魂の鼓動

半兵衛三世

第1話いもうと

 「い、いやだよ。無理だよぉ。澪ぉ、俺を置いて行かないでくれよぉ。助かるよ、絶対助かるよぉ。だから死ぬなんて言うなよな。父さんも母さんも、もういないんだよ! 俺の周りにはもう誰もいないんだ!もう独りぼっちなんだよぉ。 せめて澪だけでも俺のそばに居てくれよぉ。お願いだからさぁ」

 俺は大声で泣いていた。

 みっともなく、滂沱の涙を流し狼狽えていた。

 俺は兄なのに、兄なのに妹の前で号泣していた。

 突然のことで心に余裕がない。

 血のつながった、たった一人の妹なのに、それ故に感情がむき出しになっていた。

 年下の妹が死を怖がっている。

 まだ中学生なのだ、当然だろ。

 それがわかっているのに、これからの自分の未来のことしか頭にない。

 自分の先の人生が不安で、暗闇の未来が待っているかと思うと、もう怖くて怖くて仕方がない。

 考えていることは自分のことばっかりだ。

 自分の妹なのに配慮ができない。

 こんなの俺じゃない。

 でも無理なんだ、出来ないんだ。

 ただ泣くことしかできない。

 本当にバカな兄だ。

 そうさ、何もできないやつだからただ泣いているんだ。

 俺はここへきて結局、残されたたった一人の妹さえ守れない、お調子者のただのバカだったと言うことが分かったということだ。


 交通事故だった。

 うちの車は大型トラックと正面衝突した。

 車の前席はぐちゃぐちゃに潰れ、そこにいた両親たちは、人間の形をとどめて居なかった。

ただの肉片だった。

後部座席にいた俺と妹の澪はシートベルトのおかげでかすり傷程度ですんでいた。









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