第2話 試練と神仏の導き

1. 序幕——迫りくる影


「あなたの心が、どこまでこの闇を受け止められるか。焦らずに、ゆっくりと進んでいけばいい。」


蓮真(れんま)の穏やかな声が、夕暮れの校舎にしんと染み渡る。空は茜色から深い藍へと移りゆき、街灯がぽつりぽつりと灯り始める頃。沙羅(さら)は体育館の裏手にある中庭で、そっと息を整えていた。


前世の記憶に導かれ、平家一門の未練を抱えた魂を救済する役目を負った沙羅。しかし、浄化を行うたびに彼女の心には激しい痛みが押し寄せる。魂たちの怨念や後悔を引き受ける“器”としての力は、まだ十分に安定しているとは言えなかった。


「うん…ありがとう、少し落ち着いた。」


ここ数日は小さな霊とのやり取りを続けてきた。祇園精舎跡地だけではなく、かつての平家屋敷の名残や慰霊碑のある場所を、蓮真の導きで訪れる。名もなき武士やその家族、あるいは戦乱の余波で犠牲となった庶民の無念を受け止めるうち、沙羅は自分のなかで確かに“力”が育っているのを感じ始めていた。


だが、それと同時に夜ごと見る夢はさらに鮮明になりつつあった。炎の都が見せる地獄絵図、崩れ落ちる建物、散りゆく命。何より、暗い闇の奥底で佇む巨大な“影”のようなものが、目を凝らすたびに形をはっきりとしていく。


> ――これは、何なのだろう?


一人目覚める深夜。夢の中の光景が尾を引いていて、全身が重い。目を閉じれば“影”が浮かび上がるようで、胸が押し潰されそうになる。蓮真に打ち明けると、彼は苦しげな表情で言った。


「それは平家一門にまつわる怨念が集約した存在だと思う。個別の魂を浄化しても、根底にある大きな負の感情がある限り、いずれそれと正面から向き合わなければならない。」


「そんな存在が、本当にあるの…?」


「平家の悲劇は歴史的にも大きく、かつ人々の記憶に強烈な印象を残している。“祇園精舎の鐘の声”はあまりにも有名だし、滅びの美学として語られがちだけど、その裏で苦しみを抱えたまま行き場を失った思いは膨大にある。長い時を経て、それが一つの意思を持つようになっても、不思議ではないよ。」


蓮真はそう語りながらも、はっきりとした形で“影”がどこに存在するのかは分からないと言った。ただ確かに、沙羅が受け取っているあの夢の残響から察するに、近い将来それは“試練”として姿を現すはずだ、と。


「影が具現化したとき、私はそれに勝てるのかな。あるいは、それを救うことができるのかな…」


沙羅の中で湧き上がる不安。その答えはまだ霧の中だった。


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2. 新たなる導き——仏の縁(えにし)


そんなある日、沙羅と蓮真は放課後の下校途中に、偶然一人の僧侶と出会うことになる。二人がいつものように市街地を抜け、平家ゆかりの寺院を探して歩いていると、古い門の前で佇む僧侶が声をかけてきた。


「そなたたち、少し話を聞いてもらえぬか。」


白髪混じりの僧侶は柔和な笑みを浮かべながらも、その瞳にはどこか鋭い光を宿していた。薄手の袈裟越しにわずかな冷気を感じるのは、沙羅の心の状態を見透かされているような感覚のせいだろうか。見たところ60歳前後に見えるが、背筋はぴんと伸び、大きな数珠がゆらゆらと揺れている。


「こんなところで、どなたですか?」


蓮真が少し警戒しつつも、落ち着いて応対する。すると僧侶は低い声で続けた。


「拙僧は円慈(えんじ)と申す。この寺の住職ではないが、縁あってここに訪れた。どうやらそなたたちも、何かしらの導きでここへ来たのであろう。」


「導き…?」


言葉に引っかかるものを感じた沙羅が、相手の顔を覗き込むように見る。すると僧侶はにこりと微笑み、続けた。


「そなたたちは“平家の魂”を救おうとしているのだろう? 気配で分かるぞ。多くの霊を引き連れ、その悲嘆に心を痛めている様子が伝わってくる。」


思わず沙羅と蓮真は顔を見合わせた。こうした話をいきなりする人物に出会うのは初めてだ。それだけでなく、沙羅たちの行動を見抜いているかのような言葉に、戸惑いも大きい。


「あなたは、私たちのことを知っているんですか?」


「ただ感じるのだよ。拙僧は長年、仏に仕え人々の魂を弔ってきた。表立って霊媒のような真似はしないが、それなりに霊を視る目は持っておる。そなたたちの背後で怨念が渦巻いているのがはっきりと伝わってきてな、それは危ういと感じたのだ。」


