第二回配信『【登場!】謎の美少女!』




 今日も元気に、お腹いっぱい元気いっぱい、ごはんを食べよう!

 アランと、

 ヴィオラでーっす!!


 前回、勇者パーティを追放された役立たずな三人の男たちが、酒場に集まりました!

 ところがその男たち、なんだか様子がおかしいのです。


「愚かなる人類よ。怒れ、叫べ、泣け、喚け! すべては、恐怖の魔王の下僕となるのだ!」

 吟遊詩人のケルシュが、なんと、恐怖の魔王に!

 そして、魔王に対するは、もちろん勇者!……なんだけど、

「そうはさせるか! 我こそは、勇者アルト! とうっ!」

 ゆうしゃあるとぉ?

 遊び人じゃなかったっけ?

 勇者と名乗ったアルトは、ジャンプして、

「そこまでだ、魔王ケルシュ!」

 魔王(?)ケルシュの前に立ちはだかります。

「おのれ、勇者アルト。配下のモンスターたちを、よくも滅ぼしてくれたな。しかし、今日こそが、貴様の命日だ!」

 ケルシュもケルシュで、完全に魔王に堕ちてしまった。

「そうはいくか! とうっ!」

 威勢よくかけ声をかけると、アルトが、剣を振りかざして、ケルシュに斬りかかった!

 ケルシュは攻撃を受けて、よろめいてしまう。

「大丈夫ですか、魔王ケルシュ様!」

 魔王ケルシュのそばに付いている従者が、心配をする。

 が、これは、踊り子だったヴァイだった。


 いったい、この人たちに何があったんだ? というところから、今回のお話は始まります。

 ではでは、第二回配信、始まるよ!


「ふふふふふ。やるな、勇者アルト。だがしかし! 我ら魔王軍を舐めるな。闇の賢者ヴァイよ! やれ!」

 悪の魔王ケルシュの命令により、闇の賢者ヴァイは、勇者アルトへ攻撃をかける。

「かしこまりました! 行くぞ必殺! レッド・ホット・チリ・ペッパー!」

 その声と同時に、ヴァイが、手に持った小瓶に入った粉をまいた。紅い魔法の粉だ。

 紅い粉が、勇者アルトの顔面に降りかかる!

「うお! 香辛料かよ! なんてもったいない!」

「目潰しに最適なのだ」

「これで終わりだな、勇者アルト!」

 魔王は、香辛料で勝ち誇っている。しかし、勇者だってこのまま終わるわけにはいかない!

「勇者パーティの仲間! 助けに来てくれ!」

 ところが、誰も来ない。勇者はぼっちだった。

「誰も来ないな」

「来ませんね」

「今だ、スキあり!」

 自分がぼっちだという現実を認めたくない瞬間って、あるよね。

 勇者アルトが、闇の賢者ヴァイに斬りかかる!

「ぐわあああ!」

 ヴァイが、だいぶわざとらしい悲鳴を上げて倒れた。

「俺には、目つぶしなんて効かない! いくぞ、勇者斬り!」

 返す剣で、アルトが、魔王ケルシュにも斬りかかり、

「ぐげえええええええええ」

 カエルを潰した時みたいな悲鳴を上げて、倒れる魔王。

「勇者アルトが、世界を護ったぞ!」

 勇者アルトは、魔王に勝った。剣を高く掲げて、決めポーズを取る。

 ところが。

 魔王ケルシュが起き上がり、なんと、アルトを背後から蹴り倒してしまった!

「効かん、効かんぞ、勇者アルト!」

「なんだよ! 負けたんだから、大人しくやられろよ!」

 ぶっ飛ばされたアルトが、不平不満をぶつける。そりゃそうだ。

「ふっふっふっふ。魔王は滅びないのだ」

 と、ケルシュはすごみつつ、

「ってか、ずるいぞ、アルト」

 逆に不平を言い始めました。

「ずるはお前だろ」

「違うよ。たまには俺にも、勇者やらせろ」

「正々堂々、じゃんけんで負けたのはお前だろ?」

「負けた上に、魔王だなんて、踏んだり蹴ったりじゃねえか。今度から、じゃんけんで負けた方が勇者やろうぜ」

「いいだろう」

 二人とも、手指を交差して手を掴み、手のひらの間の隙間を見て、

「最初はグー!」

 じゃんけんぽん!

 ケルシュがグー、アルトがチョキ! ケルシュが勝った!

