死に戻りダンジョンで死にまくる異常転生者
暁刀魚
第1話
俺の名はモトキ。
ふと、事故で死んだと思ったら異世界に転生していた。
ギルドと冒険者とダンジョンのあるテンプレ異世界。
なんとダンジョンは死に戻りあり。
死んでも手に入れたアイテムとかはロストせず、何だったら死んだときの傷とかもダンジョンから戻れば元通りとかいう神仕様らしい。
こりゃあ冒険者になるしかないな。
俺みたいな若者が冒険者になるのはよくあることなのだろう、受付さんはニコニコ丁寧に応対してくれた。
そしてその日のうちに死にました。
いやヤバイね、魔物との戦いってめっちゃ大変。
こちとら現代人で戦闘経験とか無いのに、無効は情け容赦なく殺しに来るし。
身体能力は前世と比べて格段に向上していて、まさに異世界転生って感じだったのに。
スキルを使う暇すらなかったよ。
とりあえず、探索の間に手に入れたアイテムを売り払ってその日の宿代は確保できたけど。
前途多難だなぁ。
次の日。
ダンジョンに潜るために受付に行ったら、昨日と同じ受付さんに凄い顔された。
昨日死んでましたよねって? いやまぁ死んでましたけど。
そして今日も死にました。
一応、昨日の反省を活かして今日は戦闘ではなく探索をメインにした。
宝箱を漁って資金稼ぎをして装備を整えようと思ったのだ。
で、歩き回ってたら突如足元に落とし穴。
しかも剣山で串刺して。
幸いにも心臓を一突きされたおかげで即死したから痛みはなかったけど。
罠殺意ありすぎでしょ。
三日目。
なんか受付さんが怯えてたけど、何でなんだろう。
一日歩き回ってアイテム回収したら結構溜まったので、今日も探索メインでモンスターと出くわしたら戦ってみる方針。
探索は順調だったが、モンスターには普通に負けました。
いやだって怖いんだもん突進してくるモンスター……どうしたものかなほんと。
四日目。
受付さんが青髪の温和なお姉さんから、金髪の勝ち気な女の子に変わった。
この世界は女の子のレベルが高いから全員美少女である、いいね。
ただ青髪のお姉さんは病欠らしい、早く良くなるといいな。
そろそろお金も溜まったので、モンスターを倒せるようになりたい。
装備はこれから新調するとして、まずはモンスターとの戦闘に慣れないと。
攻略のポイントはスキルだ、この世界はよくある中世風異世界だからスキルも当然ある。
「下級剣スキルLv1」というスキルを俺は最初から習得していた。
このスキルを使うと、レベルに応じていろんな攻撃スキルが使えるわけだが――
負けました。
いやぁダメだね、スキルを使って身体がそのスキルの効果通りに動いてモンスターを攻撃したところまでは良かった。
でもその後のビジョンが全く無かったせいで反撃をくらい、後はいつものヤツ。
俺って才能ない?
と思いつつ、なんかうまい方法はないかなぁと考えながら死に戻った。
五日目、受付の勝ち気な女の子の笑顔が何か引きつってる。
ダンジョンでは、スキルを使ってモンスターに挑んだけどダメでした。
スキルなしでの戦闘はありえないなってくらい、スキルの有無はでかいんだけど。
結局俺のセンスがダメダメなせいで、モンスターを倒すには至らなかった。
六日目、受付の勝ち気な女の子の目が死んでいる、仕事って辛いよね。
ダンジョンでは、少し進展があった。
俺は初日から同じモンスターと戦ってるんだけど、このモンスターの行動パターンがなんとなく解ってきたのだ。
というか、猪型のモンスターだからやることも概ね猪に準じている。
まぁ解っても殺されるんですけどね。
七日目、受付の女の子が青髪の子に戻った、元気になったみたいで良かった。
そしてこの日、俺はようやく戦闘における感覚を掴むことができた。
鍵はやはりスキルだ。
下級剣スキルによって使用できる各種攻撃系スキルは、俺が自分で考えて動くより圧倒的に洗練した動きをしている。
だから下手に俺が考えて動くより、連続でスキルを使用して動いた方が圧倒的に動きやすいのだ。
スキルはMPを消費するのではなく、一度使用すると再度使用までに感覚の発生するリキャスト制。
これを絶えず使用して、向こうの反撃を食らうことなく倒し切るのだ。
