第二章 まるで魔法みたいな結末へ
Episode.5 聖咲シスター/水葵ゴースト
俺、未来望の人生を大きく変えゆる
この
そうだというのに…現在、俺は居場所無い同盟を結んだ彼女とは三日間、言葉を交わさずにいた。
いや、俺も十六夜さんも元から自発的に誰かと話す方でも無い為、話しかけなければこうなるのは必然。
しかし、非日常だった二日間とは打って変わって退屈な日々を送っている。
転校デビューを失敗した俺がクラスで話すのは今だに修だけ、俺と同じく転校生でありながら一躍時の人となった日向さんに関しては、毎日が忙しそうで話す機会は朝の挨拶と帰りの『さようなら』くらい。
ちなみに不忍先輩とは学年が違うのもあり、偶に購買で見掛ける事はあるものの…超能力の話を皆んなの前でする訳にもいかないし、話題も無いのでこちらから話しかけられていない。
今だに向こうからのRAINのメッセージは最初のスタンプとリアクション止まりだ。
なんというか、三日前の事は俺の妄想だったのでは?…と疑いたくなる一方で、前の学校と然程変わらない日常に戻っただけとも認識できる。いや寧ろ、前校ではもっと酷かった。
ただ、俺の人生での考え方が大きく変わったのは事実で、どれもフィクションだと何か物語が始まる兆しだった事は間違えない。
特に不忍先輩の件に関しては、これから俺は「超能力は存在しない!」とオカルト番組で語る科学者を見ては小馬鹿にして、無知だと鼻で笑うだろう。
しかし、そんな俺の日常にも変化が他にあるとすれば…──。
「センパーイ!見つけましたよ!」
とても面倒な後輩が出来てしまった事だ。これがまた厄介な事に癖の強い後輩女子だったりする。
「またお昼をこんな所で『一人で』食べてたんですか?」
「一人を強調するな。…後、一人は別に変な事でも悲しい事でもない、少なくとも俺は寂しいと思った事は無い。一人を笑う者は、何れ独身で泣くぞ」
「何ですか、その妙に生々しい格言は…先輩はそうじゃなくても生涯独り身そうですけどね」
出会ってからというもの、この聖咲夢愛という後輩は、必要とあれば俺に絡んで来るのだ。
昔から年下に懐かれる事は良くあったが、それは飽くまで中学まで話だ。
「そうですね、先輩の孤独を聖職者である私が埋めてあげましょう!そうですね、今日の放課後!
「怪しい宗教勧誘はお断りしています。てか、お前はただのバイトだろ」
「シスターである事に変わりませ〜ん!…というか、シスター系後輩とかレアですよ?もっと優しくして下さいよ」
「シスター系後輩が何か知らんが、そのシスター系後輩さんに謝れ。普段のお前にシスター要素無いからな?」
こんな風に断る事に宗教勧誘して来る…のも、コイツの実家が住宅地の向かい側にある海辺の教会らしく、学校が休みの日や放課後は家のお手伝い基、アルバイトでシスターをやっているらしい。
「真面目な話、先輩って一緒に食べるお友達居ないんですか?」
「いや、一人いるけど…生徒会の用事で忙しいとかでな」
修の奴は、一応だが生徒会の所属らしく…普段サボってるのがバレたとか何とか言っていた。
彼奴、真面目そうに見えるけど、かなり不真面目なんだよなぁ…体育の授業は基本サボるしな。
「あ〜…そろそろですもんね。
「は?…何?その馬鹿そうで頭良さそうな祭り」
「毎回、六月になると世々良木全土で行う文化祭ていうか、学園祭みたいなものですよ。うちを含めた幾つかの高校が一般開放されて、演し物や町中でも色んな人が屋台を出したりで、観光客も沢山来るんですよ」
「へぇー、そんなのあるのか。…それはそうと、俺は青春をアオハルと呼ぶのが若干痛々しくて好きじゃないんだよ」
「奇遇ですね、私も超大っ嫌いです。ですが、色んな研究機関の研究結果やこの町で運用される最新技術の発表会なんかもあるんで意外と面白いですよ」
