第13話 初ダンジョン
いざ!ギルドへ参らん!
「まずはチェイスを預けよう。」
「…うん!」
そうだったそうだった。別にチェイスのことを忘れていたわけじゃない。ここまで背中に乗せてくれたのだ。感謝こそすれ、無碍に扱うなどあり得ない。ただ、そう少し浮かれていただけだ。
「…」
「バッフ」
なぜか睨まれているが、なぜだろう…この世界の動物は人間よりも人間らしいな。
チェイスを預けて改めてギルドの扉の前まで戻ってくる。
「行こう」
「うん!」
ちなみに扉はずっと開いているので、ずっと中は見えていた。
「うおおおおお」
今日何度目かわからない雄叫びをあげてギルド内を物色する。体は子どもなので周りの人には微笑ましいものでも見るかのように見守られている。
ギルドの中はゲームと大きく変わらない。いや、全く同じかもしれない。外から入ってきて左側を見れば、クエストが貼ってある掲示板が壁にズラーっと並んでいる。右の空間にはベンチ、テーブル、椅子があり、冒険者が作戦会議をしたり、報酬の山分け、パーティメンバーの募集などなど様々な用途で使われている。真正面にはギルド職員の受付がこれまたズラーっと端から端まで並べられている。今現在は、受付にほとんど職員がおらず、冒険者も少ない。忙しくなったら受付に入るのだろう。
受付の左端、若い男性が作業をしながら受付に座っている。作業中に申し訳ないが、受付に座っているということは話しかけられるのも覚悟の上だろう。
父は俺に任せてくれる。「アレンの登録なのだからアレンがやれ」だそうだ。自主性に任せすぎでは…。
「すみません!ギルドの登録をしたいです!」
受付は5歳の俺からしたら高いので、存在をアピールするように右手を挙げ、少し離れたところから話しかける。
「はい、ギルドの登録ですね、こちらの用紙に個人情報のご記入をお願いします。」
「はい!」
まだ5歳だから何か言われるかもと思っていたが、特になかった。職員さんの反応からこの年齢での登録は珍しく無い事がわかり、若干の安堵を覚えた。
「書きました!」
「確認いたします…」
名前やら住んでいるところやらを書いた書類を確認される。なんだか悪いことしているわけでもないのにドキドキする。
「確認いたしました、それでは本日の正午から試験を開始いたしますので、正午前にもう一度受付までお越しください。」
「はい!ありがとうございます」
どうやら、無事に試験を受けられるようだ。だが、正午まで時間がある…何をやって時間を潰すんだろう。
「正午まで何するの?」
「何をしたい?」
うーむ逆に聞かれてしまった。今やりたいことなんて…あった。
「じゃー武器屋に行きたい!」
「…わかった。」
◯
武器にはピンからキリまである。だが、俺の今持っている魔石を全て売っても一番安い武器すら買えないだろう。
じゃーなぜいきたいのかって?そりゃあロマンだ。かっこいい剣を見ればテンションが上がり、強い剣を見ればワクワクするそれが男ってものだろう。
武器屋はギルドの配慮か、ギルドのすぐ近くにある。
武器屋の外観はギルドと似たような造りだったので特に驚愕などはせずギルドと同じく大きい入り口に向かう。
中に入ってみると、いろいろな武器が種類ごとに並んでいる。
「おお」
外観はギルドに似ていても中は全く違う。色々な武器が棚に並んでいて高揚感が胸中を占める。
取り敢えず端から武器を見ていく。…この町が初心者の町だからか、弱い武器ばかりだ。うーん沢山の武器が並んでいるのは壮観だが、これにはちょっと残念だ。
ちなみに武器だが、HPがある状態の時に使えば、壊れることはない。ゲームでも盾で防御しているのに少しダメージを喰らうのは武器の耐久値をHPが肩代わりしてくれているのだろう。
武器を見ているとあっという間に時間は過ぎるもので、10級試験の時間が近づいてきたので、ギルドに移動する。
「10級試験を受けにきました!アレンです」
「はい、お待ちしておりました。ご案内します。お連れ様もどうぞ。」
受付の職員さんに案内され、ギルドに併設されている建物にたどり着き、ここで待つように言われる。
建物の中には、下に降る階段と、ギルド職員が数名、ばらばらの格好をした少年少女が数人いた。
しばらく待っていると職員の一人が徐に喋り始めた。
「これから10級冒険者試験を始めます。試験の内容は10級ダンジョンの最奥にいるダンジョンボスの討伐ですが、ダンジョンに潜る前にギルドの基本情報をお話しいたします。」
ギルドの基本情報か…確かに詳しくは知らない。職員さんの話を聴けばゲーム時代との差異なども分かるかもしれない。集中して聴こう。
「冒険者ギルドは世界各国にあり、女神様が創立したと言われている組織です。冒険者は10級冒険者から1級冒険者まであり、ランクが高いほど、見返りが大きくなります。素材買取価格の上昇、ギルド限定施設の利用、クエスト成功報酬増大などがあります。指名依頼などもされるかもしれません。」
