」
『二番隊了解』
『三番隊了解』
『《ブレイバー》、今回の敵は?』
「大型モンスター《レッドドラゴン》」
『そうか。…総員神経接続開始』
二番隊隊長コードネーム《ブライト》。俺を含む全員が首の後ろにある装置を座席の装置に繋げる。
『神経接続完了。網膜投影開始。……完了。機体OS起動。PS -68《セルウス》。起動。』
「起動コードPZAX7」
『認証。』機械からの音声。
「王国北部戦線第一戦団隊長。コードネーム《ブレイバー》。」
『起動完了』
「エイル・ローグ、《セルウス》、出る」
王国所属人型歩行戦闘機PS-68《セルウス》。モンスターに対抗するために人間が造ったもう一つのモンスター。神経接続システムにより思った通りの動きを補助する。
しかし鉄で造られた巨人は余りにも複雑。そして脆い。速度を活かす為に削った装甲。
そこで王国の女たちは
「……ふざけるなよ」
操縦桿を握り締め、背部エンジンの出力を上げる。
「AZ-67振動長刀起動」
背部に格納された長刀を機械の腕が握る。
「……せあっ」
竜の首を斬り飛ばす。
そこには竜の首以外にも他の《セルウス》や小型機動兵器PS-67《ロディオン》の残骸が横たわっていた。俺が到着するまでに死んだ仲間の分だろう。絶命三十二。重傷六十七。
「……」
俺は王国機構大隊中佐。コードネーム《ブレイバー》。
本名、《エイル・ローグ》。そしてもう一つの異名は《死神》。
「ここが、ブリタニア王国………」
この世界の技術力は国によって大きく異なる。とはいえこの国には機械というものまであるらしい。そんなことを考えていえると、バシッと俺の背中が叩かれる。
「よ、アルタイル」
「師匠、それにアリスも」
「他にも《マティリス・クラン》の人は来てるよ」
「ようこそ。王国へってな」
師匠が笑ったその矢先。
「さっさと歩きなさい!」
まるで言うことを聞かないペットを躾けているようだが。その首輪が付いているのは――人間だ。
「あんた、何を……」
俺が止めようとした時、肩が掴まれる。
「なんで止め……」
「これがこの国のルールだ。俺達が首を突っ込むことじゃない。」
「なっ……」
「……分かってくれ」
「アル」
「ふざけるな……!それが、人が人を踏みにじっていい理由に、それを正当化していい理由には、ならないだろうが!」
「……すまない」
「………それでなんで俺がここに呼ばれたんだ」
「それはすぐ分かる」
「?」
戦争に負けたスレイブ。つまり男『黒種』(ブラック)それを虐げる女『帝王種』(ロード)
そんなことが正当化されていい理由が、あってたまるか。
「よく来たわね《黒き剣士》」
師匠に案内された王城の女王の間。そこには王座の上にもう一つの椅子……そこに座っていたのが。
「私が《ロゼラリア》よ」
「あんた、なんで俺を呼んだ」
「それはね、救ってほしいからよ。貴方も知っているでしょう?この国は神の恩恵を受けていない。だから自分達の科学力で守るしかない。そこで現れたのが貴方。恩恵を受けずに恩恵を超えた男。貴方がこの国を救う勇者になるのよ《黒き剣士》」
「いいだろう。」
「そう、よかったわ」
「ただし、俺が救うのはこの国ではなく、スレイブ達だ」
「……どういうつもりかしら?」
「どうもこうも、愛と平和の女神様が奴隷制度を推進しているって情報を聞いてな?俺は前々からこの国が嫌いだった。人間を扱う権利は、誰も持っちゃいない!」
「……残念ね」
ロゼラリアが手を振ると騎士たちが現れる。王宮のじゃない、《ロゼラリア・クラン》のだ。
「やりなさい」
騎士たちは襲い掛かってくる。
「お前らはすっこんでろ!」
俺の闘気に気圧された騎士たちはバタバタと倒れていく。
「じゃあな。支配と差別の女神さんよ」
そう言って窓から飛び降りる。体術スキルで受け身を取り、ダメージはない。
「……」
先に調べておいて正解だったな。俺が行くべき場所は。
(最前線、北部!)
「……《ソニックアクセル》!」
身体の最高速度を引き出す。
走ったその先にあったのは。
「なんだこれ、扉?」
首都から約三時間。高さ数十Ⅿの、鋼鉄の。
「でかすぎんだろ」
その時スピーカーから
『こちら、北部戦線第一戦団。貴官の所属を名乗れ。』
「こちら冒険者ギルドアースリア支部所属第一級冒険者。アルタイル・アリエル…………
貴官達を救出に参上した。」
『この基地には軍人以外の者は侵入出来ない。それに、本当に僕達を助けてくれるの?』
最後の声は震えていた。恐怖に怯える子供の声。
「ああ、任せろ。」
『この扉は厚さ五Ⅿあるんだよ。壊せるわけがない』
「修行の成果を見せてやるさ」
俺の最近の特訓は神威を抜かずに炎を扱う練習。あの時、豚を倒した時のイメージを。
「フーッ…………」
腰を落とし、どっしりと構え、そして武術の〝掌〟の構えを取る。炎を掌に集めて。
「〝炎掌〟‼」
そこから炎を一点解放。
「ハアアアアアア!」
扉を吹き飛ばす。地面ごと抉り飛ばし跡形もなくなる。
「これでいいだろ?」
『……ありがとう。冒険者』
「……ああ」
中に入るとみんなから剣に興味を持たれた。この国の剣といえばロボットの大剣のみ。人が持つ剣など昔のものになっているらしい。しかも、その大剣を振るうのは大隊長ただ一人という。
「俺は二番隊隊長、レングだ」
「おーい。カイ、エイルを呼んでくれ!」
「はいはーい」
「……」
しばらくすると無表情な少年がやってきた。
「こいつが俺達の大隊長、エイルだ」
「……よろしく」
「ああ」
「ごめんねー無愛想でしょ」
「あはは……」
「本題に入りたい」
エイルと呼ばれた少年は話を切り出す。
「本当に俺達を助けるつもりか?」
「ああ、そうだ」
「…………なら、俺達も動き出すか」
「……?」
「俺達も一週間後に革命を起こすつもりだったのさ」
レングが笑いながら話す。
「あの悪女共の顔面に一発ぶち込まないと気が済まないからな!」
レングの声に周りの少年達もそれに頷く。
「それなら話は早い」
「俺達の戦力は大型が百六○機、小型が八十八機。……そして」
『儂達だ』
半透明の男たちが音もなく現れる。
「あんたたちは……?」
「この人たちは僕たちの先祖。死んだ黒種の人達の魂だよ」
「死んだ……魂……」
「そう、そして俺達黒種には能力がある。……死者を身に宿しそれをトレースする能力〝英霊憑依〟」
「凄い能力だな……」