「やった! 勝っ……ちゃダメじゃん……!」

 自分で出したルールで、ゲームに勝って勝負に負けてました。

「じゃんけんで俺、負けたことないから」

 うん、だから、アルトはかっこいいこと言ってるぽいけど、勝負には勝ったけど、じゃんけんには負けたんだよ、君。理解してる?

「明日は俺が勇者やるからな!」

「ふざけんな!」

 どっちも譲らない、我が強いアルトとケルシュが、取っ組み合いの殴り合いで、ケンカになった。ヴァイが必死で止めに入るけど、それを見て、酒場の客たちは大ウケしていました。


 ヴァイたち三人は、パーティを結成した。それが、前回のラストでしたね。

 いろいろ悩んだ挙げ句、三人は、酒場の一角を借りて、ショーをすることにしたのです。

 この世界では、ショービジネスはあまり発達していないので、何かができると思ったわけだ。

 ところが、吟遊詩人のケルシュは、楽器は演奏できるが、詩文の才能が最低レベルで、歌については、人間の可聴領域レベルではないため、却下。

 ヴァイのジョブは踊り子だけど、リズム感が皆無なので、全然踊れない。むしろ、試しにケルシュが踊った方が、キレがよかった。ケルシュのダンスという案もあったけど、却下。

 三人寄ればモーン・ジュの知恵の神が降りるとことわざに言うが、これほどまでに、何もできないとは、誰も思わなかった。


 試行錯誤すること一ヶ月。

 苦肉の策で、張りぼての防具に竹光の剣を持って、勇者と魔王の劇を始めました。

 脚本は、ヴァイが書きました。その脚本を元に練習を始めましたが、いつも、お話の途中から勇者の取り合いでケンカになり、ぐだぐだになって終わる。

 ところが世の中分からないもので、なぜか、それがウケた。初めて、お客さんから金貨が投げ入れられた。なるほど、ケンカがいける、ということが分かったわけです。

 酒場にいる酔っぱらいたちは、真面目な話を見たいわけじゃなくて、ドタバタケンカをしていれば、それで楽しいらしい。

 一人が大金を投げ始めると、酒場にいる他の荒くれ者どもも、金貨をどんどん投げてくれる。投げてもらえれば嬉しいから、より一層エキサイティングして、ケンカをする。もちろん、このケンカも、お芝居の一環というわけです。

 加えて、アルトもケルシュも、中身がクズでも見た目がいい。年齢性別ジョブを問わず、ファンをたくさん獲得してくれたので、なんだかんだで、三人はけっこう人気になった。

 いつしか、冒険者の出会いの酒場は、三人のパーティが人気の、見世物小屋の様相を呈してきました。

 とはいえヴァイには、疑問がありました。

「どうしてそんなに、皆さん勇者をやりたいんですか?」

「勇者をやらなきゃ、魔王役になるだろうが。俺はやだぞ」

 魔王アレルギーでもあるのかってくらいに、アルトは嫌がっている。

「僕もだ。これ以上好きなことができないなら、歌を歌う」

「それはダメ!」

 芝居だ。劇だ。これが、僕らの生きる道。役者こそが、天職だった!

 とばかりに、社会不適格者な三人は、ついに自分たちの居場所を見つけた、というわけです。

 三人は、いつしか人気劇団となり、酒場は連日超満員になった。投げ銭が大量にもたらされました。金貨銀貨銅貨金貨銅貨!

 勇者パーティにいた頃よりも、潤沢に稼げるようになっている。しかも、命の危険にさらされるどころか、怪我をする危険性すらない。

 めでたし、めでたし。


 いや、終わらないから!


 そんなことで、平和に終わるわけがない。

 これからが、本編の始まりだよ。

 人気になった三人は、転落するのも早かった。


 半年後。

「おはよう」

 酒場の裏口(通称楽屋口)の扉の前で、立ちすくむアルトに、ケルシュがあいさつする。

「おっす」

「入らないの?」

「入れないらしい」

「は?」

 半年ほど活動し、多少のマンネリを感じつつも、アルトもケルシュもヴァイも、それぞれに人気者となり、ファンに手を出してはスキャンダルになり、もみ消し、といった日々が、当たり前になっていました。

