第9話 縁側でほっこり
ある日曜日の昼下がり、家に彩芽が来ることになっていた。いるものと思っていたおばあちゃんは近所の仲良しとどこかへ出かけることになり、午前中から出かけていた。
玄関の呼び鈴が鳴った。ピンポーンという音が古い家には合わないが、まあいいだろう。
「こんにちは~」
彩芽がやって来た。玄関も旧式のもので、ガラガラと横に開けて入る。改装するお金も勿体ないので、建てられえた時のままだ。
「いらっしゃい」
玄関に入って周囲を見回している。曲がりくねった年代物の木が飾ってある。
「ずいぶん古いでしょう。昭和の家だから。おじいちゃんとおばあちゃんが昔から住んでいた家だから」
「すごい古い、だけど雰囲気があるね」
「結構気に入ってる。でも隙間風が入ってくるのは困る。さあ入って」
「うちの人は?」
「母親もおばあちゃんも出かけてる」
「忙しいのね」
「みたいだね。こっちがリビングルーム。普通だから安心して」
とてもリビングとかキッチンと呼べるようなところではないが、一応ソファがありテーブルも置いてある。畳の部屋に座って生活するのは年寄りにはつらいということで、じゅうたんを敷き洋間のようにはなっている。キッチンも同じで、座りやすいようにイスとテーブルが置かれている。
リビングルームの前には廊下があり、そこから外へ出られるようになっている。家族が縁側と呼んでいる場所だ。廊下にも小さいいすが置かれているので、天気がいい日はのんびり外を眺められる。冬の日のひだまりは暖かくて気持ちがいい。
「縁側かあ、いいなあ」
彩芽は伸びをして春の日差しを浴びている。
「猫でもいると、ちょうど景色に会ってるけど、あいにくいないんだ」
「健士君の部屋は?」
「二階なんだ、後で案内するよ。何か飲み物を用意するから、好きなところに座ってて」
「じゃ、ソファに座ってる」
キッチンへ行って、冷たい飲み物を用意してテーブルに置いた。彩芽は一口飲んで、ふっと息をした。
「冷たくて美味しい」
「外歩いてくると暑いからね」
五月の日差しは意外に強く、外は照り返しで結構暑くなる。
「大学一年生の姉がいるんだけど、今日はどこかへ動物を見に行ってるようだね」
「へえ、動物が好きなの?」
「動物をこよなく愛する女、獣医学部に入ることしか頭になかった。動物を見てれば幸せなんだ」
「へえ、すごいのね。私も我が家のサニーが大好きで、よそのうちのワンコも可愛いなあって思うけど、動物のプロになるんだね」
「動物しか興味ないのかもね。人間の男とは付き合ったことないから」
「そんなことないでしょ。お姉さんにもいろいろ事情があるでしょうから」
「事情って言ってもね、特にないよ」
「へえ、そうなの。仲はいいんでしょ? 色々話すでしょ」
「まあ、普通だと思うよ」
他のうちの兄弟と比べたことはないからよくわからないが、よくいろいろなことで絡んでは来る。話好きでもある。
「たまたまみんな出かけてるんだね」
「別に珍しいことではない、みんな忙しいんだ」
「充実しているのね、羨ましい」
「そうかな」
「そうよ、縁側に座っていい?」
「どうぞ」
縁側からは庭の木が眺められる。それほど広い庭ではないが、何種類かの花やが咲き木々は緑色の葉をつけている。やっぱり春はいい。
「ゴロンと寝転がると背中が温かくなるんだ」
「へえ、やってみよう」
二人であおむけに廊下に並んだ。頭の下には座布団を置いた。
「わあ、背中があったか~い」
「そうなんだ、ここいいでしょう。結構気に入ってるんだ」
「ごろごろしてると、いやなことも忘れられそう」
「それほどでもないけど、ぼ~っとして眠くなるよ」
「う~ん、いい場所」
「気に入ったらいつでも来て、特等席だから」
「嬉しいな~~、私だけの秘密基地みたい」
縁側をこんなに気に入ってもらえるなんて、思いもよらなかった。
外からは、塀と庭木が邪魔をして見えないから、秘密基地というのも当たっているかもしれない。しかも誰もいなければ最高だ!
ごろりと横を向いたら彩芽も同時にこちらを向いて……おっと体がぶつかってしまった。
急接近、焦った。
「ほっぺたが赤い」
「健士君も」
「体が温まって、ぽうっとしてきたみたい」
「う~~ん」
これ以上横になっていると眠ってしまいそうで、体を起こした。
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