「神の加護がない俺達の力だ」
「……俺と同じか」
「え?」
「俺にも加護はないんだ」
「それであの力を……⁉」
「どうして俺にこんな力が宿ったのかは分からない。それに俺は二年前、刀を引き抜くまで自分のステータスすら見ようとしてなかった。冒険者になってステータスを見れるようになってもそれを人に見せようとは思えない。ただ、俺は俺だ。神の加護を受けない純粋な俺の力。それはあの女神がいうように、君達への希望になるのかな?」
「……ああ、お前は俺達の希望だ」
「そうだぞ。」
「一緒にあいつらを叩く」
「おう!」
首都からここまで約三時間。この基地から戦士が飛び出す。
「行くぞおおおおおおお!」
俺たちが向かったのは王城の裏側。城壁の警備が最も薄い場所。警備しているのは《ロゼラリア・クラン》と警備兵のみ。この大扉を破壊するのは俺の仕事だ。
「炎術〝炎波〟!」
両手から溢れ出る炎が扉を溶かす。そしてそれを合図に全方位から侵入する。
「一番隊、出る。」
『了解!』
『野郎共!終わらせるぞ!』
『押忍!』
「ああ、決着をつけよう」
これが俺達の革命となる。そしてこれは、神破りとなる。
ガシュン、大きな足音と駆動音。これは俺たちのものでは無い。
「あれは……」
王国の首都防衛兵器。それは《セルウス》によく似た二足歩行の機体。
それは味方などではない。……敵だ。機関銃を互いに向け乱射する。
『俺が先陣を切る』
そう言ってエイルの《セルウス》が敵に向かう。振動ロングソードを手に。
『道を開けろ!』
俺は兵器相手に戦うことがないので全て任せてしまっている。
「……大丈夫か?」
『問題ない。燃料も弾薬も残っている。……気付いたか?』
「ああ、死体も確認した。黒種じゃない。帝王種……女だ」
『奴らが前線に出てくるとはな……てっきり男を乗せると思っていたが。』
『同感だな』
『ああ』
『だけど、遠慮なくやれるってことだろ?』
その一言にパイロット達はニッ、と笑い、操縦桿を強く握る。
「……来たぞ。」
騎士。ここは俺の戦場だ。
「……せあっ」
片手剣重突進技、《ストライカー》。複数人の騎士を吹き飛ばして、次の構え。
片手剣六連撃技、《パーティクル》。
範囲内の敵を薙ぎ払う高位剣技だ。そして俺達が向かうのは勿論、王城。
「待て!」
その声は木霊する。それは、一人の女性騎士だった。
「私たちがここを守る!」
騎士から闘気が噴き出す。そのオーラは徐々に形を作っていく――闘気の巨人。
『こいつは俺がやる』
「エイル……」
『任せたぞ、大隊長。』
『任せろ』
俺達は先に向かう。
『さあ、やろうか』
「目覚めろ!闘気の騎士(オーラ・ガーディアン)!」
『《セルウス》!』
互いに巨大な剣を構え、走り出す。
『〝英霊憑依〟!〝魂〟(ソウル)〝融合〟(オン)!』
〝アーサー・ペンドラゴン〟
「愛する女神よ!我に力を!」
『セアッ!』
「ハアアアアアア!」
鍔迫り合いにもつれ込んだ。互いに一歩も譲れないこの戦い。
「女神に、勝利を……!」
『俺達だって……ここで負けられないんだ!』
幼い頃。俺の目の前で母が父を射殺した。それは子供だった俺に深い傷を負わせた。心の傷。
何故母は引き金を引いたのか。それは簡単だ。その頃女が革命を起こしたから。それを引き起こしたのが……。
『ロゼラリア……あいつは……殺す……!』
「させるかぁああ!」
英霊の動きをトレース。王の剣術。それに対し騎士はスキルを発動させ、向かってくる。
「〝光の大剣〟!」
騎士の剣を打ち破り剣士を追いかける。
「ウソだろ……」
その頃俺達の前には……。
「上位竜だ……!」
先日エイルが討伐したのは中位竜のレッドドラゴン。こいつは炎属性の《ファイアドラゴン》。
「なんでこいつが……いや、ロゼラリアが呼び寄せたのか……」
『なんにしてもやるしかない!』
『止まるなよ!』
戦闘機のコックピットにあるパネルを操作する。
『神経接続システム最大感度。シンクロ率百パーセント。最大稼働状態!』
『全員……進撃!』
《セルウス》の全身から蒸気が溢れ、赤く光る。更に英霊憑依も乗せた。
『人機一体!』
ドラゴンに向けてサブマシンガンやライフルが掃射される。弾幕によりドラゴンは動けず徐々に削れていく。
「後は俺に任せろ……行くぞ神威、ベールリオン!」
『明日へ導く小鬼斬り。子供斬りて明日を導く』
神威を炎で覆い、大きな刀を創る。戦闘機のイメージを基に右腕に機械的なアーマーが装着され、それで太刀を握る。左手にベールリオンを。これが神威とベールリオンの一段階目の解放。
「〝解放宣言〟《小鬼殺ノ太刀(ゴブリンスレイヤー)》!」
「行くぞ……《炎竜突撃(ドラグフレイム・ストライカー)》!」
竜の形をした炎を身に纏い竜に突撃する。俺の刃はドラゴンの心臓に深く突き刺さる。
「トレース…〝陽炎〟!」
竜の内側から炎が溢れ出て、その身体を吹き飛ばす。
「先を急ぐぞ」
『おう…』
これは革命の進撃となる。この先、地獄が待っているとしても。俺は進み続ける。
「…あんたは」
俺達の前に現れた騎士。俺はそいつを知っていた。
ロゼラリアが俺を呼ぶために寄こした騎士、クラデオル。
「私が相手だ」
「みんな、先に行ってくれ」
一番隊のみんなは城に向かう。
「よう、久しぶりだな。騎士様」
「あの時は世話になったな。《黒き剣士》」
俺達は互いに太刀と両手剣を向けあう。
「《竜牙突撃》!」
「女神よ我に力を………《神捧刺剣(ゴッドスプラッシュ)》!」
刺突と斬撃はぶつかり合い、互いに後ろに吹き飛ぶ。
「〝飛剣〟!」
炎の斬撃を飛ばす。そして機械の腕に炎を集中。その炎は小さい爆発を生む。
「〝爆炎斬〟!」
腕から出た爆発の直後、太刀で切りつける。
「《小鬼殺ノ太刀》、真の力を見せろ!」
太刀と腕から溢れ出るのは闘気。刃を闘気の波が覆う。
「〝飛天・残影〟!〝十文字斬り〟!」
十文字の光の軌跡。それが騎士の剣と衝突。
「女神に勝利を、我に勝利を与えたまえ!」
そう言って騎士の剣から闘気が溢れ出る。それは加護の力を最大限に発動させた。
「《女神の制裁》!」
闘気の斬撃をサイドステップで躱すが地面が大きく抉れる。前に戦った時にはここまでの力は無かったはず。いや、こいつはあの時闘気を使っていない。俺達はスキル同士で決着を付けた。けれどこいつの本来の戦い方は、剣術士。闘気を使った戦闘法。
これが奴の本当の強さ!