 そのせいか、多少、お客さんの数も減ってきているかな、投げ入れられる金貨も少し減ってるかな、というところだったけど、そう問題にすることもないかなと思っていた。

 そんな、人気を博していたある日、酒場に入れない日ができた。

「入れないって、どういうことだよ?」

 当然の疑問です。

「なんでも、今日から新しいチームが上演するって」

「そんなむちゃくちゃな話があるか。俺達が予約してたんだぞ」

 この話は大嘘で、実際には、予約などしていませんでした。ただ、暗黙の了解として、毎日勝手に使っていただけ。もちろん、酒場としてはお客さんは来るし、ビールやつまみの売り上げは上がるし、Win−Winの関係だったはず。

 そこに、事情を聞いたヴァイがやってきました。

「女の子ばかり四八人集めたグループが、場所代も払って、歌ったり踊ったりするらしい」

「四八人!?」

 驚くのも無理はない。

「客席の人数より多いんじゃねえか」

 定員五〇名のお店です。

「論点はそこじゃない」

「そうだな。問題は、女の子たちが可愛いかどうかだ」

「そこでもねえよ!」

 ケルシュのツッコミは、速かった。

 その日、三人は舞台に立つことができなかったので、仕方なく、客席に紛れ込んで、ステージを見てみた。客席は満席。酒場の外まで、入れなかった人たちの行列ができてる。

 驚くほどに、人気がある。とにかく若くて可愛い女の冒険者たちを集めた、「RPG四八」というグループらしい。

「センターに立っている人は、本当に勇者らしいぞ」

 すでに、歌の時に振り回す、魔力で光る棒を両手に持って、はちまきを締めて、ケルシュが語る。古参ファンの風格だ。グループ結成一日目なんだけど。

「四八人でダンジョンに行くのかよ。壮観だな」

 あれ?

「その冒険資金を集める、というのも、グループの目標になってるみたいですね」

「エグいくらいにファンがお金を貢いでるな」

 おや?

「投げ銭が、金貨だらけだ。まじか」

 ケルシュは、自分の金袋の中身を確認する。投げ銭する気なの?

「明日には、男だらけの五人組もデビューするらしいよ」

 ヴァイはヴァイで、仕入れてきた情報に戦々恐々としている。

「はあ?」

 歌って踊って劇をする。確かに、この世界ではショービジネスは、未発達だったかも知れない。だけど、三人がやってきたことは、別に特許でも何でもない。

 模倣が出るのも当たり前だった。そりゃそうだよね!

 結果、ただでさえマンネリ化して飽きられてきていた人気は、若い女の子や男の子たちに、あっさりと、簡単に、取って代わられたわけです。

 ちなみに、女好きで知られるアルトの反応が、さっきから微妙なのは、

「いや、子どもに興味ないから」

 ということでした。なるほどわかりやすい。


「愚かなる人類よ。怒れ、叫べ、泣け、喚け! すべては、恐怖の魔王ヴァイ=ツェンの下僕となるのだ」

 別の日。魔王ヴァイが、世界を牛耳っていました。

「勇者ケルシュー。たーすけてー」

 魔王に捕らえられたアルトが、助けを呼ぶ!

「正義の勇者ケルシュ=エール参上! とうっ!」

 勇者ケルシュは、ジャンプして、

「そこまでだ、魔王ヴァイ=ツェン!」

 魔王ヴァイの前に立ちはだかる。

「来たか、勇者ケルシュ。だがしかし、今日は貴様の命日だ!」

 魔王ヴァイが、手に持った杖(ただの棒きれ)を振り回して、ケルシュに攻撃する!

 コツン。ケルシュが、派手に痛がって倒れる。

「くそう。やるな。光の賢者アルト! 力を貸してくれ!」

「あー、はい」

 アルトが、のそりと動き出す。

「なにー。我が闇の魔法を破って、闇の賢者が光の賢者になるなんてー」

「僕は自由だー。ゆくぞ、魔法だー」

 さあ、ここから勇者の反撃だ!

