第16話
サファイアドラゴンの恩恵で海中での活動が出来るようになったアルディア達。
メリュジーヌの先導で海底城まで辿り着き、ガブリエルのクリーチャーを倒しつつ海底城の大広間まで進むと、奥よりやってきたトリトン、ポセイドンに遭遇したのであった。
―――海底城・大広間
「トリトン、ポセイドン……」
トリトンとポセイドンの姿を見て、改めてそう呟くアルディア。
一方、トリトン、ポセイドンはというと、
「これはこれは、半年ぶりじゃあないか」
「しかしお前達地上の者がどうやってここへ?」
と、遊泳をしながらアルディア達に話しかける。
「
エスメラルダは挑発するかのように、鼻で笑いながらそう答える。
「ふふ、大方サファイアドラゴンの仕業であろう?」
「あの海蛇め、余計な真似を……」
トリトン、ポセイドンもまた、鼻で笑いながらそう返した。
「ここまで私たちが来るまでの間、あまり貴様らのクリーチャーがいなかったように思えるが、今来たのは不都合だったか?」
ザフィーアもまた、挑発するかのように問いかける。
トリトン、ポセイドンは遊泳を続けながら、
「ガブリエル様の支配する
「黒海エリアなど、ガブリエル様にとっては所詮支配下の一部に過ぎんよ」
と答えた。
「つまりはここにはあくまで一部のクリーチャーしか置いていないってこと?」
エスメラルダはトリトン、ポセイドンに尋ねる。
「その通り」
「そもそもが我らが居ればガブリエル様に近づける輩など居らぬよ」
トリトン、ポセイドンはそう答える。
すると会話を割るかのように、
「ま、どーでもいいけどさー」
ルービィがはそういうと、胸の前で拳と手のひらをパンッ、と叩き、
「アンタらさえ倒せば、後はガブリエルだけ、って事でしょ」
そう言うと、構えの体勢をとった。
ルービィが構えをとると、それに続くかのように、ザフィーア、エスメラルダ、そしてアルディアも、それぞれ戦闘の態勢に入る。
そして、トリトン、ポセイドンも
「ふふふ、威勢がいいじゃあないか」
「いや、元よりそのつもりか……」
そう言うと遊泳をやめ、アルディア達の方へ顔を向けた。
そして、双方向かい合って戦闘態勢へと入ったのであった。
一触即発の状況の中、構えを崩すことなく、双方しばらくの間向かい合っていた。
すると、そんな沈黙を破るかのように先に動いたのは、ポセイドンであった。
開戦の合図と言わんばかりに、ポセイドンはアルディア達目がけ、口から高圧の水鉄砲を放つ。
アルディア達は自ら目がけ飛んでくるポセイドンの水鉄砲を回避すると、回避と同時にルービィ、ザフィーアは前衛へ、エスメラルダ、アルディアは後衛へと移動する。そして、後衛へと移動したアルディアがお返しとばかりに銀のロッドを相手に向け、光属性の基本魔法である光線魔法『レイ』をトリトン、ポセイドンに向けて放った。
銀のロッドの先端より放たれた『レイ』の魔法は、トリトン、ポセイドン目がけ一直線に飛んでいくものの、トリトン、ポセイドンもこれを回避。この回避を以て、トリトン、ポセイドンも硬直状態から一変、動き始めたのであった。
トリトン、ポセイドンが動き出すと、前衛のルービィ、ザフィーアもトリトン、ポセイドンに向かって動き始め、後衛のエスメラルダは水属性防御強化のルーン魔法を展開した。
双方が動き出すと、今度はトリトンが自身の尾びれに氷の魔法を纏い、ルービィ達に向かい、垂直に叩きつける。
ルービィ、ザフィーアはこの攻撃を左右に飛んで回避。着地後、お返しと言わんばかりに、ザフィーアは攻撃後のトリトンに向かい駆け寄って接近。帯刀していた刀に手をかけ、魔力を込めて、抜刀と同時にトリトンに魔剣技による攻撃を行った。
しかしながら、トリトンはザフィーアの刀の刀身を噛むことで攻撃を制止。それと同時に、ザフィーアの足止めをしたのであった。