僧侶はゆっくりと首を振る。どうやら、沙羅たちが抱える“大きな影”の気配を感じ取っているらしい。


「そのままでは、そなたたちはいつか心を食われるかもしれん。よろしければ、この寺で少し休んでいくといい。拙僧ができる範囲で助言をしよう。」


不意に吹きつける風が冷たい。沙羅は、僧侶の目がまるで自分の内面を見通しているかのような錯覚に陥る。背筋がぞくっとしたが、同時に何かに守られているような安心感もあった。蓮真も黙って僧侶を見つめた後、小さくうなずく。


「わかりました。少しお話を伺います。」


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2.1 廃寺に漂う気配


僧侶に導かれるまま境内へと足を踏み入れると、そこはかつては大きな寺院だったであろう面影を残していた。しかし今は廃寺同然で、堂宇の多くは取り壊され、本堂だけが朽ちかけた姿でかろうじて建っているような状態だ。


「ここは昔、平家一門の残党をかくまったと言われる寺院の跡地だ。詳しい史実ははっきりしないが、記録には少なからず名が残っておる。戦乱の影響で多くの人が流れ着き、この寺で息を引き取ったそうだよ。」


円慈が手にした灯りを頼りに、本堂の扉を開ける。内部は埃にまみれており、長らく人の手が入っていないのが一目で分かった。かつて仏像が安置されていたであろう壇だけが妙に整然と残されているのが印象的だ。


「実は、昨日までは拙僧もここに来る用事はなかった。だが不思議と、夢の中で“ここへ行け”という声を聞いたのだ。おそらく、そなたたちと同じ時期に同じ場所に導かれたのだろう。仏のご縁というやつだ。」


僧侶の話を聞きながら、沙羅は改めて空気の重さを感じ取る。足元を踏むたびに軋む床から伝わる冷たさと、空間に漂う濁った気配。それは、ここに眠る数多くの怨嗟や苦しみの名残なのだろうか。


> もしや、ここにも多くの平家の魂が留まっているのかもしれない。


蓮真も沈んだ表情であたりを見回す。そんな二人の様子を見た円慈は、壇の前に腰を下ろし、静かに数珠を鳴らすように両手を合わせた。


「遠慮はいらぬ。好きにこの場を感じてみるがよい。そなたたちには必要なことじゃ。」


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2.2 本堂での対峙


沙羅は一歩一歩壇へと近づく。蓮真がそっと後ろから支えてくれる感覚が心強い。壇の前に立った瞬間、まるで背後から誰かに抱きつかれたような生々しい気配を感じ、思わず息を呑んだ。


> 「く…苦しい…母上…助けて…」


脳裏に響くのは複数の声。その断末魔にも似た哀訴が、頭の中をぐるぐるとかき乱す。戦で命を落とした者、逃げ場なく病に倒れた者、あるいは愛する人を失って絶望した者…様々な声が混ざり合い、沙羅に流れ込んでくる。


「沙羅、大丈夫? 気分が悪くなったらすぐに言って。」


蓮真が心配そうに呼びかけるが、沙羅は微かに首を横に振る。何度か救済を重ねるうちに分かってきたことがある。“最初の波”を乗り越えれば、その先に魂と対話できる瞬間がある。それは、激しい嵐を抜けた後に訪れる短い静寂のようなものだ。


> ここで踏みとどまるんだ…!


歯を食いしばり、沙羅はぐっと壇に向き直る。目を閉じると、脳裏に映し出される光景――それは、多くの人々が倒れたまま動かない暗い回廊。そして、ひしゃげた扉の下で息絶えた武士や女性たち。かつてこの場所で血と涙が流された記憶が、まざまざと伝わってくる。


> 「どうして、こんなことに…」


思わず声が漏れる。嘆きと苦悶に満ちた魂たちが、何かを訴えようとしている。しかし声は混在しており、一つ一つに耳を傾けるのは難しい。まるで嵐の中で、無数の人々がいっせいに叫んでいるようだった。


そのとき、円慈の低く響く読経の声が堂内を満たし始めた。古い経典を唱えるようで、ゆったりとした節がある。その一語一語が、もつれ合う亡霊たちの声を少しずつ静めるかのようだ。


「拙僧が経を唱えている間に、そなたたちは魂を感じ取り、必要なら呼びかけてやるといい。怨嗟を慰め、成仏を促すのだ。」


その言葉を受け、蓮真も沙羅の肩に手を置き、古い巻物を取り出した。沙羅は深呼吸をして意識を鎮める。こうして複数の霊を一挙に救うのは初めての試みだが、不思議と覚悟が決まっていくのが分かる。


