第15話 プールサイド①

 6月に入り、体育の授業で水泳をやることになった。小倉麻里の告白から数日後のことだ。彼女のことが無ければ、幸せな時間になるはずだったが、いつも監視されているようでとても居心地が悪い。上半身裸の姿を見られるのだから、何とも言えない気分だった。


「水泳なんて、私苦手~~。生理になったって言って、見学したいよ~」

「あら、見学してるの。ほら、せっかく健士君と一緒に入れるのに残念ね」


 雪乃があおっている。入らないなら入らないほうが都合がいい。


「わ~~ん、そんなこと言わないでよ。入るってば」

「ああよかった。水遊びだと思えばいいのよ。別に競泳選手になるわけじゃないんだから」

「ああ~~、雪乃は泳げていいな」

「まあ、小学生のころすぃみんぐスクールに通ったから」

「わあ、すごいんだ。教えてね」

「少しぐらいなら」


 休み時間の教室で、二人の会話が聞こえてきた。


 彩芽がこちらへ近づいてくる。


「健士君、プールは入るよね」

「うん、それほど得意じゃないけど、一応クロールと平泳ぎはできる」

「へえ、楽しみ」

「彩芽は泳げるの?」

「ちょっとならね、25メートルは途中で止まっちゃうかもしれない」

「まあ、きっとみんなそんなもんだよ」

「ならいいんだけどね」


 楽しみ……彩芽の水着姿


 競泳用の水着に着替えてプールサイドに出た。男子が先にそろい始めた。そこへバスタオルを腰に巻いたり肩からかけ、そろそろと女子が現れた。男子の目が一点に注がれた。その視線の先には彩芽がいた。


 肩にタオルをかけてはいるが、すらりと均整の取れた体、胸と腹部にかけての曲線が美しい。他の男子も同じようなことを考えてるんだろう。胸元やモモを覆うタイプの水着を着ていても、体のラインははっきりわかる。


「彩芽!」

「健士君、カッコいい」


 俺の体を見てそんな感想を言った。くすぐったい気持ちだけど、悪い気はしないが男子たちが羨望のまなざしでこちらを見ている。


「ちょっと痩せすぎかな」


 と二の腕と胸を見せる。


「そうでもないよ、鍛えてるから均整がとれてる」

 

 筋肉はそれなりについている。彩芽の周囲に数人の女子がいた。彼女たちも現れた瞬間男子生徒の視線を浴びている。女子は緊張するだろうな。


 そんな中に小倉麻里がいた。ひときわ小柄で、他の女子から隠れるように歩いている。歩幅も狭く、内またでちょこまか足を動かしている。何だか滑稽だ。胸元を両手で隠している。


「ああ~~ん、水泳苦手なの~~」


 という声が聞こえた。誰も得意だとは思ってないよ。視線も定まらず、きょろきょろとあたりを見回している。


「めっちゃ恥ずかしいしい~~」


 バスタオルをしっかり体に巻き付けている。あまり巻き付けすぎたものだから、脚に絡みついてしまった。


「きゃっ」


 巻いていたバスタオルがはらりと地面に落ちて、水着姿がさらけ出された。


「わあ~~~ん、ヤダ~~!」


 慌ててタオルを拾う麻里。


「大丈夫よ、どうせ泳ぐときはタオルなんか巻いてないんだから」

「だって~~」


 真っ赤な頬が日射しのもと、さらに赤くなっている。


 彩芽は、何ともやりきれない表情だ。


「ほんと、あいつ子供だよね」

「そうね、外見は」

 

 まさか、彩芽が麻里に嫉妬するなんてありえないだろうな。彩芽の横顔は涼し気で、前髪が額にかかり、風に揺れるたびに綺麗な目元がのぞく。


 すぐそばで見ると、細く見えた体からはふっくらした胸のふくらみがはっきりとわかり眩しい。ふとももから足首まではすらりと伸びて、くるぶしはきゅっと引き締まっている。


 日差しも強くなり、体がほてってくる。


 これじゃ泳ぎに集中できない。ふたりの女子から注目されている。


「へえ、健士君って素敵ねえ」

「ふ~ん、スタイル良かったんだね」

「筋肉も意外とついてる」


 と噂をする女子たちの声が聞こえる。内輪で話しているつもりなのだろうが、丸聞こえだ。ふたりだけじゃなくて、他の女子までもが俺のうわさをしていたのだ。


 「さあ、練習だ」


 準備運動が終わり,教師の声が響いた。









 






 

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