第26話:魔素
珍客が来てからさらに1ヶ月。エリィはダンジョンの4階層を踏破するぐらい成長し、数は少ないが並列軌道もこなし始めた。初めのうちは、物陰から飛び出してくる魔物にあたふたしていたので俺が魔物の場所を指示していたが、それも最初のうちだけ。
魔力布衣の力や、
虫相手でもまだ硬さが残るし、4階層の魔物でも怪我をする。この様子だと、ダンジョンボスに挑ませるのはもう少し先になるかな。
ブルーはタダ飯ぐらいにさせまいと、最近はエリィとの修行に付き合ってもらっているのと、湖にいる魚や貝などの
食材が増えたことに一番興奮したのはエリィだ。夕飯もそれにつれ豪華になっていき、生魚ばかり食べていたブルーが感動していた。こいつはほんとよく食うな。まぁエリィの飯が美味いのは否定しないが。
そして魔法もある程度覚えたので、とうとうこの修行に手を出す時が来た。魔素の扱い……正直、エリィならすぐに覚えるというか、もう身につけている。その認識をさせて、さらに魔法の発動にプラス補正をしていくのだ。
今日はあいにく曇り空だが魔素の練習には問題ない。それでも、雨が降らないことだけを祈ろう。
「エリィ、今日は魔素を覚えてもらう」
「はい師匠!」
「まず、最近魔法を使ってて違和感を感じたことはないか?」
「違和感……ですか?」
魔力と魔素は厳密にいえば別物だ。魔力が生物の持つ生命エネルギーとすれば、魔素は自然界に存在する自然エネルギー。自然エネルギーはそこら中に存在してはいるが、目に見える存在ではない。だが、二つとも同じエネルギーではあるので、お互いに干渉し変化することができる。
魔力を扱いに長けた者なら、その違和感を感じ取れる様になる。ただし、本当にごく僅かな違和感のため、大体は認識できていない。
「むむむ。あ、そういえば……」
エリィが言うには、いつもの修行で込めた魔力量よりもごく僅かに多くの魔力が注がれた魔法が発動したことがあるらしい。それはダンジョンで一番最初に感じたとの事で、それからアジトに戻ってきても同じ様な感覚がたまにあったらしい。
ただ、その違和感もたまにしかない上にごく僅かなので放っておいたとか。
「よろしい。実は、その違和感こそが魔素を扱っていると言う事だ」
「え、そうなんですか?」
「うむ。まずはこのファイアボールを見て、違いに気付けるかな?」
俺は両手を前に出して二つのファイアボールを空中に出す。一つは魔力を多く含み、もう一つは魔素を多く含んだ状態。側から見れば同じファイアボール見えるはずだが、じっくりと観察すれば違いが出てくるはずだ。
エリィも目の前に出されたファイアボールに向かって、魔力凝視を使い
しばらく観察し続けていると、エリィが何か気付いたのか口を開いた。
「師匠、こっちの方が……魔素が多いとかですか?」
「……」
「……」
「……正解だ」
「やったぁ!」
しっかりと魔素の複有数が多い方を選んできた。パッと見ただけでは全く同じに見えたとしても、凝視すればどこまで魔力が魔素を干渉させてるかがはっきりとわかるはずだ。
今度はこれを自身で把握してもらい、魔法を発動するときにもコントロール出来る様になればいい。次は魔素を感覚として認識させる修行だ。
「次はまず座って心を落ち着けて。初めて魔力を操った時みたいに、心を鎮めて周りと同化する様に」
「……はい」
「そしたら身体を覆っている魔力を全て閉じる様に動かす。微弱な魔力すら残さず、身体の中心に全ての魔力を留める様に」
最初の修行と違うのはここだ。今までは魔力を感知する事を中心に動かしていたが、魔素に関しては身体を覆う魔力が初めのうちは弊害となる。魔力を持つものは誰しも身体から魔力が滲み出ており、その栓をしっかりと閉じる事で真の意味で自然を感じることが出来るのだ。
エリィも目を瞑って集中して魔力を体内に抑え込んでいる。すると、自身の魔力だけでなく、自然に溢れている魔素の流れをぼんやりと感じ取れるはずだ。
「し、師匠……あの……」
「大丈夫だ。怖がる必要はない」
「はい……。でも、いつもと違う何かがそこら中に……」
「そうだ。今エリィが心の目で見ている感覚、それが魔素だ」
大地に根付く魔素、大地から噴き出る魔素、風に乗って運ばれる魔素、湖に浮かぶ魔素、俺とブルーの周りに浮かぶ魔素。目に見えない魔素はそこら中にに存在し、常に自分の側にいるのだと感じさせてくれる。
エリィもその魔素の感覚を感じ取り、自然の凄さに圧倒されているのだろう。よく集中しているのがわかる。
「エリィ、その魔素を魔力で捕まえてウィンドボールを発動させてごらん」
「はい」
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