「すまなかったな。あの時は闘気を使わなかった……剣士として詫びよう」
「いや、いいさ。だけど今、決着を付けようぜ」
「……いいだろう。闘気全解放!」
「トレース……アリス!」
俺が新たに学んだのは今まで出会った人の戦い方。それを自身の身体でトレースする。この国の言い方で名付けるなら、
「〝英雄憑依〟!モデル・アリス!」
「《ロゼラリア・クラン》の騎士よ!私に力を託してくれ!」
「アリス、借りるぞ――――〝リ・ストライカー〟!」
「―――《神裁一閃(マイロード・オブ・ゴッド)》!」
神速の攻撃の衝突。太刀と両手剣が限界まで速く動き出す。
「モデル・カイン!〝飛天残影〟!」
空間を抉りそれを太刀に纏わせる。
「〝飛天纏い〟〝次元斬り〟!」
残した斬撃を飛ぶ斬撃で押し出す。
「〝飛天十裂衝〟!」
「《光裁神剣(イクススラッシュ)》!」
「ハアアアアアア!」
「セアアアアアア!」
光と光のぶつかり合い。鍔迫り合いに持ち込む。
「そろそろ終わらせようか……!」
「いいだろう……」
俺はとある疑問をぶつける。
「あんたは何故あの女神に従う!」
「……難しい事を……私はあの方に救われた。だから従う。いや、私も本心では抗っているのかもしれないな。私は神を守る騎士として戦う。――――騎士は民を守るものだろうに……」
最後に奴が言った言葉は確かに俺の耳に届いた。
「……迷いは捨てねば……」
「……行くぞ」
「来い!」
「《小鬼殺ノ太刀(ゴブリンスレイヤー)》……」
「《光神軌跡(マイロード・シャイニング)》!」
斬撃が触れ合った瞬間。叫ぶ。
「――――〝絶撃〟(ブレイク)!」
騎士の剣を叩き折り、俺は腰の鞘に刀を納める。
「あんたの負けだ。クラデオル」
「……騎士として負けを認めよう。こんな事を言える立場ではないことは分かっている………しかし一つ。一つだけ頼みを聞いてくれないだろうか…………」
一呼吸。
「あの方を、救ってやってくれ…………!」
「…………分かった」
ガチャン、と神威から音が鳴る。そしてあの時と同じように頭の中にイメージが……。
(‥‥これは俺の力…………英雄の炎よ、力強く‥‥燃え上れ!)
「炎よ、俺の…スレイブ達の翼となれ! …………〝自由の翼〟!」
俺の背に炎の翼が現れる。その翼は羽ばたき、俺は空を飛ぶ。
空を飛び全速力で城に向かう。しかし俺を待っていたのは。
「なんだよ、これ……」
「お、やっと来たな。アルタイル」
「アル、遅かったね。」
「二人共、何やって………」
「何って奴隷達の制圧さ。ロゼラリアが出した依頼でな」
「アルは違うの?」
「俺は……奴隷を解放する為に戦っている」
「なんだって…」
「アル、正気⁉」
「正気さ、俺達は、自由だ!」
そう言って俺の翼は現れ、一瞬で消える。
「お前、今の翼は…!」
「そこをどいてくれ」
「俺達だって冒険者だ。」
「うん」
アリスと師匠は剣を構え、俺と相対する。
「二人が相手だと手加減できないぞ…!」
「手加減?いつの間にお前がそう言えるようになった!アルタイル!」
「……ッ」
(英雄の炎、全解放……)
『龍を斬りて夜明けなり。竜を殺して革命なり。――――未来に導く死神葬』
「〝解放宣言〟《竜殺ノ剣(ドラゴンスレイヤー)》」
先程よりも大きなアーマーで両腕を覆い、そのままの大きさの神威とベールリオンを握る。
「アリス、アルタイルを止めるぞ」
「分かった」
『危機迎えて好機となる。薙ぎ払われし草原。時打ちの刃』
『思い人目指して星となる。星を目指し共に生きることあり。あの人が歩いた道』
「「〝解放宣言〟!」」
「《草薙の剣》!」
「《星歩軌跡(スターロード)》」
師匠の解放術は剣の周りに木の葉が飛んでいる。そしてアリスの剣は闘気の光が羽根の形で刀身を覆っている。
「…行くぞ」
「流水剣。剛ノ剣、〝流牙閃〟!」
闘気を使った突進技。
「〝星撃(スター・ショット)〟!」
アリスは刺突の風圧を飛ばしてくる。不可視の攻撃。
「〝飛天〟〝残影〟!」
斬撃と刺突を防ぎ、その空間を。
「〝次元〟〝十文字斬り〟!」
「〝飛天纏い〟!」
俺の周囲には闘気と暴風が吹き荒れる。そしてそれは紫電を生み、神威に集中する。
「《竜牙衝撃(ドラグブレイカー)》!」
竜の形になったそれは剣の先にいる二人を襲う。
「流水剣・柔ノ剣〝河川敷〟!」
師匠がそれを受け流す。しかし竜は街の建物を噛み砕き、破壊する。
「なんて威力…」
「こっちも加減できないな……」
「真相解放全開〝星砕きの流星群・王(スターロード・レクス)〟!」
「流水剣第六秘剣…………〝天叢雲剣〟!」
二つの強大な力が俺に向かっている。しかし俺自身は何もしない。この先に起きることを仕組んでおいたから。
〝全防御(フルガード)〟
あらかじめに設定しておいた行動に対して炎が自動的に身体から溢れ出て二人を迎撃する。これが俺の炎と《反撃》を合わせた防衛手段。
「炎………⁉」
「貫けない…!」
その時、一発の弾丸が俺達の間に当たる。
『どういう状況だこれは』
「エイル!」
『あいつらは敵なのか?』
「いやちょっと違う。みんなは生きている。彼らの目的はあくまで無力化だ」
『加減できる相手か?』
「できないな」
『了解。〝英霊武装〟振動ブレード・融合(オン)!〝エクスカリバー・進〟!』
「いくぞ!」
エイルの機体はブースターを限界まで稼働させて最高速度を生む。
「連携!」
『任せろ』
「「〝双王の太刀〟!」」
そして俺はすかさず両掌に炎を集中。
「〝双炎〟!」
〝炎掌〟のざっと倍の威力だ。
しかし二人はこれで倒れるような人達じゃない。一対一の方が良かったな。
「アルタイル、一つ聞いていいか……?」
「なんですか?」
「お前はなぜ、《勇者》の剣技を使っている……?」
「…?」
「お前の使う《竜技》…ドラグシリーズ……誰に習った…?」
「祖父と父の剣術ですけど……」
「その二人の名前は!」
「二人の旧姓は………《シリウス・コスモスター》と《シン・コスモスター》」