「…苦しんでいるあなたたち、ここで行き場を失っているんですね。今は時代も変わり、当時の争いは終わっています。あなたたちが負った苦しみは大きいけれど、どうか安心してください。誰もあなたたちの存在を否定したりはしない。もう、怯えなくてもいいんです。」


囁くように声をかけると、また頭の中にいくつかの明確なイメージが流れてくる。幼子を抱いたまま行き倒れた母親、武士として戦いに行ったきり帰らなかった夫を待ち続けた妻、平家が滅びゆくのを見届け、心を病んでしまった庶民。さまざまな立場、さまざまな事情、それでも等しく“無念”だけがこの場所に堆積している。


> 「もう大丈夫。ちゃんとあなたたちの思いは、こうして受け止められています。」


沙羅の声が震える。まるで大勢の人々を相手に説得を試みているかのように、言葉を繰り返す。やがて蓮真の巻物の文言が、円慈の読経と重なりあって響くようになった。静かなのに力強い二重奏。すると、堂内の空気が少しずつ柔らかくなっていくのを沙羅は感じた。


> これが“神仏の力”というものなのだろうか…


仏の加護と巫女としての沙羅の力が合わさることで、多くの亡霊が苦しみから解き放たれていく。そんな感覚が一瞬にして広がる。声にならない悲嘆が薄れ、安らぎを取り戻す気配。まるで冷たい闇に一条の光が差し込み、道を示してくれているかのようだ。


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2.3 集団浄化と残る“闇”


読経が止んだとき、本堂には静寂が戻っていた。あれほど濁っていた空気はどこへやら、ゆるやかに流れる清涼感がある。沙羅は床にへたり込み、大きく息を吐き出した。大量の霊の声と感情を受け止めたことで、身体が鉛のように重い。それでも不思議と頭痛は少なく、むしろ心の中に感謝と安堵が芽生えている。


「沙羅、本当に頑張ったね。」


蓮真はそっと沙羅の背中を支える。沙羅の額にはじんわりと汗が浮かんでいたが、表情にはうっすらと達成感が宿っていた。円慈はそんな二人を眺め、再び穏やかな笑みを浮かべる。


「見事なものだ。拙僧の読経はただの手助け、真に魂を解放したのは、そなたたちの言葉と想いじゃ。」


「ありがとうございます。あなたがいなかったら、ここまで落ち着いて対処はできなかったと思います。」


沙羅が礼を述べると、円慈は首を横に振る。


「それは仏の導き。拙僧もまた、その仲介に過ぎぬ。だが、一つ忠告しておく。今の浄化で多くの霊が救われた一方、より濃い“闇”を呼び起こしてしまった可能性もある。」


沙羅と蓮真は目を合わせ、息をのむ。円慈は壇の奥の暗闇を見つめ、言葉を続ける。


「そなたたちが多くの魂を救うほど、逆に言えば強大な“怨嗟”は、最後の砦のように凝縮されていく。鬼火が燃え盛るがごとく、小さな燈火は消えるが、大きな炎は際立っていくということだ。おそらくそれが、そなたが夢に見る“影”じゃろう。」


やはり、あの“影”は避けては通れない存在なのだ。沙羅は唇を噛みしめ、胸の奥にざわつくものを感じる。しかし、同時に不思議と恐怖だけではない。“いずれ対峙しなければならない”という覚悟が、確かに胸の中で形を取り始めていた。


「私たちはその“影”をどうすればいいのでしょうか。悪霊のように祓ってしまえばいいんですか?」


蓮真が率直な疑問を口にする。すると円慈は「難しいところだ」と苦笑いを浮かべる。


「そもそも、完全なる“悪霊”というものは滅多にない。生前の無念や悲しみが積もりに積もって闇を成しているのが、ほとんどじゃ。だから祓うだけでなく、“癒し”が必要なのだ。拙僧はこれを“導き”と呼ぶ。そなたたちがやっているように、相手の想いを受け止め、光へ誘うことが大事になる。」


僧侶の言葉は、どこか先ほど読経をしていたとき以上に力強く、沙羅たちの胸に響いた。浄化と癒し。大きな怨嗟を祓い去るのではなく、その根源を救わなくてはならないのだ。それはつまり、苦しむ魂の本質的な癒しということだろう。


「拙僧がいつも居るわけではないが、困ったときは思い出してくれ。仏がいつでもそなたたちを見守っていることを。」


そう言い残し、円慈は本堂の奥に消えていく。まるで隠者のように、余計な自己主張をすることなく、その背中からはただ厳粛な気配が漂っていた。


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3. 心の迷いと友人の想い


廃寺での集団浄化を経験した沙羅は、自分の能力がひとつ大きく成長した実感を得た。とはいえ、その分だけ負担も増えている。放課後に霊を救済し、深夜に起きる悪夢で心が擦り減り、それでも学校では普通の高校生として振る舞わなければならない。


