のどかな田舎

街についた。絵に書いたような、のどかな街。

真ん中の道は市場だった。野菜、果物、肉、魚など、たくさんの食材が並んでいる。品揃えは相当良く、魚はついさっき釣り上げたかのように新鮮だし、たまに滅多に見ないような食材も並んでいたりする。ちなみにお値段はお手頃と言える以上に安く、値札には林檎リンゴ一個10ライルと書かれていたりした。(ちなみに我々の感覚に合わせると1ライル≒0.5円ほど、新鮮で傷一つない大きなリンゴだから、圧倒的に安いと言えよう。)

市場を抜けると、非常に大きな木が何本も生えていた。高さとしては、ルイたちに比べてざっと60倍はある。三人の中で一番背が低いのが(自称)ちびっこ魔法少女ことエミーですら150センチあるから、どう見積もっても90メートル前後。

公園もあった。すべり台、ブランコ、シーソーなどをはじめとした遊具がいくつも設置してあり、それらは新品同様ピカピカだった。ひょっとしたらつい最近とりかえたばかりなのかもしれないが。

道には街灯も設置され、公共のゴミ箱や喫煙スペースもある。

絵に書いたような、理想の街だった。

ただ、誰もいなかった。

市場で声を張り上げて客を呼ぶ者も、家から出入りする者も、街の中をかけまわる子供たちも。

誰一人として、街の中にはいなかった。

「……なんだこりゃ」

「「なんだこりゃ」じゃないでしょう!?どう考えてもおかしいですよこんなの!」

「じゃあ聞くけどよ?この街の住人とかはどこいっちまったんだ?普通こういうときって誰か人が待ち構えていて冒険のヒントくれるもんだろ?」

「……RPGに影響されすぎです。それにそんなの私に聞いてもわかりませんよ。」

「だからなんだこりゃって言ってんだよ。」

二人が言い争っている間にルイは剣の看板を掲げた建物に入っていった。

「おい、待てよ。何してんだ?」

「え?」

カールの視界には、無人の店舗を背景に勝手に戸棚の商品を取っているルイの姿があった。

「いいじゃないか、ちゃんと掲示されているお金は払っているよ。」

(そのお金ここまで出会った魔物から奪ったやつだろ。)

そこまで思いかけてカールはある可能性について気づいた。

(まてよ?てことはここまでであった魔物たちはここの住人って可能性も考えられるか?だとしたら辻褄が合わないわけじゃない。今まで魔物ってのはほとんどが知性がないって考えられてきたけどそうじゃないのかもしれない。普段見かける魔物が何も考えていないかのように襲いかかってくるからって先生は言っていたけどそもそもそういうやつ以外結界の外に出ようとしないとも考えられるぞ?いや、だとしたら俺らのやっていることって……)

「どうしたの?なにか考えているの?」

彼が意識を現実世界に戻すと、エミーが彼の顔を覗き込んでいた。

「んん?ああ、いや、なんでもない。」

カールは慌てて彼女から距離を取った。不思議と動悸が速まっている。

「ふーん。ならいいや。ルイが宿屋に止まるからこいって。」

「おう。わかった。」

カールは先程まで考えていたことをすっかり忘れて、慌てて彼女を追いかけた。


宿屋に行くと。ルイがロビーでくつろいでいた。手に持っている雑誌とジュースがどこにおいてあったかは……聞かないでおこう。

「おお、きたな。さっそくだけど鍵二つしかなかったからお前ら相部屋な。」

「お前気は確かか?ふつうこういう時って男女に分かれるんじゃねえの?」

「そうですよ!誰がこんなバカ男子なんかと!不誠実です!」

「うんそうだな。だがバカっていう名詞は確実に不適切だと思うぞ?」

「そうか、ところで部屋の家一個が二階でもう一個が五十階だけど。試しに階段だけのこのホテルでお前らが飯食ったあとに五十階までいけるか見物してみるか?」

二人は青ざめて首を振った。

「じゃあ決まりだな。」


翌日彼らが下に降りてくると、すでにルイは下に降りてくつろいでいたところであった。手にはコーヒーがあったが、牛乳と砂糖を入れすぎてほとんど薄茶色だ。イメージに反して彼は苦いものが苦手であったりする。

「おはよう。きちんと眠れたか?」

「ええ、おかげさまでね……」

そう返したエミーは顔色がすぐれない。目の下にもくまができている。どうやら彼女には効果てきめんだったようだ。

ルイが少し満足げな笑みを浮かべ、すぐに消した。彼女はそれに気が付かなかった。

「俺はぐっすり眠れたぞ。むしろ睡眠時間だけならいつもより長いぐらいだ!あっはっは。」

不自然なほど気にしていないカールに、ルイはこころの中で悪態をついた。

(チッ。このような状況で青少年の男女が異性を意識するにあたってどのような反応をするのか観察してみようと思ったのに。こいつ無神経すぎるだろ。)

「ん?なんか言ったか?」

「いいや?何でも?それじゃ、行くとしますか。昨日外見てたらお城っぽいものへの道見つけてさ、なにかわかるかもだぜ?」

ひと悶着あったあと朝食を取って彼らは外に出た。会計未払いだった。


ここまでの冒険で三人が手に入れたアイテム

武器

黒曜石の大剣(武器屋で購入 30Rライル) 攻撃力:32 剣士用に作られた攻撃力の高い武器。攻撃までの時間が伸びる。→ルイが装備

鉄の斧(武器屋で購入 20R) 攻撃力:26 木の伐採にも戦闘にも使える斧。斧頭が大きいから盾としても使える。→カールが装備

手品師のステッキ(武器屋で購入 25R) 攻撃力:18 えんぴつ二本分ぐらいの長さの棒。魔法を放ってからのリロード時間が短くなる。→エミーが装備

防具

鎧のシャツ(防具屋で購入 35R) 防御力:20 蜘蛛の糸で編まれたTシャツ。鉄の鎧よりも耐久性がある。→ルイが装備

海賊の兜(防具屋で購入 40R) 防御力:30 海賊がつけていたであろう少し古びた兜。これをつけるとバカに拍車がかかる。→カールが装備

ダサいめがね(防具屋で購入 40R) 防御力:25 魔力の流れとやらがわかるようになる。つけるとその人の顔の魅力を打ち消す近視用めがね。→エミーが装備

その他のアイテム

リンゴ×2(市場で購入 10R×2) 8HP回復 熟しきってはいないのか少し酸っぱい気がする。

肉×5(市場で購入 20R×5) 16HP回復 なんの肉なのかはわからないが脂身は少なめ。焼くと回復量1.5倍。

サンドイッチ×3(市場で購入 40R×3) すぐに食べられるおいしいお昼ごはん。少し大きい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る