第17話

 海底城の大広間にてトリトン、ポセイドンに遭遇したアルディア達。

 先に待ち受けているガブリエルの下に辿り着くために、トリトン、ポセイドンと戦うこととなったのであった。


 ―――海底城・大広間

 トリトン、ポセイドンの攻撃を、連携行動にて上手くいなす一方、攻撃を仕掛けていくアルディア達。

 カスティードでの訓練で各々がレベルアップしたこともあり、四柱帝ガブリエルの幹部トリトン、ポセイドン相手にも互角に戦うことができていた。

氷線ひせん!」

 ザフィーアは刀に魔力を纏い、刀を垂直に切り上げる。

 垂直に切り上げた刀から放たれた氷の斬撃は、地を走りながら、進行方向の先に居るポセイドンの方へ、真っ直ぐ進んでいく。

 しかし、ポセイドンはこの攻撃を難なく回避。反撃といわんばかりにザフィーアに向かい水鉄砲を放った。

 だが、この水鉄砲を、今度はアルディアが『レイ』の魔法で相殺。ザフィーアに届くことはなかった。

 一方、アルディア達の横ではルービィがエスメラルダの補助を受けながら、トリトンと交戦。

 相手がルービィにとって弱点属性の持ち主ということもあり、敵の氷撃を回避することに重きをおきつつ、隙を見て攻撃を行うという戦い方を取っていた。

 しかしながら、いずれも均衡こそしているもののお互いに決定打が欠けており、戦況が硬直状態のままが続いていたのであった。

「流石に手強いな」

 続く均衡状態にそう呟くザフィーア。

「四柱帝幹部だけあって、雑魚クリーチャーとは訳が違う、ってわけだね」

 ザフィーアの呟きを肯定するかのように、エスメラルダもそう言葉に出す。

 半年前のガブリエル軍との戦い含む従来までの戦い、そして今回の海底城の道中も、クリーチャーとの戦いは、いずれも単体で見る限りでは早々に倒せてしまえる相手ばかりであった。そのため、均衡しているとはいえ、長期戦になることはなかったのであった。

 しかしながら、今戦っているトリトン、ポセイドンとの戦いについては、均衡こそしているものの、戦闘中での疲労、決定打に欠けるという焦り、という、今までの戦いにはない場面に遭遇していた。

 そのため、現在の硬直状態に歯痒さを感じていたのであった。

 しかしながら、この状況に歯痒さを感じていたのはアルディア達だけではなかった。

 トリトン、ポセイドンもまた、この状況に歯痒さを感じていたのであった。

「中々やるではないか。正直、想定以上だ」

「だが、流石に鬱陶しくはあるな」

「仕方ない。ポセイドン、アレをやろう」

「承知した、トリトン」

 トリトン、ポセイドンの2体はやり取りを終えると、アルディア達の前方で円を描くように泳ぎ始めた。

 何をするつもりなのだろうか? 疑問に思いつつも警戒をし、構えるアルディア達。

 そんなアルディア達を横目にトリトン、ポセイドンは円を描くように泳ぎ続ける。すると、トリトン、ポセイドンの泳ぎに併せてどんどん水のが現れ始めた。

 水の環は、その後トリトン、ポセイドンが泳ぐにつれてどんどん明確に現れ始める。そして、水の環がはっきりと確認できるほどできあがった辺りで、トリトン、ポセイドンは泳いでいたその勢いでアルディア達の方へ身体を向ける。すると、トリトン、ポセイドンが作り出した水の環は、トリトン、ポセイドンの動きと併せて大きな渦となり、アルディア達に襲いかかったのであった。

 自らの方を目がけ、高速で襲いかかってくる渦に、とっさに防御態勢を、エスメラルダはより魔力を強め水属性防御の魔法を展開する。

 しかしながら、トリトン、ポセイドンが作り出したその渦は、容赦なくアルディア達に襲いかかったのであった。

「うわあぁぁぁぁぁ!」

 巨大な渦攻撃に思わず吹き飛ばされてしまうアルディア達。

 その勢いで、アルディア達は大広間の地面や壁面に叩きつけられてしまった。

「う……うぅ……」

「だ、大丈夫か? エスメラルダ?」

「うぅ……。な、なんとか……。ルービィとアルディアは?」

「あ、アタシもなんとか……」

「私は……大丈夫……」

「うぅ……、まぁアルディアは丈夫だしね……はは……」

 ダメージを追いながらも、お互いの状況を確認するアルディア達。

 そして、ゆっくりと立ち上がり、トリトン、ポセイドンの方へ身体を向けた。

「ほぉ……我々の『サイクロン』を受けて立ち上がるとは」

「本来なら八つ裂きになっている筈なのだがな……」

 立ち上がったアルディア達を見て、そう口にするトリトンとポセイドン。

 2体の放った魔法『サイクロン』は、どうやら斬撃を含む渦を起こす魔法だったらしく、並の相手であれば八つ裂きにされてしまうものであったらしく、吹き飛ばされ、身体を強打する程度で済んだ事自体、トリトンとポセイドンにとっては想定外の事であったようだ。

「あの緑髪の小僧の魔法か?」

「いや、サファイアドラゴンの加護だろう」

「あぁ全く忌々しい海蛇だ」

「あぁ全く面倒だ」

 アルディア達が無事であった理由。恐らくサファイアドラゴンによる加護であると考えたトリトンとポセイドンは、口々に不満を言う。

 一方、トリトンとポセイドンの不満を聞いたアルディア達は、

「サファイアドラゴン様のお陰なんだ、無事なのって」

「アルディアの場合は元々の身体能力ってのもありそうだけどね……」

「エスメラルダの魔法のお陰もありそーだけどね……」

「だが、流石にこれを何度も食らうわけにはいかないがな……」

 と、口々に感想を述べる。

 確かに、あれだけの魔法で五体満足で済んでいるのは、サファイアドラゴンの恩恵によるものが大きいだろう。

 だが、サファイアドラゴンの加護はあくまでも水属性魔法による被害の軽減に過ぎず、ザフィーアの言うとおり、何度も受けるわけにはいかない魔法であることも事実ではあった。

 と言うのも、アルディア、エスメラルダ、ザフィーアこそ、魔法による衝撃と吹き飛ばされた際に床や壁面に強打したダメージで住んでいるものの、水属性が弱点であるルービィは衝撃や強打のダメージだけではなくサイクロンの魔法による斬撃も受けており、細かくではあるものの、顔や身体に切り傷を負っており、青い血を流していた。

 そのため、トリトンとポセイドンのサイクロンの魔法は、特にルービィにとっては何度も受けられるような魔法ではなかった。

「まさかあんな魔法を持ってたなんて……」

 均衡状況から一変、不利な状況に陥り、そう言葉を漏らすエスメラルダ。

「あのサイクロンとかいう魔法、何とかしないとな……」

 エスメラルダの言葉に続き、ザフィーアも刀を構え、そう言葉にするのであった。

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