そんな彼女の異変に、親友の亜美が気づかないはずはなかった。ある日、昼休みに屋上へ行こうとしていた沙羅を呼び止め、真剣な表情で問いかける。


「ねえ、沙羅。ちょっと前から様子がおかしいんだけど、何かあったの? 私に言えないことなの?」


沙羅はぎくりとして振り返る。亜美はクラスメイトの中でもとりわけ沙羅と仲がよく、修学旅行中も一番一緒に行動していた相手だ。だが、だからこそこの“超常的”な話を打ち明けづらい。


「…ごめん。心配かけちゃったよね。でも、大丈夫だよ。ちょっといろいろ考えることが多くてさ。」


曖昧な言葉を選んで笑おうとすると、亜美は明らかに不満そうな顔をする。


「大丈夫に見えないよ。いつも夜更かししてるみたいに目の下にクマ作って、放課後は蓮真くんとどこか行くことが多いし。私たち最近ほとんど一緒に帰れてないじゃん。」


鋭い追及に、沙羅は言葉を失う。確かに事実ではある。だが、蓮真と一緒に霊を救うために奔走していることを話しても理解してもらえるかどうか…。


> 亜美は優しいし、きっと頭ごなしに否定はしない…でも…


迷っていると、亜美が小さく息をついて言った。


「私ね、沙羅が辛そうにしてるのが一番嫌なんだ。私たち、ずっと一緒にいたじゃない? 沙羅が困ったときは、私が助けたい。だけど、今の沙羅はすごく遠くに行っちゃったみたいでさ。もし、言えない理由があるなら、無理には聞かない。だけど……」


言いかけて亜美は視線を落とす。もどかしい沈黙。沙羅は胸が痛むのを感じながら、精一杯の言葉を絞り出した。


「ごめん、亜美。まだうまく言葉にできない。でも、信じてほしい。私のせいで亜美を傷つけたいわけじゃないんだ。ちゃんと、落ち着いたら話す。約束する。」


亜美は微かに肩を震わせていたが、やがて「うん」とだけ答えて沙羅を見つめた。そこには疑念や怒りではなく、深い心配と友情の情が見て取れる。その瞳に向き合うと、沙羅は一瞬、こみ上げる涙をこらえるのに必死だった。


> いつか本当のことを話せるときが来るだろうか…


自問しながら、沙羅はそっと亜美の手を握る。親友の手は、まだ暖かく柔らかい。だが、あまりにも違う世界に足を踏み入れてしまった自分を、正直どう受け止めていいのか分からない。そんな思いで胸がいっぱいになる。


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4. 影の予兆——不穏な気配


翌週の夜。沙羅は普段より早めに就寝したが、深夜に強烈な悪寒で目を覚ました。全身がこわばり、目を開けることすら億劫だ。にもかかわらず、まぶたの裏には鮮明な映像が浮かび上がる。燃え盛る炎の中に、黒い塊のような巨大な影がひしめいている。輪郭ははっきりしないが、それが形を成そうとしているのが分かる。


> 「……ッ!」


思わず短く悲鳴を上げ、跳ね起きる。あたりは静まり返った夜中の自室。聞こえるのは自分の荒い呼吸音だけだ。心臓がバクバクと鳴り、痛みすら感じるほどだ。


> さっきの“影”、今まで見ていたものよりもずっと明確だった…


重たい空気が部屋を包む。まるで夢から覚めたというより、ただ別の暗闇に移行しただけのような感覚。いてもたってもいられず、スマートフォンを手に取り蓮真にメッセージを送る。


「今、すごく嫌な夢を見た。影が形を成し始めていて、胸騒ぎが収まらない…」


しばらく待つと、意外にもすぐ返信が返ってきた。


「僕も同じような夢を見たんだ。やはり“影”が近づいてきてるのかもしれない。落ち着いて、少し深呼吸して。明日、早めに会って話そう。」


蓮真も同時刻に目を覚ましていたという。そこまでシンクロするとは、やはりただの夢ではない。前世や霊的な繋がりが、二人を通して“影”へと引き合わせようとしているのだろうか。


沙羅は急激な恐怖と不安に押し潰されそうになるが、蓮真の存在がどこか救いになっている。スマートフォンを枕元に置き、なんとか再び瞼を閉じる。眠れるかどうか分からないが、身体を休めなければ明日がしんどい。


「大丈夫、きっと…大丈夫。」


自分に言い聞かせるように呟き、再び身を横たえる。その言葉はまるでおまじないのように儚いが、確かな温もりを孕んでいる気がした。


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5. 試練への準備——神仏の導き


翌日の放課後、沙羅と蓮真は連絡を取り合い、再びあの廃寺へ向かうことにした。円慈の姿を求めてではなく、あそこにまだ何か“ヒント”が眠っている気がするからだ。学校を出るころには、重たい雲が空を覆い、いつ雨が降ってきてもおかしくない気配だった。