トリトンに自身の刀『冬雪』を噛まれたザフィーアは、何とかトリトンの歯から引き抜こうと試みる。
しかしながら、流石に鮫をモチーフとしたクリーチャーであり、しかも実力は四柱帝ガブリエルの幹部というだけあって一筋縄ではいかず、ザフィーアの力をもってしても、トリトンは噛みついた刀を放すことはなかった。
「くそっ……」
中々刀を引き抜くことができないザフィーアは、険しい表情を浮かべながらも、何とかできないかと刀経由で魔法を放つ事も試みる。
しかしながら、同じ水属性の攻撃であり、また、魔剣技ではなくあくまでも刀に魔力を込めて刀経由で魔法を放っているに過ぎない攻撃ということもあり、トリトンが刀を放すには至るだけの威力を出すことはできていなかった。
そして、そんな状況に苦戦しているザフィーアを格好の的と認識したのか、今度はポセイドンがザフィーアに接近。自身の尾びれに水の魔法を纏い、ザフィーア目がけ、なぎ払うかのように魔法を纏った尾びれを水平に叩きつけようとした。
「!しまった」
刀の件でトリトンに気をとられていたザフィーアは、ポセイドンの接近に気づくのが遅れ、気がついた時には既に自身に向かって攻撃が行われており、回避はおろか防御も間に合わない状況であった。
自身の目の前に来た攻撃に、大ダメージ、もしくは最悪の事態を想定するザフィーア。すると、攻撃が自身に届く直前、ポセイドンの上方から右拳に炎を纏ったルービィが降りてきた。そしてルービィは炎を纏った正拳『火炎拳』でポセイドンの背中を強く殴りつける。ルービィの死角からの攻撃に怯んだポセイドンは、ザフィーアへの攻撃を中断するハメになり、ザフィーアは間一髪のところでポセイドンからの攻撃を受けずに済んだのであった。
「大丈夫? ザフィーア」
火炎拳による攻撃を終えたルービィは着地をすると、ザフィーアに向かって尋ねる。
「ああ、間一髪だ。助かったよ」
ザフィーアは苦笑いを浮かべながらルービィにそう答えたのであった。
「さて、次はこいつかな?」
ルービィはそういうと、両手に炎を纏い、ザフィーアの刀『冬雪』に噛みついているトリトンの方を見た。
トリトンも刀に噛みついたまま、ルービィのことを睨みつけていた。
すると、突然トリトンの横腹に大きな光線が直撃する。
ルービィに意識を持って行かれていたトリトンはその光線を受けると、その勢いで思わず噛んでいた刀を放してしまった。
ルービィ、ザフィーアはトリトンに向かって飛んできた光線の方向へ視線を向ける。
するとそこには、トリトンに向かって銀のロッドを向けていたアルディアの姿があった。先ほどの光線は、アルディアによるものであったのだった。
「アルディア。助かったよ」
刀が解放されたザフィーアはアルディアに礼を言う。
「ごめんね。魔力を溜めるのに少し時間かかっちゃって」
アルディアはザフィーアにそのように返した。
「成る程。最初の『レイ』よりも大きな『レイ』。つまり魔力を溜めて放った『チャージレイ』というわけか」
ザフィーアはアルディアにそう言う。
「うん。でもやっぱまだ時間かかっちゃうなって……」
アルディアは少し不満そうにそう言う。
「でもチャージ量とかもかなりコントロールできるようになってるんじゃない?」
「そうそう。半年前みたいに反動で吹き飛ぶようなこともないしね」
「そうかな?」
エスメラルダ、ルービィもアルディアにそう言うが、やはりどことなくまだ思ったように出来ない事に少し不満気なアルディア。
「まぁ、いずれにしろ助かった。あのままでは身動きがとれなかったからな」
ザフィーアは改めてアルディアに礼を言ったのであった。
海底城大広間にて始まった四柱帝ガブリエルの幹部、トリトン、ポセイドンとの戦い。
戦いはまだ、始まったばかりである……。
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