「お前ら、やる気だせーーーーーー!」

 ケルシュが、アルトとヴァイを殴る。タコ殴り。ぼかぼかぼかぼか。

「痛ってえな! 何するんだよ!」

「本気殴りじゃないですか!」

 二人が怒るのも無理はないよね。

「ちゃんとやれよ! せっかく俺が勇者やってるのに!」

 ケルシュの憤りはごもっとも。

 なんといっても、真面目にやらない芝居ほど恥ずかしいものもありません。

「うるせえ! お客さんもいないのに、やる気なんか出るか!」

 酒場の客席は、見事なほどにガラガラだった。店の奥に、今でもアルトの肖像画入り缶バッチをカバンに付けている女性が、二人ほどいる程度だった。

 ありがたいけど、申し訳なくて痛々しい。

「お客さんが一人でもいたらやるのがショーじゃねえのかよ!」

 ショーマストゴーオン。いつの間にか、生粋の舞台人みたいなことを言い始めています。

 人気は完全に、若い男女のグループに奪われたけど、二週間に一回くらいは、それでも、酒場のステージに立たせてもらえた。

 だけど、もう一時期のような人気はどこにもなく、完全に、三人は下火だった。終わったコンテンツだった。投げ銭も、もう飛んでこない。そりゃそうだ。

「もうやってられねえよ。マスター! ビール!」

 やけになって、アルトがビールを飲み始めます。最近は、ずっとこんな調子。

「やめるのかよ」

「やってられねえって言ってるんだよ!」

 勇者のマントを脱ぎ捨てて、ケルシュもビールを注文する。ヴァイも。

 三人で、ビールを飲む。


 閑古鳥が鳴き始めた三人は、半年前のパーティ結成前と同じように、酒場でくだをまくことしかできなかった。こんな状態になって、はや一ヶ月。

 生活費にも困る始末で、衣裳や小道具、張りぼてだったけど、防具や剣のニセモノも、全部売り払った。着の身着のままで、寸劇をやらせてもらうだけの日々。

 次のアイドルたちの出番までの、ほんの少しの時間だけの、ただの前座。

 今日だって、このあと、夜にはメインイベントとしての、メンバー人気総選挙があるらしい。

 うっとうしいくらいに、宣伝のビラがまいてある。

【新しいセンターは誰だ!?】

【新メンバー募集中!】

【君も明日のアイドルだ!】

【急募! 集え勇者! 魔王を倒す仲間募集!】

【男性メンバーも童女募集中! 君も今日から生まれ変わろう!】

【君の一票が、世界を変える!】

 この総選挙で、メンバーの運命が変わり、信じられない金額の投げ銭が動く。なんといっても、メンバー一人一人にファンが付いているのだ。たった三人の、しかも、役立たずのクズたちのグループに勝ち目があるはずがなかったのです。


 ところがそこに、そんな三人の運命を変える人が、現れるのです。

 さあ、来ましたよ! 皆さんお待ちかね!

 現れたのは、二人の美少女です!

 一人は、ボリショイ。小柄で、紅いショートカットの髪が印象的な女の子。カワイイー!

 もう一人は、リング・リング。背が高めで、こちらはブルーの髪でロング。こっちもこっちで、可愛くない?

 二人とも、年の頃は一五,六歳ほど。アイドルグループにいてもおかしくない。

 おかしくないの!

 さて、ボリショイとリング・リングは、思ってもみないことを言い出しました。

 せーの、と息を合わせて、

「探していました。伝説の勇者様!」

 言われて、三人は、ポカンとして、アルトは間抜けな声を出した。

「はあ?」

「どうか、勇者様! 私たちの国を救ってください!」

 美少女二人は、声を揃えて言葉を紡ぐ。練習してきたの? って感じ。

 緊張してて、超カワイイ。ね?

「君たち、アイドルグループの子たち?」

 ケルシュが、今までに見たことがあったろうかと記憶をたどる。該当なし。

「いえ? 違いますけど」

 本気で意味が分かっていないっぽい。

「からかってるなら、家に帰りなさい。酒場は君たちみたいな子どもが来るところじゃない」

 と、大人なケルシュ。

「お二人とも、女の子相手なのに妙に元気がないですね」

 ヴァイの疑問は最もだったが、

「お子ちゃまは対象外。ただでさえ、あの胸くそ悪いグループを思い出させるのに」

 というのが、アルトの意見だった。

「あの、引き受けてくださいますか?」

 ボリショイが、なかなか確たる返答がもらえないので、ちょっとイライラしてきてる。

「えっと、つまり何を引き受ければいいんですか?」

「皆さんは、勇者ですよね! 国を滅ぼす悪を倒してほしいのです!」

 リング・リングの言葉で、なんとなく察した。

「なるほど、公演依頼ですか。今からやりますか? あまり時間はないですが」

 ステージはまだ空いている。三人が、途中でやめたから。

「できれば、私たちの国まで来てほしいんです」

 ボリショイの要求に、

「旅公演か。悪くないね」

 ケルシュはウキウキした。

「おいおい正気か? 子どもに頼まれて、えっちらおっちら遠征する気か?」

「でも、せっかくのオファーですし」

「子どものお小遣いで働くのかよ。俺は降りるぜ」

 そう言われて、パーティの興行の管理をしているヴァイが、質問する。

「ギャラは、確かに必要だね。旅するなら余計に」

 ボリショイとリング・リングが、顔を見合わせて、うなずき合う。

「では、みなさまを、勇者と見込んでお願いします。私たちの星に来てください。そして、私を護ってください」

「お願いします!」

 聞き慣れない言葉があった。

「星?」

「きちんと、報酬もあります」

 そのリング・リングの言葉に反応したのは、万年お金がない、

「報酬?」

 アルトでした。

「報酬だなんて、勇者様に失礼だよ! ねえ?」

「まあ、そうだね」

 何がまあそうなのか分からないけど、ケルシュがなんとなく応えてしまった。

 興行主として、ヴァイが問い質す。

「でも一応、念のために聞かせてもらえる?」

 ボリショイたちが、ごそごそと確認する。「これでいいかな?」「言ってみよう」

「相場がどれくらいかわかんないから、こちらの通貨で、一枚でどうでしょう」

 三人がしらけた。そりゃそうだ。

 小娘が二人、金を払うから自分たちの国に来てくれと言い出して、大金が絡むと思うほどお人好しでもない。

「銅貨一枚か。ビール半分ね」

「ほら、小遣いだった」

 アルトとケルシュが、苦笑いする、が、

「あ、一日で、金貨一枚です……」

 リング・リングが、おずおずと訂正する。

「一日で」

「金貨一枚!?」

 ヴァイとアルトが驚く。一人は、信じられないといった感じで、もう一人は、めっちゃ儲かる! といった感じで。どっちがどっちかは、言うまでもない。

「あのさ、からかってるの?」

 ケルシュが、冷静に確認する。

「いえ。ちゃんとあります」

 ボリショイが、腰に下げていた巾着袋を開いてみせる。アルトがのぞき込む。

 中には、金貨がじゃらじゃら入っていた!

「金貨が一〇〇枚くらい入ってる……!」

「まじか……!」

「今ここにあるのはこれくらいですが、国に帰れば、ちゃんと払えます」

 ボリショイの言うことに、一気に信憑性が出てきた。

 旅公演に行けば、毎日、金貨一枚は最低保証。公演をやれば、投げ銭だってもらえるはず。

「行くって言ったら、今からお金もらえるの?」

 アルトは、今すぐにでも手に入れたい。今晩のカジノは、荒れるぞ。

「全部終わったあとに、まとめてお支払いします」

 アルトは、極端に落胆しました。カジノはお預け。

 でも、お金を出してくれる人の前で、それをあらわにするほどバカじゃない。

「うん、まとめるべき!」

 涙をこらえるほどに悔しがりました。

「どうする?」

 ケルシュが、確認する。一応三人の合意で成り立っているパーティだ。

「どうするって、考えるまでもないだろうがよ」

 もう一押し。美少女二人が、さらに声を合わせて頭を下げる。

「お願いします!」

「いいかい、お嬢ちゃんがた。僕らは、いつも、ここで芝居をやる。満員の客席の前でね。それが、別の場所に遠征して行うというのは、とても異例で、特別なことなんだ」

 大人な態度で諭すように言うケルシュですが、端々嘘が混じっていて、見栄っ張りでちょっとかっこ悪い。

「分かっています」

「無理を承知でお願いに来ました」

『お願いします!』

 ボリショイとリング・リングは、頭を下げて、誠心誠意頼み込みました。上目遣いで。眼をうるうるさせて。

 その様子を見て、

「三秒、考えさせてくれ」

 ヴァイが、時間を要求しました。

「一、二、三……やります!」

 答えはとっくに決まっていました。


 ということで、物語の重要人物がそろいました!

 旅公演への出発は、翌日早朝だと約束して、この日は解散!

 それが、まさかの長大すぎる旅になるとは、この時の三人は、予想もしていなかった訳なのです。

 ボリショイとリング・リングの美少女コンビが気になる〜! という方、ぜひぜひ、チャンネル登録とグッドボタン、お願いしまーす!


 クチーナ・アルコバレーノ、第二回、あなたのハートをパイレーツ!

 アランと、

 ヴィオラでしたー!

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