とはいえ、無限にスキルを使い続けられるわけではない。
どこかで隙は生まれ、そこを魔物に突かれたら終わりだ。
だからこそ、何度も死んで魔物の行動パターンを学習する。
相手の攻撃の隙を理解し、その隙にリキャストの時間を稼ぐ。
理解してみれば、なんともその戦い方はゲームみたいだ。
ゲーマーだった俺としては、中々やりがいがあるな。
とはいえ、慣れるのには相応に時間がかかる。
最初の一回は普通に死んだ。
普段なら、一回死んだら切り上げることにしているんだが、今回は掴みかけた感覚をものにするため連続でダンジョンに潜る。
二回、三回、四回と死んでは潜り、その度に動きが洗練していくのがわかる、楽しい。
ダンジョンの入口が冒険者ギルドの内部にあるので、行き来が楽なのも助かるな。
そうこうしているうちに、試行回数は十回に到達。
苦戦はしたものの、勝つ時はほぼ完封といえる内容だった。
楽しかった。
◯
――その男は、ある時冒険者になりたいとやってきた。
平凡な見た目の、平凡な男だ。
服装もこの世界の標準的なもの。
よくあることだ、と青髪の受付嬢は思いながら彼の冒険者登録を行った。
そしてその日のうちにダンジョンへ潜った彼は――死んだ。
残念ながら、彼には素質がなかったのだろう。
冒険者家業において素質の有無は非常に重要だ。
素質のない人間は大抵の場合、こうして冒険者になったその日のウチにダンジョンで死亡する。
悲しいが、彼にはダンジョンを諦めて別の道を歩むべきだ。
――と、思っていたら次の日、その男は再びギルドへやってきた。
思わず青髪の受付嬢は男を二度見してしまった。
だって、ありえないからだ。
一度死んだ人間が再びダンジョンに潜ることなど。
無論、中には死んでも再びダンジョンに潜る人間はいる。
しかし、どれだけ図太い人間でも一度死んだら次の日は休養にあてる。
それくらい、死というのは重いものだのだ。
男――モトキは理解していなかったが、いくら死に戻りができるとはいえこの世界の人間にとって、ダンジョンにおける死も普通の死と代わりはない。
むしろ、死んでも大丈夫という楽観的な考えが、実際に死を経験した時強い精神的負荷をもたらすのだ。
だから、この世界の人間は多くの場合、一度ダンジョンで死を経験すると二度とダンジョンにもぐれない事が多い。
死んだ次の日にダンジョンへ潜るなど、論外である。
どころか、モトキは二日連続で死亡し、三日目もダンジョンへやってきた。
そして四日目、三度の死を経験しながら元気にギルドへやってく男を見て、青髪の受付嬢は倒れた。
無理はない、とギルドは彼女に休みを与えた。
数日もすれば、この頭のおかしい男も落ち着いているだろうから――と。
不幸だったのは、モトキに冒険者としての素質が皆無だったこと。
とはいえこれは無理からぬこと、モトキには戦闘経験がなかったのだ。
この世界で冒険者を志す人間なら、ダンジョンの外に出現する魔物で得るはずの経験がなかった。
だから、ダンジョンで何度も死にながら戦い方を覚えるしかなかったのだ。
結果、青髪の受付嬢が倒れた後も男はダンジョンで死に続け――ようやく受付嬢が復帰したタイミングで――
十回連続の死に戻りを行った。
異常どころではない、それまでのギルドの歴史で一日に冒険者が複数回死亡したことすらなかったのだ。
そこに突然十回連続の死亡、一瞬にして前人未到の記録が達成されてしまった。
当然、青髪の受付嬢は再び倒れた。
ふと、誰もが疑問に思うだろう。
なぜ、モトキはここまで死を恐れないのか。
答えは簡単だ。
不慮の事故によって死亡した彼にとって、死んでも大丈夫というのはあまりにも温いのである。
本当の死を知るからこそ、死に戻りダンジョンの偽りの死が彼を恐怖させることはない。
むしろ、彼自身が恐怖の対象である。
これはそんな、転生によって死生観が壊れてしまった転生者と、そんな転生者と相性のよすぎる死に戻りダンジョンを巡る物語だ。
死に戻りダンジョンで死にまくる異常転生者 暁刀魚 @sanmaosakana
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