#06 武器を使う悪魔
エスカルを除いて、青き悪魔たちはばらばらになって床に散らばってしまった。それをボニーが「ご馳走様」と喰らって行く。
「さて、お前は俺がいただく」
クライドが歩み寄ると、エスカルの座っていた車いすのひじ掛けが火を噴いた。
ひじ掛けが機銃になっていた。
クライドが吹っ飛ぶ。穴だらけになった。
「私に逆らうからだ。けっけっけ」エスカルが鶏のような声で笑った。
「おお~いてえ」とクライドが立ち上がる。
悪魔に実体はない。穴だらけになっても消えない。
「穴だらけにされたのは二度目だ。今度はこちらの番だ」
クライドは高速で動くことができる。姿を消すと、一瞬で別の場所に現れ、三度、手刀を切った。見えない鎌が飛んで行く。
だが、次の瞬間、エスカルが座る椅子が変形を始め、あっという間に円筒の筒に姿を変えた。
クライドの放った鎌を跳ね返す。
「私はどんなものでもつくりだすことができる。はっは~」
エスカルが筒の中で高笑いする。
クライドは高速で移動し、場所を変えながら手刀を放つが、相手は円筒形だ。どこからでも手刀を跳ね返した。
「うぬぬ・・・」クライドが焦る。
クライドが動きを止めると、円筒形の一部に銃口が開く。銃口が火を噴く。クライドは再び、全身に銃弾を浴びて、弾け飛んだ。
「うごあ~!」
「馬鹿なやつめ。私に戦いを挑んだものがどうなるか、たっぷりと味わうと良い。このまま肉片になるまで、ばらばらにしてやる。そして、掃除機で吸い込んで、まとめて喰らってやる」
クライドが手刀を放つが、円筒はびくともしない。
クライドは円筒形の筒の上に飛び乗ると、ガンガンと殴り始めた。だが、筒はびくともしない。手刀を繰り出してみたが、跳ね返されて、我が身を傷つけてしまった。
大勢は決したかのように見えた。
「手こずっているようね。力を貸そうか?」
クライドが苦戦する様子を、部屋の隅で退屈そうに眺めていたボニーが尋ねた。
「ふん。お前の力なぞ、借りなくても大丈夫だ」
「そう。とても大丈夫そうに見えないけど」
「こいつはご馳走だ。お前にはやらない」
「もう十分、喰らった。早くしないと、やつらが来るわよ」
「そうだったな」
「私が鳥籠から燻り出してやる!」
そう言うとボニーが「あ――!」とエスカルが立て籠もる円筒形の筒に向かって叫んだ。ボニーの声は段々、大きくなって、円筒形の筒の中で、わんわんと反響し始めた。音は更に大きくなる。
「ぐええええ~! 頭が割れそうだ」
筒の中からエスカルが悲鳴を上げた。
「そこから出て来なさい。もっと音量を上げてやる」
ボニーがそう言うと、大音響になった音が円筒形の筒の中で反射し、筒がガタガタと揺れ始めた。
「うぬぬぬ! そっくりお返ししてやる」
エスカルは円筒形だった防御壁を拡声器に変え、ボニーに向けて音を返そうとした。
「馬鹿め!」
その瞬間、背後からクライドが手刀を振るう。
「ぎえっ!」と悲鳴を上げて、エスカルの背中が切れた。
「私は自由に音を操ることができるのよ」
ボニーは音を自由に操ることができる能力を持っていたのだ。ボニーは自分に向けた音を反転させると、エスカルの頭の中へと送り込んだ。
「うぎゃ~!」エスカルが頭を抱えて悲鳴を上げる。更にクライドが手刀で見えない鎌を叩き込んだ。
エスカルの体が細切れになって行く。
「いただき~」
クライドが床に散らばったエスカルを拾い集めながら喰らって行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます