審判

お城に向かった三人は、早速入口で門前払いを食らった。

言い方に少し問題があるかもしれないが、直接「帰れ」って言われたわけではない。単純に、どうやっても城門が開かないのだ。

「嘘だろ?こんなところで足止めかよ。」

「どっかに破城槌ないかな?」

「あったとしても門がこのサイズじゃあセットで馬も必要になっちゃいますよ。」

「そんじゃ、回り込んで裏口探すか?」

「いや、その必要はない。」

ルイはそう言うと城壁をあっという間に上り、どこからか見つけてきたロープをたらした。

「はい、これでいいだろ?」

「……城門の意味ってなんでしたっけ?」

「俺に聞くな。」

そんなわけで、城の中に入り込んだ一行であった。

案の定と言えばそうだが、城の中もやはり無人だった。

更には、カーペットやランプなどの装飾品の類も一切存在しなかった。

「……だよねー。城門固く閉ざして戦闘を避けるようなやつが城内に兵士配置してるわけないか。」

「とりあえずなにかないか探してみましょう。」


そんなこんなで城を探索することになった三人。殺風景な城の中の様子を描いてもすぐ飽きるでしょうし、今のうちにこの世界のキーワードについてすこし話しておこう。

この世界には『武術』というものが存在する。そして、戦闘においてそれらは主に3つに分類される。

・通常攻撃

・強攻撃

・必殺技

まず通常攻撃について。言うまでもなく最弱かつ最も疲れにくい攻撃だ。持久戦及び隙の少ない相手にはこれで少しずつ削るのがオススメだ。

次に、強攻撃。この世界の人体には大なり小なり『闘気』が蓄えられてる。ぶっちゃけた話HPとはまた別の体力、疲れ果てるまで運動する時に利用するものだと思ってほしい。現実世界では運動すると筋肉に乳酸という物質がたまることによって疲労を感じるが、この世界では『闘気』が尽きると疲れるのだ。長ったらしい説明を聞いてくれて感謝する。そんなわけで、強攻撃とは『闘気』を一撃に集中させ、相手の構えなどを無理矢理崩す技だ。当然ながら疲労は激しいので、乱発はおすすめしない。

最後に、必殺技。著しく『闘気』を消耗する上放つ前、後共にとんでもない隙が発生するため、迂闊に繰り出すことはできない。

以上が、この世界に存在する『武術』全般である。ちなみに、現時点での三人の役割及びレベルはルイ:剣士:13、カール:戦士:10、エミー:魔法使い:9であり、レベル自体はルイのほうが高いが、戦士のほうが『闘気』には恵まれているため、『闘気』の量はカールの方が多かったりする。


作者が(今のところ)くだらない話をしている間に、三人は「謁見の間」と書かれた部屋に来た。

部屋の中には誰も……いた。奥の豪華な椅子に、一人の男が座っていた。

「やっと、来たな。」

男は、威厳に満ち溢れた声で、そう呟いた。そのまま立ち上がり、三人に近づく。

「我が城へようこそ。我がこの城の主、オメガ・ゾルガスだ。」

三人は何も言わなかった。彼はそのまま話を続ける。

「人間がここまで来るのは久しぶりだな。今まで私はここに迷い込んで殺されかけた数多くの人間を救ってきたが……」

そこで急に声が重々しくなる。彼は三人を指差した。

「貴様らは保護などされるべきではない。むしろ、自由を奪われるべき立場だ。貴様らに自由など与えたが最後、ここの住民が滅ぼされてしまうわ!」

彼はそういうと。近くにおいてあった三叉のやりをつかみ、身構えた。

「貴様らに力の差を思い知らせてやろう。今から貴様らの必殺技を私に向けて放て!貴様らがそれで私を倒せたら、見逃してやる。だが、私が勝ったら、貴様らには二度とあのような残虐な行為をしないと誓ってもらうぞ!こい!」

