8 同士討ち
あれからどれくらい経っただろうか。
ブラッドウォリアーとブラッドウィザードの二体は今も激しい攻防を繰り返している。
その間、直接俺に攻撃が飛んでくることは一度も無かった。
もはや俺なんて眼中にないってことだろう。
彼らにとって俺みたいな弱者はどうでもいい存在なんだ。
そして、それは恐らく魔物であっても例外では無い。
最初に戦ったあのブラッドシーカーが瀕死だったのも、全てコイツらのせいだと考えれば納得できる。
大方、戦いに巻き込まれて流れ弾にでも当たったのだろう。
でないと瀕死のまま生かされている理由がわからないからな。
つまり奴らは「どれだけ瀕死の巻き添えがいようが、本来の敵を倒しきるまでは直接とどめを刺しには来ない」と言う特性を持っている訳だ。
……それが、俺にとっては最後の頼みの綱となる。
要はアイツら同士が互いに攻撃しあっている間、俺に直接攻撃は飛んでこないと言う事だからな。
戦いが終わる間際まで待って、後は瀕死になった方を俺が倒してしまえば良いのだ。
と、そう言う事なので俺は逃げずに奴らの近くで戦いを見続けていた訳だが……
「ひぃっ!?」
時折飛んでくる流れ弾が、とにかく怖すぎた。
少しでも掠れば全身を持っていかれかねない。
そんなヤバイ魔法がどちゃどちゃと次々に飛んでくるのだ。
生きた心地がしないのも当然だろう。
しかしそんな地獄に耐え続けた事で、とうとうその時はやって来た。
「キ……シュァ……!」
「ッ!!」
魔法攻撃を捌ききれなくなってきたのか、傷だらけになったブラッドウォリアーがとうとう片膝をついたのだ。
このチャンスを逃す訳には行かない。
アイツの上級剣術を手に入れられれば、俺も奴らと戦えるようになるかもしれないんだ。
「よし、これでアイツを……!」
アイテムボックスから取り出したアドルフの斧を握りしめ、奴の元へと走る。
これくらいの距離なら上昇した身体能力のおかげであっという間だ。
後はコイツを振り下ろすだけ。
それで倒せる……!
――そのはずだった。
「うおおォォッッ!!」
「シュ……ァァッ……!」
「……ッ!?」
頭を目掛けて全力で振り下ろしたはずの斧は、あろうことかブラッドウォリアーの肩に突き刺さってしまう。
……
今にもぶっ倒れそうだってのに、コイツはギリギリのところで俺の斧を弾いて致命傷を避けたのだ。
「くっ……!!」
考えるよりも速く、俺は後方へと飛んでいた。
カウンターが飛んでくることを警戒したのか、俺の本能がそうさせたのだ。
するとその直後、ブラッドウィザードの放った魔法が奴の体を包みこんだ。
想定とは少し違うものの、結果的に助かったか……。
ただ、今の魔法がとどめになったのかブラッドウォリアーは動かなくなってしまった。
死にそうな方を狙うと言う俺の完璧な作戦も、これで奇麗さっぱり白紙になった訳だ。
「クソッ、もう少しだったってのに……!」
あと一歩、あと一歩で倒せていただろう。
それが分かり切っているからこそ、物凄く悔しい。
とは言え、ブラッドウィザードは今なお健在だ。
今は少しでもこの場から離れた方が……
【レベルが上昇しました】
【スキルを習得しました:≪上級剣術≫】
「……は?」
……レベルが、上がった?
それにスキルも手に入れたって……いやいや待ってくれ。
俺は奴にとどめを刺せなかった。
それは紛れも無い事実だ。
なのにどうしてレベルが上がって、スキルも手に入っているんだ……!?
「フロスト……」
「あぁ、クソッ! 今は考えている場合じゃねえ!」
ブラッドウィザードが今にも魔法を放とうとしていた。
ウォリアーの方が倒れたから俺に標的が映ったんだろう。
ならば、やるべきことは一つだ。
アイツを……ブラッドウィザードを倒す……!
「上級剣術の力が一体どれ程なのか、試させてもらうぞ……!」
斧をアイテムボックスの中に収納し、代わりに落ちているブラッドウォリアーの剣を拾って構える。
その瞬間、どのように動き、どのように剣を振ればいいのかが手に取るように分かった。
「凄いな……。どう戦えば良いのかが手に取るようにわかる……」
「……ブリザード」
「来たかッ!!」
ブラッドウィザードが魔法を放ってきた。
相変わらず凄い威力だ。
けど、今の俺なら……アレが出来る!
「うおおォォッ……!!」
ブラッドウォリアーがやっていたように魔法を剣で叩き斬った。
完璧とは言い難いが、何とか形にはなっている。
致命傷は避けられているし、ひとまず成功……と言って良いだろう。
あとはこのままお前をぶった切ってやれば……!!
「終わりだァァッ!!」
全力で剣を振り、ブラッドウィザードの体を真っ二つに斬り裂いた。
俺の……勝ちだ。
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