お祭りか…いつからか俺は、あまり人の多いイベントには参加しなくなった。
まあ、祭り行かずに部屋に籠ってゲームするにしろ、鍵の掛けられない自室に母親がノックと同時に侵入する。
返事の前に入って来るから、ぶっちゃけプライバシーもクソも無い上…それどころか1時間以上、就寝時以外に部屋に居ると機嫌が悪くなる。
後、無駄に家族意識が強いので、基本的に食事は必ず皆んなで、家にいる時は出来るだけ家族と同じ空間に居る。そんな感じ…
友人との約束が先でも、家族の用事より優先しようとすると、後から謝るまで続く長い説教が始まる。
もはや「家族と友達、どっちが大事なの?」は母親の口癖である。「私と仕事どっちが大事なの?」って聞いてくる面倒な恋人かよ…
「ちなみに観光客アップや移住者を増やす目的もありますので、入信者を増やす為に私の家も賛美歌を歌ったり屋台を出しますよ」
「そんな『天使にラブ○ングを…』みたいな事するのか?」
「何で先輩、そんな昔の洋画を知ってるんですか」
「それが分かる時点で、お前も大概だ」
そういや本土に居た時に、コンビニの旅行用パンフレットに…何か、そんな祭りの記事があった気がする。
当時の俺はニュースとか家にある古新聞でしか世々良木の名前を聞く事は無かったが…
「それはそうと先輩、今度の日曜日は空いてますか?」
「正直に言うと年がら年中暇だが、勧誘はお断りだ」
「そうじゃなくて、日曜日に教会のお手伝いをしてもらいたいんですよ」
「何で俺が?…てか、手伝いって何するんだよ」
「うちって孤児院もやってるんで子供達のお世話もしてるんですよ。ですが、その日は何人かシスターさんが出払っていて、私もお手伝いを頼まれた訳なんです」
「へぇ…まぁ、子供は嫌いじゃないし構わないけど」
「えっ、キモっ…先輩にそんな趣味が…まさか変態?」
「人を変質者扱いするなよ!?行くの辞めるぞ?」
「冗談ですって…後、先輩には無理な話かもですけど、もう一人くらい手伝ってくれそうな人がいると嬉しいです」
誰が、ぼっちだ…連れて来れる人間くらいいるわ!…と言おうと思ったが、今の俺は本当にその通りだから辞めた。
多分、修は忙しいだろうし…他は誘える程、仲の良い奴も居ない。
「…まあ、何人かに聞いてみるわ」
「良いんですか?…可愛い後輩の前だからって見栄張っちゃってません?」
「…行くの辞めるぞ」
「あ〜!ごめんなさいごめんなさい!ちょっとしたシスタージョークじゃないですかぁ!」
「いや、1ミリもシスター要素無いからな!」
取り敢えず、昼食を食べ終わり教室に戻ってからダメ元で修に聞いてみたが…「悪い、その日は会長と打ち合わせがあって…」と断られた。
生徒会、休日まで仕事あるのか…例の学園祭が近いからだろうけど。
それに十六夜さんも…まぁ無理だろうな。…だとすれば、日向さんか不忍先輩が頼りだな。
最終手段は妹だが、出来ればこの手は使いたくない。なので不忍先輩にRAINで頼んだんだが、家の用事で拒否された。
本気で申し訳無さそう何度もメッセージで謝られた…やっぱり、あの人って見た目に寄らず良い人なんだよな。
待て、というか…このままでは本当に妹に頼るしかなくなる。
残る日向さんに関してはRAINを交換していないから、直談判しか無い訳だが…
いつも周りにはクラスでもギャルギャルしいメンバーが居て話かけ辛いんだよな。後輩の前だからって見栄を張るんじゃなかった…
「あれ?…アタシらに何か用だったりする?」
「えっ、いや…そう言う訳じゃなくて…」
「でもアタシらの事、見てなかった?」
放課後…どうやら、俺が考え事で無意識にギャル達を(正確にはギャル達の居る日向さんの席を)見ていたのに気付かれてしまった様だ。どうしよう…怪しまれてるよな?
