第20話:青い結晶の行方

青い結晶が守護者の注意を引いたその瞬間、千代の中に妙な違和感が芽生えた。このままでは、足を踏み入れてはならない領域に迷い込んでしまうのではないか――そんな不安が頭をよぎる。


「青年さん、やっぱりここから引き返したほうがいいかもしれません。」


千代の言葉に、青年は驚いた顔をした。しかし彼女の真剣な表情を見て、彼もまた深く頷いた。


「確かに、これ以上進むのは危険かもしれませんね。一度町に戻りましょう。」


二人は慎重にその場を離れ、来た道を引き返し始めた。守護者の視線を背に感じながら、足早に森を抜けていく。その途中、千代はふと手に握った青い結晶を見つめた。


「この結晶、どうして私たちを導いたんでしょうね。」


「それがわかれば、きっと陽の泉に近づけるんでしょうけど…今はまず、安全が優先です。」


そう言いながら、青年は千代を安心させるように微笑んだ。森の出口が見え始めると、二人の足取りも軽くなっていく。そして、陽の光が差し込む開けた場所に辿り着いたとき、千代の心には一つの確信が生まれていた。


「母の足跡を追うには、もっと準備が必要です。無理をしてはいけないって、結晶が教えてくれたのかもしれませんね。」


青年もまた、頷きながら答えた。


「きっとこの結晶には、まだ何か秘密が隠されているのでしょう。それを解き明かす鍵を、町で探しましょう。」


二人は花屋へ戻ることにした。千代が立ち寄った場所が再び出発点となるのだ。


町に戻る途中、千代は青い結晶をポケットにしまいながら思った。これから母の足跡を追う旅は続くが、焦らず一歩ずつ進むべきだと。青年もまた、そんな彼女の決意を感じ取っているようだった。


町に着くと、懐かしい花屋の匂いが千代を迎えた。優しい香りに包まれながら、千代は新たな一歩を踏み出すための準備を始めるのだった。


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