虫と図鑑

@otonomame

第1話 人から虫へ、、、

 自分がうわさされるのは好きだ。でも陰口かげぐちを言われるのはキラいだ。あるとき本にっていた言葉を思い出した。

”なぜみんな合わせようとするのか、自分をててまでほか共通きょうつうしたいのか私にはわからない。”

 大勢おおぜいれてつよがる人は一人にならないのではなく、一人になれないのだ。


 山岸信介きしもとしんすけは自分とはちがう人を見てときには優越感ゆうえつかんを感じ、ときには嫉妬心しっとしんをもっていた。高校2年生になってからは部活をやめて塾に通っていた。あさひる学校、夕方ゆうがたよる塾と、めだったので食生活しょくせいかつもおろそかになっていていわゆるがり勉だった。信介自身じしんは自分を食生活もおこたるほどの天才てんさいだと思っていたがテストの点数が上がらないのはたぶんちゃんとごはんを食べてないからだろう。


 ある日信介しんすけは学校の図書館に行った。最近はここのことを図書ではなく図書と言い張っている先生も多いがたたみ8じょうほどの大きさは雑貨店ざっかてんがいいレベルだ。室内しつないにこもりっきりの信介は外のものが見たくて自然コーナーを探した。彼はげらげら笑いながら本を見る生徒たちをけて本を探した。見つけるとそこにはたな一段分ほどの自然コーナーがあった。

 信介は昆虫図鑑こんちゅうずかんを手に取った。パラパラながめてみると少しったページが指のあたりに感じた。きっと誰かがやぶいたんだろう。そのページを見ると

”シャチクニンゲン”

と書かれていた。これはヤバイ。さすがの信介もここまで自分が末期まっきだとは思わなかった。目をこすりもう一度見てみるとやはり

”シャチクニンゲン”

だった。さらにおどろいたことがおこり、信介は数カ月ぶりに奇声きせいはっした。シャチクニンゲンと書かれた上部にサラリーマンの写真がっていた。目元めもとが黒く何日もてないようなかおだった。

「これは、、、」

 他のページも見ると全部の写真が人間に変わっていた。初めのページもスズメバチがでかでかとっていたのに今では頭のてっぺんが光ったオッサンに変わっていた。少年のワクワク心を返せと信介は思った。

 図鑑ずかんから目をはなしてみると周りにいた生徒たちはいなくなっていた。まずい。もう授業1分前だ。信介は急いで図鑑をもとの位置にしまい、ダッシュで教室に向かっていった。ちなみに自然コーナーは社会コーナーに名前が変わっていた。

 教室につくと信介はそーっと扉をあけてガタンと音がしないように指を少し扉の間にはさんで閉めた。そして最後尾の席について前を向いて号令をしようとした。

すると彼の目の前にはなんとコオロギになった先生が教卓きょうたくの前に立っていた。

「まじか」

 先生だけではない。他のみんなもセミやカマキリ、クワガタ、コガネムシやカメムシなど多種多様な昆虫に姿を変えていた。先生にいたってはチャームポイントのメガネがコオロギの眼に合わせて横に伸びている。

山岸やまぎし、号令」

 コオロギの口がトランスフォーマーみたいに複雑ふくざつに動いてしゃべった。

「あのー、先生は何コオロギなんですか?」

 信介が質問をすると周りからどっと笑い声が上がった。キシキシいうのかと思っていたが意外と普通の人間の声だった。

「同じコオロギ化だから種類の名前ぐらいわかるでしょう」

 僕がコオロギ!?手を見てみた。何も異変いへんはない。頭を触ってみた。うわっ!

つるつるでいつもよりかたい。

「すみません。寝ぼけてました」

「大丈夫か?最近めしって寝てるか?」

 いやもう昆虫がしゃべってる時点でメシとかそういうレベルの問題じゃない。国家の危機レベルだ。

 信介はこの状況を整理せいりするのに数週間かかった。

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