テレビゲーム雑がたり

矢木羽研(やきうけん)

『LoveSong探して』を探して

 『LoveSong探して』といえば、ドラゴンクエスト2において「復活の呪文」を入力するときのBGMであり、牧野アンナによる同名のタイアップソングである。後年には女性デュオのルーラが『薔薇ふる空』という別の歌詞でカバーした。このタイトルを見てこの話を開いた人にとっては、今さら説明するまでもないだろうか。


 私にとって、この歌は長らく幻の存在だった。確かファミコン版の説明書に広告が乗っていたので存在自体は早いうちから知ることができたのだが、肝心の曲を聞いたことがなかったのである。


 復活の呪文のBGMは割とお気に入りで、耳コピしてピアニカで弾いていた思い出がある(片手で主旋律のみだけど)。しかしサントラも持っていなかったので曲名は知らず、この曲こそが『LoveSong探して』であるということに、長らく気づくことはなかった。


 DQ2そのものは早い段階で投げ出してしまった上で、数年後にようやくクリアしたのだが、曲と曲名が結びつく機会は訪れなかった。リアルタイムでラジオのオールナイトニッポンを聞いていた世代にとっては信じられないかも知れないのだが、ネット以前において後追いでプレイしたのであれば無理もないことだっただろう。


※DQ2についての具体的な思い出や評価は以下を参照

「私が遊んだファミコンソフト」

https://kakuyomu.jp/works/16817330662502416873/episodes/16817330662901378441


 さらに何年か過ぎ、インターネットに繋いだ頃の話である。ドラクエシリーズのファンサイトで『LoveSong探して』の歌詞と説明が掲載され、ついでにMIDIか何かで音楽が流れていたと思う。そこで初めて知ったのである。「『LoveSong探して』って、この曲だったのか!」と。


 思うに、シリーズの曲の中では露骨にポップス調であり、異彩を放っていたと思う。だからこそ耳に残ったのであろう。歌詞自体はゲームと全く関係なくて、少しがっかりしたというのが本音なのだが。


 『LoveSong探して』は、私の知る限り(すぎやまこういち公式による)オーケストラ版は存在しなかったはずである。リメイク版のピチカートアレンジを生演奏したものはあるはずだが、あれはテンポからメロディラインまで全くの別物であり、原曲(あるいはヴォーカル版)をベースにクラシック楽器で演奏したものは、少なくとも私は聞いたことはない。


 曲の作り方が違うだろうから仕方ないかも知れないが、ぜひすぎやま先生本人によるクラシック・オーケストラアレンジ版を聞いてみたかったものである。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る