「…ハハッ、なるほどな。お前の強さも納得がいく……」
「アース、どういうこと?」
「アルタイルの親たちの正体は、《勇者》だ。」
「⁉」
(爺ちゃんと父さんが、《勇者》⁉)
「そういうことなら色々説明がつく。世界で一人のはずの《勇者》の剣技をなぜ扱えるのか。親から受け継いだものだったんだな。」
勇者はこの時代にもう存在している。勇者の証である《力》。継承したものだったのか。
「お前の父は竜技の中でも刺突系を得意としていた。それはお前もそうじゃないか?」
確かに俺は《竜牙突撃》を最も得意としている。扱いやすく、隙も少ない。
お父さんが見せてくれた技の大体が刺突系だったな。
「まったく、あいつらしいな…」
「師匠、父さんのこと知って……」
「俺は二代目勇者パーティーの剣士、アタッカーだったんだ。」
「父さんの仲間……」
「勇者パーティーの底力、見せてやる!」
「なら……」
俺は真相解放を解除。二本を直してナイトプレートを引き抜き。ローブの中からとある物を取り出す。
「それは……魔石?」
「ああ、さっき倒したファイアドラゴンの魔石だ」
「それで何する気だ?」
「お楽しみってことで」
「なら、こっちも刺突系で決めるか」
「へえ、《勇者》の一撃を超えると?」
「お前は《勇者》じゃないだろ?」
「じゃあ…………行きます!」
「〝流水剣〟!」
草薙の剣を覆う木の葉が刃に宿り、刃が緑色に輝く。
「第一秘剣!〝布都御魂剣〟!」
突進刺突技。しかも闘気を足から噴射して推進力を得ているのか……。この国の戦闘機と同じ考え方だな。
対する俺は手のひらサイズの魔石を空中に放り投げる。そしてそれを。
「〝人魔剣〟〝竜技〟《竜牙突撃(ドラグストライカー)》!」
ナイトプレートで魔石を突いて押し出す。加速した魔石は師匠めがけて飛んでいく。
そして魔石の周りに闘気と魔力が螺旋を描き竜の形を形成する。それに魔石が反応して更に力を増す。この技は普通のとは違う。いつものは発動速度を重視しているのに対して、今回の技は威力重視。それを竜の魔石でブースト。
「くっ、なんだこの重さはっ……!」
師匠との技と俺の技がぶつかり合う。
「吹っ飛べ……!」
俺の言葉に呼応するかのように竜の力は増し、師匠の剣に喰らいつく。
師匠が大きく後ろに飛ぶ。しかし師匠は上手く身体を捻り衝撃を最小限に抑える。竜は地面を
抉り、城の一部を砕く。
「ハア……ハア……凄まじいな、アルタイル……」
「……まだ奥義が残ってますよね」
「チッ……、見せたのは失敗だったか」
「もう発動条件は揃ってるはずですけど」
「……やる気なのか?」
「俺は本気です」
「……やめとくよ」
「……?」
「俺も奴隷制には嫌悪感を持っているが……必要悪だと思っている」
『……』
《セルウス》の足から駆動音が聞こえる。
「やめろエイル。必要悪だといいましたね。……そんなこと言ってるから魔王なんて生まれたんだろうが…………」
「……ッ………」
魔王――人間がモンスターに進化した存在。魔物を操る力を持ち、勇者と同等の力を持つ存在。人間が大きすぎる負の感情を背負った時、稀に覚醒する。
魔王が生まれた理由……それこそ、元奴隷の覚醒。とある国で虐げられていた部族の青年が、最愛の人を目の前で殺されたことをキッカケに魔王として覚醒した。そして二代目、それは半魔王だった。魔王になりきれず、苦悩のまま戦った。
ようやくわかった。俺が奴隷制度を嫌っていた理由。性格的な話だけではなく、親の記憶を心の奥底で知っていたから……?
「……分かったよ。降参だ」
「アース、いいの?」
「これ以上やったらどっちか死ななければいけないからな。……それは嫌だろ?主にアルタイルに対して」
「うん……やだ」
『話は纏まったか?』
「おうよ!」
『よかった』
「ところでアル、その人?は……」
「ああ、紹介するよ。大隊長のエイルだ」
「どうも」
「こちらこそ」
「すまなかったな。君の仲間を傷つけて」
「いや、気絶に抑えてくれたんだ。それに、そちらの事情も理解しているつもりだ」
コックピットを開けて話すエイル。
「俺達も協力するよ」
「うん」
「いいのか?依頼が……」
「依頼以前の問題だ。解放しようぜ!」
「師匠……」
「私も頑張る」
「アリス……」
『おいおい、俺達も忘れてもらっちゃ困るねえ』
そこには起き上がった一番隊。二番隊、三番隊も……。
「みんな行こう!」
城には誰もいない。――人間は。
「来たわね。反逆者」
「ああ、来たぜ……女神!」
俺はナイトプレートを背中から引き抜き、
「神に勝てると思っているのかしら?」
「思ってるさ……エイル!」
「ハアッ!」
エイルは機体から降りてベールリオンを手に殺意を込める。
「〝王の剣〟!」
これも防がれる。
「エイル!受け取れ!」
「こっちも!」
俺は神威を投げてエイルはベールリオンを投げる。
そして俺は炎を発動。神威と俺の身体に同時に炎が宿る。
「「〝双炎〟!」」
二刀流の炎、そして刀の炎。二つの炎の力。
「「ハアアアアアア!」」
光の壁を打ち破る。理不尽は……俺達の剣が砕く!
(カイン、力貸せ!)
「〝陽炎〟!」
三点から炎を解放する。
「吹っ飛べえええええ!」
炎でロゼラリアが後ろに飛ぶ。
「こんなものかしら?」
(傷一つないのかよ!)
「………んな訳ねえだろ!」
神威を俺に、ベールリオンをエイルに。
「神威!〝炎我突撃(フレイムストライカー)〟!」
炎の渦を身に纏い突進する《竜牙突撃》の炎版。それを攻撃の瞬間に剣先に集中。
「せあっ!」
〝我突六連〟
超高速の連撃。しかしこれでも奴は無傷。
「無駄よ」
女神が手を振ると突風が巻き起こり、王の間は吹き飛ぶ。そして俺達も外に飛ばされる。
「ぐっ……」
「まだだ。お前だけは、絶対に……許さない!」
エイルの気迫が強くなる。
「アーサー!感度上げろ!」
『よかろう』
「うおおおおおおお‼」
融合深度百%!英霊覚醒!
