さぁ我が下僕よ!さっさと世界を平和にしなさい~頭のイカれた賢者は勇者と結婚する為、魔王をパシって世直しする~
社畜のクマさん
第1話 魔王と邪智暴虐の賢者の出会い
「ねぇそこのアンタ、トイレはどこ?」
本来訪れる者などほとんどいない部屋に一人の女性が訪れた。
開口一番に不躾極まりない質問を部屋の主にした。
部屋の主は玉座に深々と座りながら女性を見下ろす。
紫色の緩いパーマのかかった長髪の、ダウナー系だがパッと見は綺麗な人間の女賢者だ。
瞳孔は開き気味で、ダボッとした自分の体のサイズに合っていない服を着ている残念系の美人。
だが荘厳な部屋には明らかに場違いな人間だった。
クスリでもやっているのでは?と明らかにヤバそうな雰囲気を醸し出していた。
彼女の名前はメシアル・フリージア
暇潰しに分子レベルで体を分解して、空間転移ごっこをしていたらいつの間にか迷子になっていたのだ。
体を分解して風に乗れば、タンポポの綿毛より飛ぶのでは?と試したらここにたどり着いた。
結果として距離の概念を越えて3次元から4次元の狭間に迷い込んでしまった。
幸いな事に次元の狭間に城があったから良かったが、無ければ彼女は存在が消滅していたかもしれない。
「くっくっく……人間の小娘が……ここがどこで我が誰かと知っての不敬か?」
その人影は玉座に偉そうに腰を下ろしていた。褐色の肌に銀髪の頭に2本の禍々しい角の魔族。
鬼の様に非常に恐ろしい見た目をしていた。
「ここがどこで、おまえの正体が誰かなんてどうでも良い。ここは私の別荘にするから、とっとと出ていって?で、アンタはトイレがどこかだけ教えてくれれば良いから!」
恐ろしい見た目にも臆すること無く、トイレの場所を聞く。
それ以前にこの城を乗っとる気満々なようだった。
「小娘風情が……我が名は魔王ディザスト。この時空の狭間にある城に単身で乗り込むとは良い度胸だ!」
「え……あんた魔王なの?私が倒すわけにいかないしミスったなぁ……」
ポリポリと頭をかきながら独り言を呟く。だがもう遅い。彼女の失礼な態度は魔王の逆鱗に触れていた。
「我は空間を操る歴代最強の魔王。ここに来た事を悔いて死ね!」
魔王の姿は一瞬消えた。次に現れた時には彼女の首が飛んでいた。
ちなみに魔王の姿が消えたのでは無い。一瞬空間という概念を含めて全て切断されたのだ。
空間そのものを切るということで、一瞬世界事態が消える。
概念そのものを消し去る一撃……不可避で必殺の一撃……
「くくく……他愛ない!」
魔王はニヤリと笑っていた。が
「ひっどいなぁ……初対面の女子にそこまでするか?」
どこかから先ほどの女子の声がした。確かに首を落としたはずだ。彼女の身体が地面にあるのにだ……
「首が……無い!貴様……どこにいる?」
「ここ、ここ!」
魔王のいる場所の横から声が聞こえる。だが姿が見えない!
「わからん……姿を表せ!」
「ここだよー!城の壁になっちゃった!」
軽いノリだった。彼女は知らない間に城の壁と同化していた。
空間が切り取られ、首が跳ねられる時に反射的に自らを分解したのだ。
で、壁と融合した。
『分解』『融合』『再構築』
賢者であり、錬金術師である彼女の得意分野だ
(え?壁になった?訳が分からないよ……)
「は?ききき……貴様……正々堂々戦え!」
正直大切な自分の城を壊したく無かった。せめて壊すなら強敵と戦った時だけにしたかった。
「オッケー!じゃあ次は私の番ね!ポポポポーン」
(何だ?そのふざけた呪文は?)
「え?何これ?」
魔王は全く動けなかった。彼は既に城の壁と同化していたから……
知らない間に壁と融合させられていた。
そして彼女は再び人間の姿に戻る。
「さて……じゃあ正々堂々とこの城を破壊するねぇ!」
「ま、まま……待て待て待てぃ!正々堂々では無いだろう?なんだ?歴代最強の魔王の最後が壁と同化したまま一方的にボコボコとか、やっちゃいかん絵面だろう!やられたら末代まで恥扱いだ。止めてくれ!」
身動きが全く取れない。空間を操ることも出来ない。
「え?じゃあどうしたいの?」
「そりゃ……堂々とぶつかり合ってだな……」
「オッケー!しょうがない!分解!」
一瞬で城の壁ごと魔王の姿は粉塵と化した。
「え?」
魔王は霧散しながらも声は出た。仕組みは分からない。
「じゃあここから堂々と城ごと
(それ……人間の発想じゃない……怖い)
「いやいやいや……違う、そうじゃない!そういうぶつかり合うじゃない。我とお前で堂々とだな?」
「堂々って言う以前に、アンタ不意打ちしてきたじゃん?そんな奴の言うことに説得力無いよ?」
(くっ。それもそうだ……どうして殺す前に一言かけなかったんだ……)
魔王は後悔していた。こんな事になるとは思わなかった。
「せめて最後に……何かさせてくれませんか?」
魔王は死を悟る。歴代屈指の情けない死……せめて何か悔いの無い事をしてから彼は死にたかった。
「じゃあ便器になって?最後にトイレとしてアンタを活用してあげるから」
魔王はいつの間にか粉塵から床と同化していた。
床に開いた空洞。魔王の口だ。それを便器と見立て、彼女はスカートを脱ぎ、用を済ませようとした。
「いやいやいやいや……待て待て待てぃ!何をしようとしている。いや……想像はつくが」
「いや……アンタ何かさせてくれって言ったじゃん。トイレの場所分からないし、最後に便所として活用してあげようかと……」
スカートを再びはいた。
(もうやだ。あ、これアカン奴や。どうして我はさっきトイレの場所を教えなかったのだ?)
魔王ディザストの心はポッキリと折れた。何をやってもムダなのだ。
そもそも何もさせて貰えないのだ……
圧倒的な力の差……
何もさせて貰えない上に、恥をかく死に方しか選ばせて貰えない。
戦士として死ねない事にあまりに無力感を感じていた。
「……完膚なきまでの敗けです…………」
床にめり込んだ魔王は大口を開けたまま呟く。精神が崩壊しかけていた……
「魔王クンさぁ……弱い癖に何でそこまで偉そうだったの?」
「……だって魔族の王だから……歴代最強だってみんなに言われてきたから……」
魔王は床にめり込んだまま今にも泣きそうだった。
だが涙は出なかった。床の成分が涙腺に詰まっていたからだ……
「情けない……」
「くっ……もはや我も……魔族もここまでか!殺すなら殺せぇ!」
魔王はR18の女騎士みたいに何も出来ない無力感を感じていた。
ここからオークに蹂躙される様な……
「は?殺さねぇよ?」
「え?」
「いや……だって魔王を倒すのは勇者ホープじゃなきゃいけないもん」
どうやら床で便器になったまま死ぬ結末だけは避けられたと、少しホッとした魔王ディザス卜であった。
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