第18話
「つまり、君たちは兄弟ということになるのか」
周りに聞かれないために家に連れてきて説明したが、さらに2人で一緒に住んでいると知ってかなり驚いたようだ。
「親同士が再婚したからそうなる。今は2人で暮らしてるけど、親父達が新婚旅行から帰ってくるまでの話なんだ」
「最近、
「まぁそんなとこかな」
それだけではない気はするが・・・。
「元々おかしかったけどね」
サラッと静が言ってくる。
「いらんこと言って…言わないでね、静さん」
引き攣り笑いで涼介が言うと、静はイタズラっぽく笑った。
「そろそろ帰るよ」
塩田は2人が兄弟であることを秘密にすることを約束して、帰って行った。
塩田が帰って一息つくと、今日はシチューを作って食卓に並べた。
「おいしそー」
早速静が食べ始める。
「そういえば、お母さんたちもうすぐ帰って来るよね」
カレンダーの日付に赤丸を入れている。
「あと2週間ほどだな」
「そこから4人での生活か~」
「イヤなのかよ?」
「だって結構今は自由だし?親がいたらそういうわけにもいかないなぁって」
「俺は家事しなくてよくなるからいいけどよ」
「あーお母さんのお店って22時までやってるし、多分家事はかわらず涼介の担当だよ」
「マジ?」
「マジマジ」
「せめて分担しようぜ」
「イヤだよ」
静が逃げようと立ち上がったところで、涼介が静の腕をつかんだ。
静がバランスを崩して倒れそうになり、涼介も引っ張られて倒れていく。
ドンッ
「痛っ・・・」
涼介が目を開けると、目の前に静の顔がある。
「し、静・・?」
涼介の顔の横に手をついて静が覆いかぶさっているような体勢になっているようだ。
静がまっすぐ涼介を見ている。
「静、怒ってんの・・」
静の顔が近づいてきて、唇に何かが触れた。
放心状態になっている涼介をよそに、静は涼介から離れると、「シチュー冷める」と食卓に戻っていく。
「・・・今のなんだ・・・?」
涼介はしばらく動けなかった。
□■□
その後の晩御飯も、翌日も何事もなかったように静は過ごしている。
高校の制服に着替え、トーストをかじっている。
欠伸もして眠そうだ。
「・・・コーヒー」
「ありがとう」
涼介からコーヒーを受け取って静は一口飲む。
(明らかにキス・・・したよな?)
昨日のことを思い出してぼんやりしていると、静が怪訝な顔でこっちを見ている。
「そろそろ準備しないと遅刻するよ?」
「お、おぅ」
涼介は時計を見て慌てて準備をすると、昨日と同じように静を乗せて自転車で走り始めた。
静は上機嫌なのか後ろから鼻歌が聞こえてくる。
涼介は、自転車を漕いでいる間も背中に温かみを感じて、昨日のことも思い出してしまう。
(一体、あれはどういうことなのか・・・)
「あのさ、静」
「何―?」
「昨日のことなんだけどよ」
「昨日?」
「そう、昨日のこと」
「昨日の何?」
「いや、そりゃあ昨日のあの俺が静を引っ張って、バーンってなったやつだよ」
「はぁ?」
「いや、だから昨日の・・・」
「聞こえないんだけど?」
「いや、だから・・・もういい」
涼介は声を上げようとしたが、説明するのが恥ずかしすぎて諦めた。
そもそもその答えを聞いてどうするつもりなのか、答えを聞くのも怖い気がした。
学校近くの公園に着いて自転車を降りて歩きかけた静に、「放課後もここな」と声をかけた。
静はくるっと振り返る。
「もしかしてあれファーストキスだった?」
「え・・・」
答えに困る涼介をよそに「また放課後ね」といたずらっぽく笑って学校へ向かっていった。
「何なんだよ、あいつ・・・」
そう言って歩きかけたところで、ペダルにつまずいて自転車ごとこけた。
「痛っ・・・。くそ・・・」
なんだか顔が熱い。
触ると、鼻血が出ているようだ。
(どうしてこんな目に・・・!)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます