アイドルってのは伊達じゃない!

みららぐ

0:無題




頭が酷くボーっとする…。

…もしかして私は、死んでしまったんだろうか…。



滅多にないほどの大雨になってしまった、大好きな男性アイドルの野外ライブ。

聞き慣れた曲が大きな音で会場に鳴り響く中、私は自分の真下にいる茫然と見つめていた。


会場内の地面に、ただただ雨に打たれながら仰向けになって寝転がる自分の姿は、物凄くショッキングな光景だった。

目の前にいる「自分」の姿をした彼女は、見るからに顔色が悪くぐったりしている。


ライブ当日になって熱を出してしまった私だから、一緒に来てくれた幼馴染にあれだけ「今日はやめとこう」と言われていたのに、無理に来たせいでバチが当たったんだろうか。

「せっかくライブチケットが当たったんだから!」と言うことを聞かずにここに来た私への天罰かな。


…なんて考えているうちに、大雨の中で微かに「みーちゃん!」という声が聞こえて顔を上げた。

そこに只ならぬ雰囲気で駆けつけて来たのは、今日私の付き添いで一緒にライブに来てくれた幼馴染の「かずくん」の姿。


私はしばらく自分の上に乗っかっていたけれど、かずくんが来るとその上から体を退かす。

だけどかずくんは私の存在には目もくれず、目の前の「もう一人の私」を抱きかかえて必死に彼女に呼びかけた。


「みーちゃん!しっかり!起きてみーちゃん!」


「かずくん…なんで?」


この雨音のせいなのか何なのか、思わずそう呟く私の声は、何故か目の前のかずくんには届いていない。

私はこの時、酷くボーっとする頭で、奇妙な光景を目の当たりにしていた。



ちがうよ

その子、私じゃないよ

ここで見てる私がホンモノなんだよ…



だけどその思いはかずくんには届かずに、


私はそのままその場で意識を手放した────…。





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