第2話「知識の代償」



「情報には、必ず代償が伴う」


森川智子の声が、地下バーに響く。


「今日からは私が教える。まずは、情報の価値を知るのよ」


裕也の前には、血に濡れた封筒が置かれている。


「中身は見ない方がいい」森川は静かに続けた。「ただし、この封筒には3日後の市場を動かす情報が入っている。代償は...」


彼女は自分の左手の小指を見つめた。


「私が知恵の賢者になった日、失ったものよ」


裕也は喉が渇くのを感じた。柳生との修行から一週間。手元には2万円。しかし、黒崎からの誘いを断った代償は、すぐに訪れた。


「君の妹さん、私立高校に通ってるんだってね」


背後から聞こえた声に、裕也は振り返る。黒服の男が立っていた。


「このカードの請求、彼女の名義になってるけど...」男はクレジットカードを取り出す。「200万円。返済できなければ、彼女の人生は終わりだ」


裕也の拳が震える。


「そういう時のために」森川がウイスキーを差し出す。「情報という"武器"が必要になる」


氷の音が響く。森川は血塗れの封筒に手を伸ばした。


「選びなさい。情報を得て戦うか、それとも—」


```

[選択を迫られる]

「闇の誘惑Lv.1」を獲得

禁断の情報の価値を

理解し始めた

```




「やはり...見るのね」


裕也は血で滲んだ封筒を開いた。中には一枚の写真。大手商社の副社長が、闇組織のボスと握手を交わす場面が写っている。


「これは...」


「3日後、この商社が中国との100億規模の取引を発表する。株価は跳ね上がる」


森川は氷の浮かぶグラスを揺らした。


「でも、それは表向き。裏では、違法な資金洗浄の契約。この写真が流れれば、株価は地獄まで落ちる」


地下バーの薄暗い照明が、二人の影を壁に映す。


「情報を手に入れた。でも、それを使えば写真の撮影者の命が危ない。使わなければ、妹さんの人生が—」


その時、ドアが開く音。


「やぁ、森川先生」


黒崎が颯爽と現れた。


「今日は株の話じゃない。あの写真、いくらだ?」


森川の表情が強張る。


「写真の値段は、撮影者の命の重さ。それが私のルール」


「ハッ」黒崎が嘲笑う。「命なんて、相場があるだろう?5,000万でどうだ」


裕也の脳裏に、数字が浮かぶ。


商社の株価、現在8,000円。

取引発表で12,000円まで上がる可能性。

写真流出で2,000円まで暴落の可能性。


この変動幅を使えば—。


```

[計算力の覚醒]

「相場予測Lv.1」を獲得

株価変動の本質を

読み解けるようになった

```


「写真は、いくらでも複製できる」


裕也が静かに言った。


「黒崎さん、あなたは写真を揉み消すつもり。でも、その前に空売りで利益を上げる。森川さんも、写真を売って利益を得る」


二人の表情が変わる。


「じゃあ、こうしましょう」


裕也は立ち上がった。まるで別人のような冷徹な表情で。


「私が、もっと面白い取引を提案します」




「私が提案するのは三者の利益」


裕也は冷静に語り始めた。


「黒崎さんには、株で利益を。森川さんには写真代を。そして私には...」


「ほう」黒崎が身を乗り出す。「君に何ができる?手元には2万円しかないんだろう?」


「情報には、タイミングが全て」


裕也はスマートフォンを取り出した。


「この写真、既にネットの闇掲示板に上がっている。ただし、暗号化されていて、3日後の取引発表と同時に解除される」


「なッ...!」


黒崎の表情が強張る。森川は静かに微笑んだ。


「つまり、黒崎さん。あなたが仕掛ける空売りのタイミングも、写真の流出も、全て私の手の中」


地下バーの空気が凍り付く。


「交渉しましょう。黒崎さん、まず妹のカード債務を帳消しに。それと...500万円」


「ハッ!法外な...」


「安いものでしょう」裕也は静かに告げる。「空売りで得られる利益は、最低でも20億」


沈黙が流れる。


「いいだろう」黒崎が折れた。「だが、これで君とは終わりじゃない」


「ええ、始まりです」


裕也は血塗れの封筒を、ゆっくりとテーブルに置いた。


```

[取引の制覇]

「情報操作Lv.1」を獲得

情報の力学を理解し

支配できるようになった

```


3日後。商社の株は急落。黒崎は20億を手にし、森川は写真代を得た。そして裕也の手元には500万円。


「よくやった」


森川が裕也の肩に手を置く。


「でも、これはまだ序章。本当の闇は、これからよ」


彼女は新しい封筒を差し出した。それは真っ黒で、表には「株神の試練」と書かれていた。


(第2章・完)

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