『エイル。命を賭ける覚悟はあるか?』
「当たり前の事を聞くな……」
『……分かった。では仲間を呼ぶとしよう。』
「仲間?」
『儂の生前の配下だ。しかし天にいる魂を呼び寄せるためかなり負担が掛かるぞ?』
「構わない、やってくれ。」
『了解した。……我に忠誠を誓う者よ。我の呼びかけに応え、天の壁を打ち破れ。魂の限界を超えて我の前に現れよ!配下召喚!』
それは過去、女神に抗った『円卓の騎士』アルタイル・アリエルと同じ様に加護を持たずに加護を超えた者達。その中には女もいた。
〝賢者〟マーリン。〝王妃〟ジェニファー。〝王の右腕〟ランスロット。〝太陽の騎士〟ガウェイン。〝隠し子〟モルドレッド。〝悪の姉〟モルゴース。〝弓聖〟トリスタン。
〝聖杯の導き〟パーシヴァル。
他にもいるはずだが、これが限界か。
『我が配下よ。力を貸してくれ』
『喜んで!』
『十年前のお返しだ!』
マーリンは無詠唱でいくつもの火球を生み出してそれを放つ。
『僕も行くよ!』
パーシヴァルの槍。
『父上と我が弟に、この一撃を捧げます!〝エクスカリバー〟……〝ルプス〟!』
聖剣の継承。
『王の剣!これが我が魂!〝アロンダイト〟!』
守護騎士の一撃。
『私の夫に何してんのよ!あんた!〝乙女の戒撃〟!』
王の妻の鉄拳。
『我が妹の罪〝悔花〟』
戒めの姉。
『太陽の願いを王に!サンブレイク!』
太陽の騎士の願い。
『王よ!私達が道を開きます!その隙に!』
『トリスタン……』
『フェイルノート・カーテナ!』
剣を矢として放つ。その剣に配下の技が収束し一つとなる。
『王のために!我らが残せる最後の力!』
「『〝貴方に出会えた運命に感謝を〟(キャメロット・デスティニー)!』」
魂の最後を全てぶつける。人間の魂が最も美しくなる時、魂の消失。
『お前たち、まさか……』
『ええ、王よ。私達はこれで終わりです。最後にまた会えて良かった』
彼らは手を振り、光がエイルに当たる。
「『今までありがとうございました!』」
「アーサー……」
『あの馬鹿どもめ、負ける訳にはいかなくなったではないか……』
その目には確かに涙が浮かぶ。
『エイル!やるぞ』
「ああ」
ベールリオンにアーサーを宿らせる。
『くっ……こんなに頑固な武器があるのか。硬すぎる……。』
「負けるな!俺がいる!」
「『はあああああ!』」
「『エクスカリバー・ルプスレクス!』」
〝狼王の聖剣〟
「ロゼラリアああああああ!」
これでも神は殺せない。なら。
「今だ……みんな!」
『了解!』
『総員掃射!』
「アリス、やるぞ!」
「わかった!」
〝流星群の極地〟(スターロード・エクス)
「第六秘剣・最……〝草原真天叢雲剣(ソウゲンマコト・アマノムラクモノツルギ)〟!」
その中でも大きすぎる光を放つもの。
「
魔と気の究極。かつて英雄王が最高神を倒すために使ったとされる奥義。
「あははは!私は神よ!」
『あれは女神などではない! あれは、化け物だ……!』
アーサーの評価は正しい。昔の民が信じた神とはあんなものでは無い。人が届かない強大な力を持ちながらそれを民の為に使う者。人はそれを、神と呼ぶ。
「神は死なない!故に無駄!」
《愛の光》!
桃色のレーザーが戦士達を襲う。それは追尾性能を持ち、何体もの戦闘機が破壊される。
「殺しはしないわ。大切な戦力ですもの。」
「戦力だと……⁉」
「ええ、男が他国を支配し、それを女が支配する! それが、それこそが真理!」
「何が真理だ、神ってのはぶっ飛んだ考えしてねぇと生きてけねぇのかよ!」
「『エクスカリバー・ルプス!』」
光の狼が走り出し、女神に向かう。しかしそれはレーザーによって消滅。
(クソ……やるしかないのか!)
俺の〝炎〟の最終奥義。しかしこれはみんなを巻き込む可能性が……。
「みんな!ここを離れろ!」
しかし俺の言葉にみんな首を横に振る。
「何してんだ!早く……」
しかし、彼らは自身の武器を構える。
「みんな……」
(……奥義の前の布石を打つ!)
「……〝灯火(ヴェーロス)〟……!」
右手の人差し指と中指に炎を灯し。それを左手で引っ張ると炎は弓矢の形になる。それを放つと女神に一直線に向かう。レーザーを打ち消しながら進み続ける。
それはまた光の壁に防がれる。
「だよなぁ!」
(なら……)
俺の身体の中で闘気と魔力を練り合わせる。そしてそれをユニークスキル《英雄の炎》に流し込む。炎は体外にも溢れ出て、周りの世界を変えていく―――。
『我が魂の欠片よ。炎の形、剣の形となりて全てを薙ぎ払え。其方の魂すら焼き尽くす熱さの剣なり。剣戟のままに切り裂き、焼きつくせ。…………始まりは根源の欠片!』
〝心象転写〟
神威を地面に突き刺し、地面から炎が溢れる。そして闘気と魔力が半径一㎢の半円の形になり全てを閉じ込める。
「この炎が俺の魂だ。―――〝魂剣煉獄(アマノレンゴク)〟!」
ユニークスキルを通して世界を改変する技。〝心象転写〟。《英雄の炎》を使った領域。
「〝魂剣(ソウルソード)〟」
「〝焔戟(フレイムアーツ)〟」
無数の炎の剣が空中に現れ女神に向かう。
「なに……この力……!」
女神の壁を破り、剣は女神に注がれる。
「来い」
〝転写〟〝草薙の剣〟
師匠の剣を模倣した炎が空中に浮かぶ。それを囲うように炎が筒のようになる。
「〝放射(ファイア)〟」
炎の木の葉が中で弾け、筒から〝竜〟が飛び出す。
それを見て師匠が叫んだ。
「知ってるか、この草薙の剣はな、日ノ国の神話で竜から生まれた神殺しの異名を持つ剣だ!」
竜の炎が消えて、中の剣が見える。
「〝刺突(ブラスト)〟」
更に剣が加速する。その剣はソニックブームを生むほど速くなっていた。しかしその剣は停止。
…………沈黙。
「あぶないわね」
ロゼラリアが手で掴んでいたのだ。音速の炎を。実体のないものを掴んでいた。
「そりゃそうだよな! 神だもんなぁ!」
「⁉」
ロゼラリアの近くに人影。あれは……
「エイル……?」
彼はレーザーとは違う光の縄で縛られていた。
「何を……」
次の瞬間、ロゼラリアはエイルにキスする。
「……⁉」
「……ご馳走様」
「あがっ……」
エイルの体に何かが走る。血管一本一本まで把握できる……。
(なんだ……これは……!)
光の縄が解け、エイルの体が自由になる。しかしエイルは、ロゼラリアではなく、
――――俺達を狙った。
拳銃で建物の上から狙撃……。
「なにしてんだ!エイル!」
「………」
エイルの眼に生気はなく、殺意に満ちている。
「ロゼラリアぁああ!何をしたぁああああああ!」
「何って、私の奴隷にしてあげただけよ。……さあ、行きなさい。終わったらたっぷり可愛がってあげるからね」
「……」
ハンドガンの引き金を引き続け、俺達に死を送る。
その姿は勇者などではなく、死神のそれだった。
「エイルやめろお!」
「目を覚ませえええ‼」
レング達の声も聞こえない。
しかし一瞬、エイルの動きが硬直する。
その頃エイルの精神世界では………。
―――ここは―――暗い――。
―――誰か――。
暗い世界の中。しかし小さな亀裂。そこからこぼれ落ちる一滴の記憶。
九年前。
「お父様!」
「おお、エイルよ……」
そこにはエイルとアーサー。モルドレッド。ジェニファー。そして母、モーガン。
「よいか、エイルよ。お主はこの国の正統後継者として民を導く運命を背負っている。それを努、忘れるでないぞ」
―――アーサー―――?