あまりにも急展開すぎる話の流れに、三人は一瞬戸惑ったが、すぐに作戦会議を始めた。相手はこちらが攻撃するまで動かないから、敵の前でも余裕である。

「どうしよう。誰から行く?」

「レベル的には、相手を油断させるためにもエミー、俺、ルイの順番で行ったほうが得策だろうな。」

「わかった。」

話し合いを終えた三人は、もう一度オメガに向かい合った。

「では私から行きます!『極大爆裂エクスプロージョン』!」

バスケットボールサイズの光の玉が杖の先から飛び出し、オメガに向かった。彼のトライデントに触れた光の玉は、謁見の間全てを埋め尽くすほどの爆発を見せた!ちなみに三人はエミーが余力で張った『魔法反射結界アンチマジックシールド』の中にいるので無傷である。必殺技とはいえ全力を出し切れるとは限らないのだ。

煙が晴れる。その中から出てきたオメガは……無傷だった。

「どうした、その程度か?」

あまりの力量差にエミーが愕然とする。

「そんじゃ、次は俺かいくぜ!喰らえ、必殺、『50連壊撃』!」

全身に『闘気』をまとったカールが目にも止まらぬ凄まじい速度でオメガに肉薄し、そのまま目にも止まらぬ速さで連続攻撃を繰り出す!一撃一撃が強攻撃クラスに達する攻撃を、相手に体制を立て直す暇も与えず50連撃。常識ならこれを食らって生きている魔物はそう簡単にはいない……はずだった。

「フハハハ!やるな小僧、我がこれほどの痛みを感じたのは久しぶりだ。」

無傷……というわけでもない。全身のあちこちに切り傷ほどの傷が数え切れないほどの傷ができていた。しかし、それだけだった。致命傷には程遠い。

「まじかよ……俺の全力技であれだけって。」

「ルイさん、諦めて退きましょう。今の私達では太刀打ちできません!」

「そうは問屋が卸さないぞ。」

オメガが指を鳴らす。その途端、後ろにあった扉が閉まる。

「……帰す気もないってか。くそったれ!」

「どうした、やらんのか?」

「どっ、どうしましょう……」

ルイが剣を構える。

「大丈夫だ。」

「どこに大丈夫な要素があるんだよ!死んじまうぞ!」

「カール。君の攻撃であの傷なら、。」

次の瞬間。ルイの身体からとてつもない威圧感が放たれる!ただその場にいると言うだけで、その場にいる全員を服従させてしまいそうなほどの。

「っ、なんという『闘気』……」

「もう遅いよ。この勝負を始めたのは、君だ。」

穏やかに話しながら、ルイは全身に巡らせた『闘気』を剣に集中させる!

「これで、おわりだ!『天・地・破・断』!!」


轟音が、辺り一帯を包んだ。


オメガは、真っ二つになっていた。

いや、彼だけではない。彼らのいた部屋、それどころか、彼らのいた城全てが、綺麗に、まるで天から巨神かなにかが巨大な包丁をおとしたかのように。

「嘘……でしょ……」

「なんなんだよ……この力……」

想像を絶する凄まじい力に、カールとエミーは言葉を忘れていた。

そんな二人をよそにスタスタとかつての城主の亡骸に近づくルイ。ルイは、彼の懐から聖水を取り出した。いったいいつの間に手にいれたのだろうか。

「『偉大なる魂に安らかなる眠りあれ』」

彼がそう言いながら聖水を遺体にかける。二分の一かける二つの遺体は、塵となって消えた。

そのまま彼は進みだした。技の凄まじい負荷に耐えきれず砕け散った大剣を捨て去り、代わりと言わんばかりに、弾き飛ばされたトライデントを手にして。

「いくぞ。」

「おっ、おう。」

あまりにも速すぎる展開に、二人の思考は追いつかず、二人はだまって彼についていくことしかできなかった。


今回の戦利品

獣王のトライデント(オメガを倒した時に入手) 攻撃力:45 獣王が愛用していた三叉の槍。彼の身体能力に耐えられるよう設計してあるので、耐久力が非常に高い。

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