廃寺に到着すると、風がうなるように吹き抜け、門の軒先がガタガタと音を立てている。前回に比べて一層、空気の淀みが強いように思えた。


「…嫌な感じがする。」


沙羅がぽつりと呟く。蓮真も険しい表情でうなずいた。どうやら、ここにも“影”の片鱗が迫っている可能性がある。手入れのされていない境内を進み、本堂へ足を踏み入れようとすると、そこには先客がいた。


「やはり来たか。」


声の主は円慈だった。前回とは異なり、彼は堂内の壇の前にはいない。入口の暗がりに立ち、二人が来るのを待っていたように見える。


「どうして、ここに? 何かあったんですか?」


蓮真が尋ねると、円慈は静かに目を伏せた。


「拙僧も昨夜、禍々しい夢を見たのだ。かつて祈りを込めた多くの魂が悲鳴を上げているような、そんな夢でな…。ここに来てみれば、普段より強烈な怨嗟が渦巻いているのを感じた。どうやら、前回の浄化で“闇”がより凝縮されたのかもしれん。」


やはり、あの“影”は形を持ち始め、ここへも侵蝕しているのだろうか。重々しい空気が三人の間に立ちこめる。雨の匂いを含んだ風が、堂内へ吹き込み、埃をさらうように舞い上げた。


「拙僧が言えることは一つ。そなたたちが呼び寄せているのではなく、“影”の方がそなたたちを欲している。理由は明白。光を求めるからこそ闇は際立つのだ。」


「影が、私たちを求める…?」


沙羅は首をかしげる。それではまるで、闇自体が救いを求めているかのようでもある。だが、その正体が明らかでない以上、どう対応すればいいのか分からない。すると円慈はゆっくりと沙羅の方へ近づき、大きな数珠を手に持ち上げた。


「拙僧の数珠だ。長年、祈りを込めてきたもの。多少の加護は得られるかもしれん。必要とあれば持っていくがいい。」


そう言って差し出された数珠は、木玉がいくつも連なった素朴な作りだが、手に取るとわずかに暖かい。古い寺院の仏像に触れたときのような、不思議なぬくもりが伝わってくる。


「これを私に…?」


「そなたの前世は平家に仕えた巫女だというが、今はまだ修行が足りぬ。少しでも助けになればと思う。仏と神は別物と思われがちだが、そもそも多くの神社仏閣は互いに習合していたのだ。何かあればその数珠を通して拙僧や仏の力を思い出せばよい。」


沙羅はありがたく頭を下げ、数珠を両手で大切に受け取る。蓮真はその様子を見守りながら、やや安堵した表情を見せた。


> これで少しでもあの“影”と対峙できるなら…


そう思うと、沙羅は指先に力がこもる。重たい空気の中で、その数珠だけが微かに光を放っているようにも見えた。


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6. 闇との邂逅——試練の夜


廃寺を後にした頃には、空はすでに夜の帳が降り始めていた。沙羅と蓮真は、そのまま別れるのも不安であったため、駅前のカフェで少し時間を潰してから帰ることにする。店内は平日の夜ということもあり、客はまばら。二人は隅の席に腰を下ろし、温かい飲み物を手にささやかな会話を交わす。


「円慈さんからもらった数珠、すごく不思議。持っていると、少し落ち着く感じがする。」


「彼は本物だと思うよ。僕らが浄化を進めることも、かなり前から分かっていたみたいだし。まさに神仏の導きってやつなのかな。」


そんな他愛ないやり取りの中にも、二人の胸には“影”の存在が重くのしかかっていた。いつ、どこで、どうやって姿を現すか分からない。もし突然現れれば、沙羅も蓮真もまだ完全には対処の手段を持ち合わせていない。


> でも、逃げるわけにはいかないんだよね…


「私、最近思うんだけど、“影”ってただの怨霊じゃない気がするの。集団浄化のときもそうだけど、彼らはただ救われたいんだと思う。一度は滅び、歴史に埋もれてしまった平家一門の想い。それが行き場をなくして塊になっているような…。」


沙羅は考え込むように言葉を紡ぐ。それは、毎晩見る悪夢の中で感じ取ったものでもあった。絶望の叫びのようでいて、どこか“助けて”と訴えかける微かな懇願が混ざっているのだ。


「もしそうだとしたら、僕たちがすべきことは決まってる。祓うというより、癒すこと、受け止めて昇華すること。だけど、それには大きな犠牲が伴うかもしれない。」


蓮真の声は苦しげだ。自分がどこまで沙羅を守れるか、あるいは支えられるかに不安を抱えているようにも見える。


「私たち、二人で一緒に頑張ろう。円慈さんや数珠の力も借りて、絶対に、平家の悲しみを終わらせる。」


そう言った瞬間、店の外で大きな落雷が轟いた。光が一瞬カフェの窓を白く照らし、続いて耳をつんざくような音が響く。驚いて店員や他の客がざわつき始めるが、沙羅と蓮真は胸騒ぎを覚える。


> まるで、何かが呼び起こされたような…


「そろそろ帰ろう。これ以上遅くなると、家の人も心配するし。」


立ち上がった二人は、窓の外の激しい雨を見つめる。雷鳴はまだ遠くで唸っているようだ。傘をさして駆け足で駅へ向かい、それぞれ帰路に就くことにした。


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7. 闇の襲来——激突と神仏の加護


夜半過ぎ。沙羅が家族と夕食を済ませ、自室で課題をしていると再び雷鳴が近づいてきた。断続的な雨音が窓を打ち、空気はざらつくような緊張感を帯びている。時計を見るとすでに23時を回っていた。


> 今日は早く休まないと、明日がきついな…


そう思いながらも、心は落ち着かない。先ほどから、胸の奥がぞわぞわとして嫌な予感が拭えないのだ。ふと、傍らに置いた円慈の数珠を手に取ってみる。ほんの少し温かい感触が手のひらに伝わり、気持ちが和らぐようだ。


> 大丈夫、きっと乗り越えられる…


そう自分に言い聞かせ、ベッドに横になる。ところが、瞼を閉じた瞬間、まるで闇に引きずり込まれるような感覚に囚われ、思わず声を上げそうになった。必死に意識を取り戻そうとするが、深い眠りに落ちるかのように感覚がぼやけていく。



いつの間にか立っていたのは、広大な荒野のような場所。黒い空には月が見えず、遠くで閃光が走るたびに地面が震える。辺りを見回すと、燃え上がった建物の残骸が点在し、赤黒い焔があちこちで蠢いている。足元には無数の矢が散乱し、幾筋もの血の跡が地面に染み込んでいるようにも見えた。


> 「また…この光景…」


何度も夢で見てきた、平家滅亡の戦場を思わせる場所。だが、今回はこれまでとは比べ物にならないほど生々しく、息苦しいほどの怨念が肌にまとわりついてくる。


そのとき、視界の隅に巨大な“影”が動くのが見えた。輪郭は黒い霧のように揺らめいているが、うっすらと人間の姿のような形状を伴っている。まるで無数の人々が一つの塊になったかのような…恐ろしく巨大なシルエット。


> 「あなたが……“影”?」


問いかけようとするが、声にならない。すると、その影はどろどろと低い呻き声のような響きを発した。


> 「…ワレラハ…ミナ…ウラマレテ…キエタ…」


無数の声が重なり合ったような断片的な言葉。恨みを抱え、忘れ去られたと嘆いているのだろうか。影の内部には、数えきれないほどの魂が取り込まれているように見える。それらが統合され、“一つの意思”となって現世に干渉しているのだ。


「違う! あなたたちは誰にも忘れられてなんかいない。私たちはずっと、あなたたちを想い、あなたたちの痛みを感じ続けてる! だから――」


叫ぶように伝えた瞬間、影がうねるように動き、沙羅の方へ迫ってきた。あまりの気迫に、身体が硬直し逃げ出すこともできない。どろりとした漆黒の波に呑み込まれる――そう思ったとき、沙羅の手元で数珠がかすかな光を放った。


> あ…円慈さんの数珠…


握りしめると、その光は一気に広がり、沙羅を包み込む。影は沙羅に触れようとするが、光の壁に阻まれるように弾かれ、悲鳴めいた音を上げた。すると、別の光が遠くから走り寄ってくる。


> 「沙羅!」


聞き慣れた声――蓮真だ。彼の姿が光の中から現れ、沙羅の手をしっかりと握り返す。どうやら、同じように夢の中で引きずり込まれ、ここへ駆けつけてきたのだろう。


「大丈夫、僕がいる。今こそ二人で、影を救うんだ。」


蓮真が持つ巻物もまた淡い金色の光を放ち、影を静かに照らしていく。二つの光が合わさり、影を取り巻く闇を少しずつ浄化するかのように、黒い霧が揺らめく。だが、怨嗟の総体である影は容易に崩れる気配を見せない。


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7.1 闇の本質


「私たちは、あなたを否定しない。あなたこそ、平家の悲しみそのもの。だけど、その苦しみを永遠に抱えていたくはないんじゃないの?」


沙羅は光の壁の向こうにいる影へ、必死に呼びかける。これまでの救済でもそうだった。魂が求めているのは“祓われる”ことではなく、“分かってほしい”という切なる願い。そして、最期には“安らかに眠りたい”という想いだ。


「忘却を恐れているなら、私たちは絶対に忘れないよ。あなたたちの物語は、平家物語として語り継がれ、祇園精舎の鐘の声として刻まれている。多くの人がその悲劇を胸に抱いているんだ。」


その言葉に影が微かに動揺したように見える。うねるように渦巻く闇の表面に、無数の人間の顔が浮かび上がり、苦しそうに口を開いている。そこに蓮真がそっと一歩踏み込む。


「これ以上、自分を責めなくてもいい。あなたたちが成せなかったこと、守れなかったこと、それは決してあなたたちだけの罪じゃない。時代の流れがそうさせたんだ。」


巻物を広げ、蓮真は強い意志で影を見据える。その目には恐怖ではなく、慈しみの色が宿っていた。すると、影の内部から一筋の光が滲み出るように揺れた。


> 「…私たちは…本当に…救われるのか…?」


かすかな声が耳に届く。多くの魂が融合した存在である影が、沙羅たちの言葉に応じ始めたのだ。沙羅は頷き、さらに数珠を握りしめる。すると、円慈の読経が遠くから響いてくるような錯覚を覚える。まるで時空を越えた場所で、僧侶が背後から援護してくれているかのようだ。


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7.2 記憶の解放


光の中で沙羅の心に映し出されるのは、平家全盛の都の姿。貴族や武士が行き交う賑やかな街、華やかな装束を纏った人々の笑い声。一方で、その栄華の裏で苦しむ民衆や、戦へ駆り出される若者たちの悲嘆。やがて訪れる合戦の嵐。火の海と化す都、散りゆく命――。


> そこには巫女としての自分の姿もあった。


琵琶を奏でながら人々の無事を祈り、傷ついた者を癒すために奔走する少女。それが沙羅の“前世”なのだろう。必死に祈る姿、涙を流しながら武士たちの最期を看取る姿が、フラッシュバックのように心に押し寄せてくる。


> 「助けたいのに、私には何もできない…!」


そのときの無力感が、現在の沙羅と重なる。だが、今は違う。今の自分には蓮真がいて、僧侶の力もある。何より、自分を信じてくれる人々がいる。少しずつでも、魂を救ってきた事実がある。


> もう、あの頃のように一人じゃない――


沙羅は前世の自分を抱きしめるようなイメージを思い浮かべ、そっと言葉を紡ぐ。


「大丈夫。今度こそ、あなたたちを見捨てない。平家の無念も苦しみも、私たちが受け止める。だから、一緒に先へ進もう。」


その瞬間、影の輪郭が激しく揺らぎ、まばゆい閃光が走った。無数の魂たちが一斉に叫んだような響きが世界を満たし、しばらくして静寂が訪れる。蓮真も巻物を置き、目を閉じて光を感じ取る。


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7.3 闇の昇華と穏やかな朝


視界が晴れると、そこにはやわらかな白い光だけが漂っていた。黒い霧は消え、影の気配もほとんど感じない。代わりに、無数の光の粒が舞い散るように宙を舞い、やがて天へと昇っていく。


「…救われた、のかな。」


沙羅はまだ現実味を持てないまま呟く。身体は重く、今にも崩れ落ちそうなほどの疲労感があるが、心はとても軽くなっている。不思議な感覚だった。


蓮真がそっと沙羅の手を握り、「やったね」と笑顔を見せる。二人が見上げる空には、いつの間にか夜が明けていた。夢の中なのに、朝日が差し込むように感じる。暖かい光が二人の肩を照らし、穏やかな風が頬を撫でていく。


> これが…“影”の最期なのか。平家の魂たちが、ようやく解放されたということなのだろう。


沙羅は胸に込み上げる何かを抑えきれず、涙を流した。安堵と哀愁、そして大きな使命を果たした充実感が混ざり合う涙だ。蓮真もまた、静かに目を閉じ、一筋の涙をこぼす。


「平家は滅びても、物語として語り継がれ、こうして人々の記憶に残り続ける。決して完全に忘れられはしないんだ。だからこそ、いつかその哀しみが影を生み出すこともある。だけど同時に、それを導く力を持つ人間もまた現れるんだね。」


そう言いながら、蓮真は沙羅と目を合わせる。二人は微笑み合い、そっと手を取り合った。長い夜が明けようとしている。もう一人ではない、と感じる。


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8. 明け方の現実へ——神仏の温もり


砂時計が零れ落ちるように意識がふっと遠のき、次に沙羅が気づくと、自室のベッドに横たわっていた。窓の外は明るく、時計の針は朝の5時を指している。隣には転げ落ちたスマートフォンがあり、画面には蓮真からのメッセージが届いていた。