次の記憶。
「逃げて……アーサー……………………!」
母がアーサーに銃を向ける。しかしアーサーは―――――
「受け止めよう」
「アーサー!」
弾丸がアーサーの心臓を貫く。これがあの記憶。
俺は―――誰だ―――俺は―――
「エイル・ローグ・ペンドラゴン……それがこの子の名前だ」
―――俺は、
――――王だ。
「う……………」
「何…………?」
エイルの体に赤黒い稲妻が走る。
「エイル!」
「戻ってこい!」
「《ブレイバー》!」
「うおおおおおおお!」
身体が動く。エイルの意思で。
赤黒い稲妻の正体はエイルの闘気。それが覚醒した英雄の血族と空間のエーテル(ブリタニアが発見したこの世界に漂う力の根源)の組み合わせにより体外で暴走していた。しかし今は自身の手足のように動かせる。
「〝根源変異〟〝怪物〟」
「俺はアーサー・ペンドラゴンの息子……エイル・ローグ・ペンドラゴン……この国の王だ!」
エイルの腰の後ろに血液が流れ込み、体外で触手の形になる。
「あれはまるで…………《喰人》……?」
「ロゼラリア……お前のおかげで俺の体の使い方がよくわかった……!」
「……………………そう」
「面白い奴隷だったのに……残念」
ロゼラリアの背後に現れた無数の光球。そしてそれから放たれる裁き。
「さようなら」
一本に集まった強力なレーザー。
それに対し、エイルは腰の四本の触手を向ける。
「ふーっ……」
アーサー………いや、父さん。力を貸してくれ。
(もう父さんはいない……。これからは、俺自身の力で!)
そう、アーサーはロゼラリアの支配により危険分子として消されてしまった。
「はあああああ‼」
触手でレーザーを受け止め、触手を消して全速力で駆け出す。
(イメージしろ!自身の肉体を変えられたんだ、世界を変えることぐらい……それに、手本ならもう見た!)
「くっ……うぉああああ!」
血液をエーテルと同化。それを形作っていく。
(俺の殺意と、恨み、憎しみ……そして、希望を形に!)
未来を切り開く、希望の光。
「奪命(ヴォーパル)!」
禍々しい片刃の短剣。この国の、復讐の結晶。そして、魔剣と聖剣の二面性を持つ。
「ウオオオオオ‼」
それを右手に、女神の懐に迫る。レーザーを叩き落とし、普段以上のスピードで駆け抜ける。それはまるで、七十六階層ボスを討伐した時の、アルタイル・アリエルのように。
「なんて速さ……」
短剣を逆手に持ち、勢いのまま突き刺す。その一撃は女神の皮膚を切り裂き、一滴の血液が地面に落ちる。
「私の体に傷を……」
レーザーを躱しながら斬り続ける。
「ハアアアアアア‼」
逆手のまま渾身の一撃を叩き込んだ。
〝奪命(ヴォーパル)〟!
その斬撃は女神の喉を掻っ切る。
女神はすぐさま再生し距離をとった。
「再生できるのかよ……!」
『エイル!お届け物だぜ!』
声の方を向くと、大型トラックがとある機体を運んできていた。
「《アウェイキング》……⁉」
『おうよ!ZXPS-X001《アウェイキングセイバー》、整備バッチリだ!』
エイルが二年前に一度だけ搭乗した機体。
エースパイロット用に開発された特別機。最強のパイロットが最強の機体に乗ることをコンセプトに開発されたため、一般兵が乗ると衝撃に耐えられず、命にかかわる危険な機体。
ブリタニア王国の《戦闘機》のシステムは、人間の脳を《演算処理装置》として扱うという非人道的なものだが、このアウェイキングの情報量は常人なら一度乗っただけで廃人になる。
しかし機体性能は機動性、防御力、火力の全てで《セルウス》を大きく上回っている。
『起動完了』
『神経接続システム《加具土命》感度良好。』
「エイル・ローグ・ペンドラゴン、《アウェイキング》、出る!」
鬼神は大きな大剣を手に駆け出す。
「《セイバー》……使ってやる……だから、女神を殺す力を寄こせ!」
エイルの神経に力が流れ込んでくる。そしてエイル自身の力が、内側から弾けた。
エイルの瞳が青く発光する。
「俺も行くぞ!」
俺もナイトプレートと神威を握って近くに寄る。
俺達は同時に走り出し、女神を追いかける。
「はあああああ!」
二刀流――――――――、
「《双竜牙突撃》(ダブルドラグストライカー)!」
両手の剣で突進技を放つ。
炎術〝炎雷ノ刃〟
神威を炎で覆い、強化する。
『うおおおおお!!』
鬼神が太刀を振り下ろす。それらが同時に炸裂し、確かなダメージを与えた。
「合わせろ!」
〝炎術〟
〝雷術〟
〝炎雷〟(ファイア)!
英雄の炎と英雄の雷が融合し、膨大な力を生む。
エイルは機体に雷を纏わせ、磁力などで動きを速くする。
「とっておきも使ってやるよ!」
〝エクシードチャージ〟
ライトベールが強く輝き、倍速で攻撃が始まる。
「せあっ!」
一撃一撃が女神に食い込む。
『……エクストラバースト!』
赤い光が機体から漏れ出る。《アウェイキングセイバー》の最大稼働状態。動力源の内部機関
から《エーテル》を最大放出。
「吹っ飛べえええええ!」
「クソ女神!」
「〝奪命〟!」
〝エクシードチャージ〟
片手剣突進刺突技、《ヴォーパル・ブレイク》
スキルを二回分発動する技〝エクシードチャージ〟偶然見つけた秘技。
「〝ファイアブレイズ〟!」
数多の炎の剣が女神に殺到する――。
「もうそれには飽きたわよ」
一瞬でかき消された。
「チッ!」
投げナイフを投げながら距離を取る。
「エイル、機体はあと何分持つ!」
『あと三十分!』
「オーケー!」
(けどどうする――。このままじゃ――)
『変われ』
「⁉」
――意識が――遠く――。
「―――アルタイル?」
「ここまでの戦、大儀であった」
「え?」
「我が必ず大きなダメージを与える。その間にこやつと貴様で奴を仕留めろ。」
「アルタイル、何言って――」
その時、アルタイルの髪が黄金になり、眼が赤く輝いた。
「――ギルガメッシュ」
「エンキドゥ。いるか?」
「いるよ」
あの時の、黒髪の女性――。
「力を貸せ」
「喜んで」
『君が全を選ぶなら、俺は全を捨てよう。一を守るために。その一が君ではなく、世界の破滅だとしても、俺はこの手でやれることをしよう。全を助けることなど、出来ないことは解っている。ただ俺は君ではないかもしれない誰かを守る。君に否定されても、この世界に否定されようとも、全てに否定されても。弱者が覚悟を決めたのだ、強者に敗れる筋合いは無い。俺という剣が折れようとも、この世界には剣が満ちている。剣を学び、人生を学んだ。それでも俺は弱い、生命を断ち、剣を握って進むのがいつかは解らない。ただし俺という一はこの世界の全を借り受ける。それが弱者の戦いだと信じて、進み続ける。〝ソード・オア・ザ・ソウル〟そこにあるのは、剣か魂か!』
〝心象転写〟
〝ソード・オア・ザ・ソウル〟
