第15話 ナンパ
ヒバリに手を引かれて、カイは海へと入って行った。海の水の冷たさに悲鳴のような、歓喜の声を上げた。二人は高校生らしくはしゃいでいた。
「冷たくて気持ちいいね!」
「そうですね!」
ヒバリは水を手ですくってカイに掛けた。カイも水をすくいヒバリに掛け返した。ヒバリに掛かった水は、ヒバリのきめ細やかな肌に弾かれていた。
水で濡れたヒバリは普段と違う色気を放っていた。髪が肌に張り付き、水で濡れて肌が煌めいていた。
そんなヒバリの姿にドキドキしながら、カイはヒバリと遊ぶのを楽しんだ。
そして太陽が真上に来るまで遊んだヒバリとカイは、満足して一旦海から上がった。そしてパラソルの下に行き、飲み物を飲んで休憩した。
「楽しいねー!」
ヒバリとカイが雑談していると、そこにチャラそうな二人組の男が近づいて来た。その男たちはヒバリを見るとニヤついて、何かを話していた。
そして男たちは横にカイがいるのにも関わらず、堂々とヒバリをナンパし始めた。
「ねぇねぇ、そこの可愛い子! 暇じゃない? 俺たちと遊ばない?」
男たちはヒバリに下卑た目を向けながら話しかけた。ヒバリは男たちに話しかけられ、眉間に皺を寄せ、口元を歪ませて、明らかに不機嫌ですという表情をした。
ヒバリは男たちの声かけを無視した。しかし男たちはヒバリの拒絶している態度に気付かず、声を掛け続けた。
「無視しないでよー。絶対楽しませるから! 一緒に遊ぼうぜ!」
カイはそれを真横で見て、アワアワとしているばかりで、どう対応すればいいのかわからなかった。
するとヒバリは大胆な行動に出た。ヒバリはカイに抱きついた。
「彼氏がいるから、もう間に合ってます! どっか行ってください!」
カイは突然ヒバリに抱きつかれて、ヒバリの柔らかい体、特に豊満な胸の感触にキャパオーバーを起こした。カイは赤くなり、顔から湯気が出そうだった。
男たちはそれでやっとカイを認識したようだった。しかしそれでも男たちはヒバリをナンパするのを諦めなかった。
「そんなひょろい奴、放っておいて良いって! 俺たちと一緒に行こうぜ!」
ヒバリはそう言う男たちを睨んだ。一触即発の空気が流れたタイミングで、ヒバリたちの元にビーチの警備員がやって来た。
「ちょっと君たち! この子らが嫌がってるでしょ! やめなさい!」
警備員は男たちに注意した。すると男たちは不服そうな顔をしながらも、ヒバリとカイから離れた。
ようやく男たちがいなくなり、ヒバリはようやく表情を元に戻した。
「ほんとひどい奴ら! あたしには若夏くんがいるのに!」
ヒバリはカイに抱きつくのを止めた。それでようやくカイは正気に戻った。カイは周りを見て男たちがいなくなったのに気付いた。
そして怒るヒバリの横でカイは自己嫌悪に陥っていた。ナンパされたヒバリを守れなかったことを悔いたのだ。
カイは彼氏として格好良くヒバリを守れなかった自分を責めた。
「ごめんなさい……。僕、何も出来なくて……」
「もう、気にしなくて良いよ! 悪いのはあいつらなんだから! 元気出して!」
謝るカイ。しかしヒバリは全く気にしていなかった。凹むカイを元気づけるため、ヒバリはカイの手を引き、海の家に向かった。
「美味しいものでも食べて元気になったら、また遊ぼうよ!」
「……はい!」
そして海の家で軽食を取り、ヒバリと会話したカイは何とか元気を取り戻した。
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