第11話 超人気配信者からのお願い

「……うそ、だろ?」


 壊れた自分のスマホの代わりに、ルシェルからスマホを借りてSNSを見ていた俺は、思わずそうぼやいていた。


 トイッターのトレンドは、「最弱職」「【銃士ガンナー】、」「ドラゴンキラー」などなど、上位の検索を独占。

 各種テレビ局やネットニュースも俺の話題を取り上げている。


 とりあえず、本名や高校についてはバレていないようだが……顔が割れてしまっている以上、広まるのは時間の問題だ。

 というか、明日学校へ行って、みんなと顔を合わせるときにいろいろ言われるよな。


「……なあ、ルシェル。これ全部エイプリルフールの嘘ってわけじゃないよね?」

「今が6月だってことを忘れていないのなら、おぬしとてわかるじゃろう」

「だよなぁ……」


 俺は思わず肩を落とす。

 平穏な生活が送りたいだけなのに、どうしてこうなった?


「大体、おぬしもこうなることは予測できておったじゃろう? そこの娘が配信しておったのを見て、脇目も振らずに助けに行ったのは、どこの誰じゃったかのう?」

「え?」

「うぐっ……それは」


 驚いたような紗菜さんの視線を受けながら、俺は口ごもる。

 正直、紗菜さんを助ける一心で忘れていた。

 カメラが回っているから全国にその姿が映ってしまうとか、そんなことを考えている余裕がなかったのだ。


「はぁ、まったく。そんなことじゃろうと思ったよ」


 ルシェルは、俺の内心を悟ったようにため息をついた。


「どうせ、後先考えず身体が動いて助けに行ったんじゃろう? まったく、我のときからそうじゃ……(まあ、そういうところが好ましいんじゃがの)」

「? 何か言った?」

「な、なんでもない! 気にするな!」


 顔を赤くしてブンブン手を振るルシェルに疑問を抱きつつ、俺はこれからのことを考える。


 学校に行ったらいろいろ問い詰められることは確定だ。

 いずれ、正体もバレてしまうことだろう。

 それについて、今更とやかく言うつもりはない。起きてしまったことは仕方ないのだ。


「まあ、プライベートまで邪魔されることはないし、それでよしとするか」

「じゃのう。ここは最難関ダンジョン《アビス》の最下層。許可無き者の立ち入りは拒む。ここまで入ってこれるヤツがいるなら、それこそ賞賛すべき勇者か、あるいは

「そうだね」


 まあとにかく、ここにいる限り面倒ごとは起こらない。

 心配なのは紗菜さんの方だな。今回の生配信が拡散されたこともあり、登録者がこの数時間で30万人近く増えている。

 ただでさえ有名な配信者なのに、追求やらインタビューで大変になるはずだ。


 まあ、本人もそれが仕事でやっているのだろうから、特に気にしているなんてことは――

 

「あ、あの……!」


 そのとき、不意に紗菜さんが声をかけてきた。

 振り返ると、どこか思い詰めたような顔で、俺を見ている。


「どうしたの?」

「……い、いえ。なんでもありません」


 だが、すぐに俺から目を逸らしてしまう。

 だというのに、両手は毛布をぎゅっと掴んでいて、明らかに顔色もよくない。

 明らかに、さっきから様子がおかしい。


 俺が、「すぐに家にも帰れるはず」と言ったあたりからだったか?

 そんなにおかしなこと言ったつもりはないんだが。しかし、こうまで怯えられると調子が狂うな。


「別に、言いたいことがあるなら遠慮無く言ってくれ」

「で、ですが……こんなこと頼んだら、その、迷惑をかけてしまうので」

「別にいいさ。気にしないよ」

「そうじゃぞ。このお人好しはむしろ、美少女にこき使われても、鼻の下を伸ばして歓喜するドエMで――んぎゃぁああああああああああああっ!」


 ドヤ顔で人を貶し始めたルシェルのこめかみをグリグリする。


 とはいえ、ルシェルのそれは言い過ぎにしても、女の子に頼って貰えるのは、男としても嬉しくないと言えば嘘になる。

 特に、紗菜さんには冷たいクラスメイトと違い、助けて貰った恩もあるからな。


「ま、なんでも好きに頼ってくれていいいよ」

「ほ、本当にいいんですか?」

「ああ!」

「そ、それじゃあ――」


 紗菜さんは、一つ深呼吸をしてから、意を決したように言った。


「私を――この家で一緒に住まわせてください!」

「ああ、全く問題な――え?」


 今、この子、なんつった??


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