感想⑧
「それは天使が変えた花」花恋亡様
https://kakuyomu.jp/works/16818093089743781141
学校という閉鎖的な空間で起きた一連の事件。人間は、とりわけ子供は異物とみなした存在に対してどこまでも残酷になれる生き物だと思います。転校が多かったとりちゃんにも多少はいじめられた経験があるので、された側の寄る辺ない気持ちは分かるつもりです。(脳筋なので超反撃しましたけど)
読んでいて息苦しくなるほどの言葉の奔流に心を掻き乱されました。前半部分はおそらく意図的に感情の表現を排したのだと思われますが、淡々と「トウカ」の行動を見つめる「私」の眼差しが切ないです。それが後半部分で「僕」の感情的な言葉の効果によって一気に胸に迫ってきます。花の名前が出て来ると花言葉や由来を調べるとりちゃんは、スノードロップの使い方が絶妙だなと感心しきりでした。計算されつくしておられる……!
ひどく残酷でそれでいてどこか美しく甘さを感じる作品でした。素晴らしい。
「猫の楽園」川中島ケイ様
https://kakuyomu.jp/works/16818093090844460110
こんな楽園に行きたいですニャン。のっけからすみません。人がAIに囲まれて働く環境が普通になった203X年という、あり得そうな近未来のお話。猫とどう関係してくるのかしらと読み進め、ワンオペでレストランを管理する主人公に深く共感して同情してしまいました。とりちゃんは自営なので一人で働いていますが、誰かに任せることも出来ないしやることは無限に湧いてくるのですよね。わかるわかる、月末はだいたいヒィヒィ言っています。
話が逸れました。人間以外は猫型のロボットたちが働くレストランで、自ら学習し意識を持ったロボットが主人公を癒して、快適な職場環境を作り上げていく……なんというマーベラスな進化!
キャッチコピーにも「誰かのために働く人々に捧げる、近未来にあるかもしれない奇跡の物語」とあるように、人にもロボットにもこんな優しい未来が訪れて欲しいですね。うちにも来て。(願望駄々洩れ)
「淡い気持ちを抱く私と消え去った君」茶都 うなべ様
https://kakuyomu.jp/works/16818093090841311275
失恋には海が似合うと思うのです。特に冬の海。海を描いた画家はたくさんいましたが、青が特徴的な東山魁夷の絵が浮かびました。日本の四季や自然を情感豊かに描いた彼の海の風景画が特にお気に入りです。
言えなかった想いを手紙に託して、クリスマスの10分前に海を見つめる主人公の姿が、そのまま果てしない海の風景に溶けてしまいそうな儚さを感じさせます。寄せては返す波と、彼との記憶を反芻する主人公が悲しく調和していると思いました。
失恋は辛いですよね。一人で耐えるのはもっと辛い(一人になりたい人もいるかもしれませんが)。
もしとりちゃんが失恋したら思い出の品は全部丸めて海に豪快に投げ近隣住民にド叱られるところまでがセットだと思います。(こら)もしとりちゃんが彼女の友達ならマフラーやストールでぐるぐる巻きにしているところです。彼女が再び動き出せるまで隣に寄り添って、「落ち着いたらあったかいココアでも飲みに行こうよ」と言ってあげたいです。
「繋ぐと星座になるような」篠崎 時博様
https://kakuyomu.jp/works/16818093090845334885
ちょっとだけ子供の頃の話をさせてください。保育園で仲良しだったK君は毎日とりちゃんに「ちびくろサンボ」の話を一言一句違わず話してくれました。機嫌がいい時はただ身体を揺らしながら黙って傍にいます。お話以外で彼の言葉を聞いたことはないのですが、とりちゃんは勝手に仲良しだと思っていました。ついでに言えば、とりちゃんの実家はたくさんの他人が出入りする場所だったので、人に慣れていて心理的な垣根がとても低かったのです。
軽度の障害がある大星君もK君と似たような感じなのかなと想像しました。彼のことを最初は鬱陶しく思っていた同僚の白井さんですが、社長から彼のことを聞き、彼と向き合ううちに考えが変わっていくところが素敵だと思いました。いわゆる健常者相手でもどんな思いや事情を抱えているか、誰かを知ることは簡単ではないけれど、ほんの少し見方を変えるだけで理解が深まると思います。その大きさや明るさは様々ですが、誰もが星のように煌めいて生きていると気付かせてくれる優しいお話ですね。
あと、白井さんのツンデレと素直な大星君のやり取りがツボでした。(*´艸`*)
「矮」心沢 みうら様
https://kakuyomu.jp/works/16818093090718462773
短いタイトルに凝縮された意味が、読み進めるうちに明かされてきます。これはニンゲンのツガイを観察する異星人からの目線でしたが、意図的に身体的特徴に触れずに書いたと仮定して、哲学的に考えると「アイ」を知らない彼もしくは彼女の探求の軌跡とも取れました。流行の形を追うのでなければ、説明しすぎない描き方のほうが哲学的な持ち味が生かされて良いと思います。愛とはなんなのか、常に人類(それ以外も?)の頭を悩ませるものですが、本当は言葉以上に五感で感じるものかもしれませんね。
とりちゃんの好きな作品に「ファンタスティック・プラネット」という脳味噌をガタガタ揺さぶるサブリミナルな古いアニメ映画があります。難解だけど映像的にも美しくてクセになる物語です。
異星人はもしかしたらこんな姿形かも、と色々想像しながら読むのも楽しかったです。音の使い方も特徴的で印象に残りました。
皆様、良作をありがとうございました。
参考:東山魁夷
ヘレン・バナーマン「ちびくろサンボ」
ルネ・ラルー「ファンタスティック・プラネット」
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