アルタイルの領域が消え去り、新たな領域が広がった。暗い夜に黄金の光が散る。
「「ファースト・レディ」」
「〝黄金剣〟」
「〝天鎖運命(テンメイヲシバルクサリ)〟」
「「ファイア」」
黄金の大剣と数多の鎖が女神に向かった。それは女神を拘束し、剣が腹を貫いた。
「がはっ……くっ――ハアアアアアア!」
女神は身体を変えて、醜い姿へと変身した。
「女神などではなく、ただの怪物だな」
「「セカンド・レディ」」
「「エア・マキシマ」」
「「〝ワールド・オブ・ザ・ブレイク〟」」
「「ファイア」」
女神はボロボロの姿へと――。
「女神は――死なない――!」
「試してみるか?」
そう言ってギルガメシュは両手に剣を持つ。
二刀流最上位剣技、《ザ・プロメテウス》――二十五連撃。世界最強の必殺技。
「《二刀流》は王の証。両の手で数多の武器を操る〝才能〟だ。」
「このっ――」
女神が避けられない程の斬撃を叩き込み続ける。エイルの眼には残像が見えたほど。
速すぎる――。
「〝百花繚乱〟!」
スキルが終わった後でも、硬直もなしに動き続けている。
「〝ブーストアクセル〟〝ソニックアクセル〟――武技〝奈落〟!」
女神が隙を見て放った光球も突如現れた円盾で防ぎ、剣で追い打ちをかける。
「何なの、剣が消えたり、盾が出たり――!」
「王は全てを統べる者なり――」
「死ね死ね死ねええええええっ‼」
怪物から放たれる光線を弾き、炎の斬撃を放つ。
「この身体は面白い事を考えるな……使わせてもらうぞ。〝英雄憑依〟ギルガメッシュ!」
剣が加速し、空間を熱する。星屑のように輝き、切り裂くものは進む。
「おお、動きやすい! まさか我自身を模倣することになろうとはな!」
「武技〝双撃〟‼」
同時に上段から振り下ろし――、
「神威よ、しばらくぶりだな。」
刀を手に、抜刀術の構えを取る。
「かつて、人間の剣聖がつくった最速の剣術……それが、鞘の中で刃を加速させる刀の奥義、〝抜刀術〟そしてその中でも古代、世界に認められた技……見せてやろう」
――銀河天文流――。
怪物の光線が迫ってくる――。
「……………………セアッッ!」
〝奥義〟
爆音。ソニックブームを引きながら王の刃は怪物に接近する。
「グッ……」
怪物によって刃が止まる――が。
「ハ、ァァアアアアアア‼」
刃が止まっても、進み続ける。それにより、刃が喰い込む。
――――止まるな――――
「うおおおおおおッ‼」
そのまま、怪物の首を斬り飛ばした。神速を超えた一閃。
〝王牙天翔〟
「ガハッ……………」
「トドメは刺さん。それはこやつの役目だ。だが、トドメを刺せるぐらいには弱らせておく」
「嫌………嫌!」
女神に戻った女を見下ろしながら、亜空間から一本の剣を取り出す。
「これはあらゆる種族の英知と技術が集まって出来た始まりの剣だ。―――――〝解放宣言〟」
《オリジン・オブ・ソード》
始まりの剣は、全てを斬れるほど大きくなった。そしてそれを天に向け――――――
〝気〟を宿した超巨大な斬撃を放つ。
「星を両断する聖剣、〝神を絶つは我が命の閃き〟(ゴッドエンド・ジ・アース)!」
世界を断つ、王の斬撃。それは、偽女の身体を切り裂いた。
「……………………今だ」光を天空に放つ。
「合図!」
アースは王の合図を見て、〝草薙の剣〟を地面に突き刺す――。
「〝解〟!」
〝草薙の剣〟の能力――それは、あらかじめ叩き込んでおいた攻撃を、好きなタイミングで炸裂させる――。アースは機体の弾丸や、アルタイル達の剣に闘気を仕込んでいた。
今までの攻撃を同時に炸裂――。
「ブッ飛べぇえええ‼」
そしてそれを皮切りに、皆が攻撃を打ち込む。
「〝星砕きの流星群〟・〝超新星(ノヴァ)〟!」
『総員掃射!』
「流水剣第三秘剣・抜刀術――」
鞘の中で闘気を加速させる――。
「〝修羅・抜刀〟!」
練り上げられた闘気が放たれる。全てが混ざり合い、女を襲う――。
「キャあああああああ⁉」
「後は貴様だ。我が未来よ」
俺は、過去の記憶を見ていた。祖父の言葉を。
―――泣いてもいい。負けてもいい。ただ立ち止まるな。明日たくさん笑えるように、何度でも立ち上がれ!進み続けろ、魂が燃え尽きるその時まで――
父の言葉を。
―――誰かのために戦えるようになれ、友も仲間も、必ず共に進んでくれる……。そして知らない人でも、困っている人がいたら迷わず助けるんだ。そうすればいつか、困ったときに助けてもらえるはずだ。皆がお前を助けたいと思えるように――
母の言葉を。
―――弱くても諦めたらいけないの。諦めずに生きていたら死なない限り挑める。何度も何度も。ただ、がむしゃらに挑んでみて、そうすればこの世界に『有り得ない』を起こせるの――。
―――進んだ者を、
―――そう思わせられる者を、
―――『有り得ない』を現実に出来た人を、人は―――
―――英雄と呼ぶ。
「……………………!」
目を閉じ、もう一度開いたとき、髪は黒く、眼は蒼に染まる――。
「銀河天文流――。〝龍撃閃〟!」
刀の四連撃。そして
「〝重撃〟!」
闘気を使った格闘術。その基本技。踏み込みの力を拳に直接伝え、そこに闘気を乗せる。
拳が触れた瞬間、そこから放出する闘気。そしてそこに炎を上乗せした――。
「〝重撃・改〟!」
心臓に打ち込んだ一撃。後ろに飛んだ女に追い打ちをかける。
神威を地面に突き刺してベールリオン、ナイトプレートを手に取る。
「終わりだあああああ‼」
「こっちも忘れるなよ!」
巨大な大剣の殺神剣。
「〝奪命(ヴォーパル)〟‼」
心臓を穿つ刺突。
(何故だろう、今、身体の使い方が分かった)
「………ぁぁぁあああああああっ‼」
二刀流上位剣技、《スターマーク・リオネル》。連続十四回攻撃――。
流れ星のような軌跡を描き、幾重もの斬撃を重ねる。
左右の剣を神速で振るい、女神を刻む。その時、女の記憶が流れ込んできた。
昔、この国が戦争に巻き込まれたとき、多くの女性が旅立つ男性に言った言葉――。
『あなたは私のものなんだから、死んだら許さないから。生きて帰ってきて、私の為に生きて』
そしてその後、夫、弟、兄、彼氏の死を聞いた時の悲しみが、『愛』と『戦争』の女神に降り注いだ。それが、暴走の原因である。
「悲しかったな…………今、楽にしてやる…………ぁぁああああああ‼」
十三連撃目の左刺突。心臓を貫いた。
「まだ、まだ終われないのよ……!」
「⁉」
女神から光が漏れ出て、それが空に浮かぶ。それは巨大な球体へと姿を変えた。
「全て、終わりなさい……!」
「……………………ッ」
「させるかああああああ‼」
飛び出したのは、《セイバー》。球体の中心にいる女に迫る。
「エイル!」
「この国を、俺達の家族を…………これ以上、壊すんじゃねえ!」
「奴隷如きがっ……!」
「俺もいるんだよ!」
《双竜牙突撃(ダブルドラグストライカー)》!
両手の剣で放つ最強の突進技。そして二刀流上位剣技、《ナイン・ストライク》。十一連撃の後、
「スターマーク………リオネル!」
今出せる最強の技。最上位剣技程ではないが、追尾性能が高い必殺。
《二刀流》。以前ステータスプレートに現れた文字化けしたスキル。二か月前、いきなりその文字が《二刀流》に切り替わった。そのスキル内容は『左右の手であらゆる武器を操るスキル。一刀状態でもスキルの能力上昇、基本能力上昇。左右の手でそれぞれ武器を装備した場合、二刀流専用技が発動する。更に二刀状態で放つ通常スキルは攻撃力が一・五倍になる。王の資格の一つ。』
「うおあああああ!」
十四撃目の右手上段斬り。身体を真っ二つにする――。しかし、奴は本能で暴れる化け物と化していた。
(クソ………SP(スキルポイント)も底をついた………)
そう、今までの戦いでスキル、炎、闘気を使い果たしてしまった。SPに関しては《二刀流》のデメリットである『通常スキル以上にSPを消費する』という点により、三分の一程残っていたSPも、三回の大技でほとんど使い切ってしまった。使えるのは、初級、下級剣技。それも恐らく数回―――。
「武技〝限界突破〟!〝ブーストアクセル〟!〝ソニックアクセル〟!〝身体把握〟!」
負担を引き換えに肉体の限界を超える。意識を一千倍に加速。身体速度を加速。全身の筋肉が隆起し、血管が浮き上がる。
(全てを込めろ、精神を!)
古代、武技を使用していた者たちが使っていたのはSPでも、闘気でも、魔力でもなかった。
それは、〝気〟と呼ばれるもの。精神力である。〝武技〟――、
〝魂気剣装〟剣に気を纏わせる武技。
二刀流武技〝激烈閃撃〟
六連撃の二刀流技。そして新たな武技を発動――。〝七連光鏡〟七連撃を全く同時に放つ技。
片手四連撃、《エクシア》。
四撃を叩き込み、身体が硬直。
その頃、
「アリス、もう一度〝星砕きの流星群〟を撃てるか⁉」
「撃てると思うけど……どうするの?」
「お前の剣に俺の闘気とスキルポイントを込める。アルタイルに力を届けるんだ!」
「………分かった」
「はああああっ……!」
アリスの細剣に光が宿る。そしてアリスは剣先をアルタイルに向ける―――。
「〝星砕きの流星群(スターロード)〟!」
「行っけえええええ‼」
「受け取れ、アルタイル!」
「!」
身体の中に、力が―――。俺の中に闘気とSPが流れ込んでくる―――。
「うおおおおおおお!」
硬直を乗り越えて、剣を振り下ろす。
セイバーと同時の攻撃。俺達の雄叫びと同時に、力が増す。
「終わりだ…………ロゼラリアぁああああ!」
これなら、撃てる。剣を握る力が増す。そして俺は、その力が籠った文を口に出す。
『流星よ。我の剣から溢れ出し熱により、空間を熱せよ!小さき火花で世界を照らし、明日への道を切り開く、閃光を生み出す只人の必然……それは、革命の軌跡なり!』
一瞬のタメの直後、俺はもう一度、その技を放つ―――――――――――――――!
「スターマーク・リオネル!」
雄叫びと共に荒れ狂う本能。神経が焼き切れそうなほど、限界を超えた動作。
完全詠唱により最大火力を生み出す。そして今までの二刀流の経験を全て出し切る。腕を振る速度が徐々に加速していく。人間を超えた剣技。
「〝奪命〟!」
「まだ動け!アウェイキングセイバー!目を覚ませ! ここで止まるんじゃ、ねえええっ!」
セイバーの眼が赤く輝いた。駆動音が大きくなり、膂力が爆発的に上昇する。
「エクス……カリバー!」
「ナイトプレート!ベールリオン!力貸せ!」
硬度が増し、切れ味も向上。
(これでも……!)
斬れない。大剣でも、二刀流でも……俺は……俺は!
―――英雄に――――。
子供の頃、父さんと爺ちゃん……母さんに読んでもらった古代の……いや、最初の英雄。その名は《ギルガメシュ叙事詩》。
女神と庶民の間に生まれた男が、その国の王となり、神々に抗う物語。
「英雄になるんだよ!俺はああああああ!」
「自己顕示欲の塊ね!」
「そうだよ!俺はただ、誰かを救えればいい、それで満足する……それが、俺だあああああ!」
あと、もう少し―――。
「何なのよ、あんた達……!」
「俺は、俺だ!」
「俺達は、人間だ!」
アルタイルが金髪、赤い瞳に。そして金のオーラを吹き出した。しかし魂は、アルタイル・アリエルのまま。そして、《翼》が発動する―――――――――――。
「「うおおおああああああああああああああッ‼」」
女神を、殺した。
「やった、の、か……?」
「ああ、俺達は、勝ったんだ……俺達は……自由だ……!」
スレイブの名を捨てて、人間として生きていく。黒種ではなく、男だ。
「セイバー……よくやった……」
機体の間から蒸気が吹き出し、冷却が始まる。
「おーい! アルタイル!」
「師匠、アリス!」
「お前ら!」
「アルタイル、ギルマスから言いたいことがあるそうだ」
俺はステータスプレートを取り出し、タップ。
『やあ、アルタイル君』
「ギルマス……」
『そんなに固まらなくていいって! むしろよくやってくれたと言いたいぐらいだし!』
「え?」
『いやぁ、オジサンも昔あの女神にやられたクチだからね……そして神々の中でも、ロゼラリアはやりすぎたってことで、今回の事は不問にするそうだよ』
「……マジ?」
『マジマジ』
「よかったね、アル」
「…………ああ、これからどうしようかと……」
「まあ、私はそれでもついて行くけどね」
「…………なんだって?」
「……なんでも」
小声で聞き取れなかった――。
「………エイル、これからどうする気だ?」
「仲間達とこの国を建て直す。まずは女との和解からだ」
「………そうか………頑張れよ」
「……お前もな」
俺達は笑いながら、拳をコツン、とぶつける。
「それじゃ、俺達は帰るとするよ」
「もう帰るのか?」
レングたちが戸惑いを見せる。
「俺達は《冒険者》だからな」
「……………………そうだったな」
「「じゃあな」」
帰路にてアリスが
「いいの?あんな別れで……」
「また会えるさ、それに俺は、アルタイル・アリエル……勇者の孫であり、息子。そして…………未熟者だから」
「……ふふっ」
「面白いことを言うなぁ」
「―――帰ろう、アースリアに」
この後、歌姫事件もロゼラリアの仕組んだことが発覚。そしてこの事件は《解放戦争》の終幕となった。しかし、まだ終わらない。この世界はまだ、続く。
これは、《黒き剣士》が英雄になる物語。
最も古き幻想から始まった、最も長き〝英雄譚〟。
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