「いや、あれってウチらじゃなくて日向の席見てたんじゃね?」
「あ〜、そういや未来って日向と話してたもんね?」
あれ…俺の事知ってるんだ。いや、転校初日に挨拶したから知ってるだろうけど…俺の事なんて覚えてたんだ。
…いや、でも俺コイツらの名前なんて知らないんだけど…
「…ならアタシが呼んでくるよ、実璃はミクッチの相手してあげててくんね?」
「おっけー!まかせな〜!ぜったい、退屈させないし」
ヤバい、日向さん以上のギャルだ…キャピキャピしてる女子って苦手だ。いや、日向さんは言う程ギャルじゃないか…
「ウチは
「えっ…いや、ちょっと頼みがあってさ。ていうか、ミック…?」
「ん?…未来だからミックだよ。へぇ、なにぃ?…もしかして告白でもすんの?」
「いや、そんなじゃないけどさ…」
そんな風に三羽さんにからかわれていると退屈する暇も無く、直ぐに教室の扉が開く音がした。
そこには日向さんを連れて戻って来た桐沢さんもいた。
「望くん、わたっ…あーしに用があるって聞いたけど?」
日向さん、皆んなの前で私って言おうとして、あーしに言い直したな。
そんな無理せずに最初から一人称:私でいけば、こんな苦労しなくて済んだのに…
「ウチら先に行って校門の方で待ってるね〜!」
「じゃあね〜、ミクっち!」
どうやら日向さんの友人のギャルズは要らん気を利かせたみたいで、先に二人とも教室を出て行ってしまった。現在、教室には日向さんと二人っきりだ。
「それで…望くん、私に用事って何なのかな?」
「あ〜、それなんだが…後輩の頼みで孤児院の手伝いをするんだが、人手が必要なんだよ。それで…」
「分かった!…任せて!」
「えっ、良いのか?用事とか無かった?」
「大丈夫、友達の頼みなら引き受けて当然だよ!」
何だろう…日向さんは友達だからと平然と言って引き受けるとは言うが、それはきっと一般論では無いし…大抵は面倒だからと断るだろう。
俺は友達だとか誰かに言われても、相手を簡単に信じられないんだけど…それでも日向さんが良い人だと分かるから…
「ありがとう、日向さん。本当に助かるよ」
「うん!困った事があったら、何でも頼って!」
えっ…今、何でもって言った!?…って辞めておこう。そう多分、日向さんは良い人だ…
十六夜さんは俺をお人好しだと笑ったが、本当はこういう人の事をお人好しと呼ぶのだろう。
「そうだ、RAIN教えて!聞きそびれてたし…それにやっぱり友達には必要でしょ?孤児院の場所も知りたいし!」
「それに関しては、そうだな…この前も何かと不便だったしな」
その後、日向さんとRAINを交換して校門で少し話しながら一緒に歩いた。なるほど…これが所謂、男女隔たり無く話してくれる系女子…
普通の男子なら優しくされて『俺の事コイツ好きだろ!』って勘違いするんだろうなぁ…
でも、俺は他人を信じるという必要性が分からない。いつか裏切られるのなら、最初から信じない方が最終的に傷付かないで済む。
それに、他人を心の底から信じられていたら…今、俺はこの町に居ないだろう…
「あれれ?…先輩、帰りは一人ですかぁ?」
日向さんが校門で持ってくれていた三羽さんと桐沢さんと帰った後…俺が一人で帰っていると、聖咲に後ろから声を掛けられた。
「…一人だよ、それがどうした?」
普段は途中まで修と帰っているが…態々、「いつも友達と一緒に帰ってるけど今日はソイツ予定があって…」って言うのは、ぼっちの言い訳染てて惨めになるので辞めた。
「いえいえ、先輩が寂しそうな背中で歩いていたので、可愛い後輩が声を掛けてあげようかな…って」
そう言う聖咲はシスター装束だった…と言う事は、一度帰宅してからアルバイト基、家政のお手伝いをしているという事である。
片手にはエコバッグ、何かお遣いでも頼まれたのか…
「はいはい…そりゃ助かるよ。そういや、お手伝いのスケット見つかったぞ。日曜日に連れて行く」
「先輩、助かります!…でも、ぼっちの先輩に力を貸してくれる人なんて居るんですね」
「お前なぁ、一言余計なんだよ」
「一応聞いて起きますけど、特殊な趣味のお友達だったり…?」
「…しねぇよ!しかも女の子だ、安心しろ」
今やクラスでも人気者の日向さん、俺なんかとは比べものにならない程の良い人選だ。まあ修も、お節介焼きだから良い人選だったりするのだが…
「そういや聖咲、お前って俺と一緒で神を信じないんだよな?」
「はい、先輩と一緒って言われると激しく首を横に振りたいんですけど…そうですね、全く信じてません。それがどうかしたんですか?」
「理由とかあるのかな?…と思ってさ。実家が教会って事なら”神を信じなさい”とか”貴方の隣人を愛しなさい”みたいな教育を親から受けてたりするのかと…」
まぁ、さっき言ったの勝手なイメージというか偏見なんだけど…やっぱり教会の娘なら神を信じてそうなものだ。しかし、コイツは俺と同じ無神論者である。
「まぁ、お父さんは私が神を信じてると思ってるんじゃないですか?…でも、神様は見てるだけで何もしてくれないですよ」
隣を歩いている、いつも騒がしい聖咲の声が少し暗くなった気がしたのは…気の所為だろうか?
「それじゃ、先輩!私こっちなんで!…後、日曜日はよろしくお願いします」
「おう、任せておけ。主に頼もしいもう一人が頑張ってくれるぞ」
「そこは先輩じゃないんだ…」
そう言うと夕焼けの中、聖咲は横断歩道を走って行き…渡り切ってから何故かこっちを振り返る。
「あっ、そうだ…可愛い後輩の頼みを引き受けてくれた先輩に!神の御加護があらん事を!」
手を振りながら大声でそんな事を叫ぶので思わず笑みが零れた。さっきの話の流れで良くそんな事が言える…神なんて信じてない癖にな。
Episode.5《END》
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