「おはよう。僕も今、目が覚めた。同じ夢を見ていたみたいだね。影は消えた。お疲れさま、本当に頑張った。」


少し笑みがこぼれる。まるで一晩中戦っていたのが幻だったかのようだが、確かな疲労感が身体に残っているし、胸には大きな達成感があった。さらに手のひらを見ると、昨夜円慈から受け取った数珠を握りしめていた痕跡が残っており、玉の形がわずかに指に跡をつけている。


> これは夢じゃない。確かに私はあの“影”と向き合い、平家の魂を救ったんだ。


そう思うと、ほっとしたような、寂しいような、不思議な気持ちになる。長い戦いが終わった安心感と、物語が一つの区切りを迎えたような感覚。


「祇園精舎の鐘の声…もう、頭の中でずっと響いていたものが遠くに行ってしまった感じがする。」


ベッドから身を起こして、窓を開け放つと、朝の新鮮な空気が冷たく流れ込んできた。夜明け前に降った雨の名残が、路面をしっとりと濡らしている。遠くの空には虹の一端が見えたような気がした。


---


終幕——新たな旅路の始まり


学校では、いつもと変わらない日常が始まる。クラスメイトたちはテスト勉強や進路の話でもちきりだ。沙羅も、表面上は“普通の高校生”として会話に参加しながら、心の奥で大きな変化を感じ続けていた。


休み時間、亜美が沙羅の席にやってきて小声で尋ねる。


「今日、なんだか調子いいみたいじゃん。顔色も良くなったし…。」


「うん、昨日はぐっすり眠れたの。心配かけてごめんね。」


沙羅は素直にそう答え、微笑む。亜美も「そっか、良かった」と安心した様子だ。いつか、すべてを話せる日が来るかもしれない。だけど今は、この小さな平和を大切にしたいと思う。


放課後、蓮真と正門を出て歩きながら、ふと沙羅が呟いた。


「平家の魂は、やっと救われたのかな。あの“影”はもう現れない?」


「完全に消えたわけじゃないと思う。歴史というのは、いつでも悲しみを内包しているし、人々が忘れることもあれば、再び思い出すこともある。だから、またいつか別の形で生まれるかもしれない。でも、僕たちが今回体験したことは無駄にはならないよ。」


蓮真の言葉に、沙羅は小さくうなずく。確かに、歴史から哀しみがなくなることはないかもしれない。それでも、人々が誰かの痛みを理解しようとする限り、その哀しみは“救い”へと向かう道を見つけられるだろう。


> 「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり…」


平家物語の有名な一節が、ふと心の中で響く。そして沙羅は思う。無常であるからこそ、過去の哀しみを知り、今の自分を大切にできるのだと。栄枯盛衰の摂理を嘆くだけではなく、その中で人々の想いや魂が繋がっていることを実感したからこそ、彼女はここにいる。


「蓮真、私たちはこの先も、同じように歴史に埋もれた魂を救うのかな。」


「そうだね。僕たちにはその力があるし、きっと使命がある。けど、今は少し休もう。大きな仕事を終えたんだ。円慈さんにもお礼を言いに行かなくちゃ。」


蓮真が言う通り、この数週間は激動の日々だった。まずは自分たちが落ち着いて、ちゃんと現実を生きることも大事だろう。沙羅はそう思い、深呼吸をした。


> ――いつかまた試練が訪れるかもしれない。


でも、今度は怖くない。神仏の力、円慈の数珠、そして大切な仲間たちがいる。何より、自分自身が前世で未完だった“導く力”を少しずつ身につけ始めている。それを感じ取れるだけでも、沙羅の心には確かな希望が宿っていた。


「祇園精舎の鐘の声、ずっと耳に残ってたけど、今はすごく穏やかな響きに感じるんだ。」


そう言って沙羅は柔らかく笑う。かつては重苦しく聞こえた無常の鐘の音が、今ではむしろ優しい導きとして響いているのだ。蓮真も静かに微笑みを返した。


「その鐘の音を、君はもう忘れない。僕も一緒に忘れない。だから、彼らは永遠に生き続ける。」


桜の時期も遠に過ぎ、街路樹の緑が陽光に揺れている。二人は通り過ぎる車や人々の流れを縫うように歩きながら、それでもどこか別世界を共にする者同士のように見えた。知らず知らずのうちに手を取り合うその様は、これから続く長い旅路を示唆していた。


かくして、平家の魂を象徴する“影”との初めての大きな戦いと救済は、沙羅と蓮真のもとに一つの終わりと、新たなる始まりをもたらした。今後、どのような運命が待ち受けているのかは分からない。だが、二人はもう迷わないだろう。歴史を越えて響く魂の声に耳を澄ませ、必要とあれば手を差し伸べる――それこそが沙羅の宿命であり、使命なのだから。



つづく

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