今のところはゲーム時代と変わらないな。ゲーム時代はランクを上げる事によって閲覧できるようになる禁書についてのサブクエストや貴族からの指名依頼なども有り、飽きる事なくゲームを進められた。現実でも楽しみだ。
「冒険者のランクはソロで倒せる魔物のランクと同格です。5級冒険者なら5級モンスターを倒すことができるということです。ただし、ダンジョンは同じ冒険者ランクの方が四人パーティを組んで同じダンジョンランクを安全踏破できる難易度ですので、冒険者ランクがダンジョンと同じだからと言って、ソロで潜るのはお勧めしません。当然、あくまで目安です。相性の問題で、同じランクのモンスターに勝てない可能性もございますのでご注意ください。」
パーティか…俺はこの世界の隅から隅まで楽しみたいから固定パーティは組まないつもりだがパーティでモンスターを倒すと言うのは憧れる。
「10級冒険者試験は実施試験ですが、9級以上の試験は実績と貢献度で決まります。上級冒険者になるには人格も判断基準ですので、品行方正でなければなりません。」
つらつらと、ギルドの職員さんがギルドの成り立ちから冒険者ランクの仕組みまで話してくれる。俺にとってはとてもありがたいが、同じ試験を受けるであろう冒険者の卵たちはおそらく理解していないだろう。平民はまず学校なんて通わないし、お金もないのだ。
「…続きはダンジョンの最下層に向かいながらしましょう。」
大半が理解していないのを悟ったのか、ありがたい提案をしてくれる。
なんだがこの職員さんを見ていると、前世の先生を思い出す。どことなく教師の雰囲気をしているのだ。
「では、私が先導しますので、列を崩さずに着いてきてください。」
おお!先生っぽい。
「ここにいる大勢の方にとってダンジョンは初めてでしょう。ダンジョンの基本情報をお教えします。重要な話なのでよく聞いてください。」
階段を降りながら先生が説明してくれる。
「はい!」
思わず勝手に口が動いてしまい、冒険者の卵たちの視線を集めてしまう。
お、ギルド職員さんは少し嬉しそうだ。
「…ダンジョンとは、モンスターと同じようなもの。と言う説などが有りますが実際にはよくわかっていません。ダンジョンにも冒険者と同じようにランク付けがされていて、皆さんがこれから向かうダンジョン、いえ、すでにダンジョンの中ですね。このダンジョンは10級ダンジョン、現地型と呼ばれるダンジョンです。10級ダンジョンは10階層、9級ダンジョンは20階層というように級が上がるたびに10層ずつ深くなると言われています。そして型ですが、このダンジョンはそのまま現実に現界していますが、異界型ダンジョンというものもあります。異界型はダンジョンゲートというものを潜った先にある異界にダンジョンがあるのです。他にも塔型と呼ばれる上に目指すタイプのダンジョンなども存在しますが、長くなるので割愛します。興味がある方は試験後に聞きにいらしてください。」
おお、めちゃくちゃ詳しく教えてくれる…。すんごい親切だな。さすがギルドだ…。
「今回のダンジョンは見ての通り現地型の洞窟で最も単純なダンジョンです。ダンジョンの壁がほんのり光っていて視界も良好。10級ダンジョンなので罠もありません。ですのでこのダンジョンで最も気をつける必要があるのは道です。洞窟のダンジョンは道が似ていて迷いやすいのでマッピングは必須です。ちなみにギルドで地図を販売している場合がありますのでマッピングが面倒という方はお買い求めください。」
おお、自然な誘導だ…。さすがギルド。
「ダンジョンの中には稀に宝箱があり、ダンジョンランクが高いダンジョンほどいい宝箱の傾向があります。ですが、宝箱には罠がある可能性もあるので対策をしてから開けましょう。」
うんうん、宝箱はロマンだ。
「ダンジョンには安全地帯と呼ばれるモンスターが出現せず、入っても来ない休むには絶好の場所が存在します。このダンジョンの安全地帯は10階層のボス部屋の前です。安全地帯にはよく冒険者が滞在しているので、ダンジョン内で資源が尽き、地上まで帰還するのが困難な場合、安全地帯にいるかもしれない冒険者に助けを求めるのも選択肢の一つです。ダンジョンに入る前に安全地帯だけは覚えておくのが賢明でしょう。」
安全地帯か…ゲーム時代はダンジョンにはプレイヤーしかいなくてNPCはいなかった。俺にはインベントリがあるし、一人でダンジョンに入る前には資源を買い漁ってから入るだろうけど一応覚えておこう。
「ちなみに本日は、試験のためにダンジョンを貸切にしているので他の冒険者はいません。」
なるほど、だから冒険者が一人もいないのか。
「また、本来ならばダンジョンの道中でモンスターに襲われるでしょうが、試験をスムーズにに進行するため、冒険者に対してクエストを出し、ダンジョンのモンスターを予め掃討しています。」
おおお!まじか!ギルドすごいな…
「ダンジョンの道中にいるモンスターは基本的には同じランク以下のモンスターが出現しますが、稀に変異個体と呼ばれるそのダンジョンランクよりも1〜2ランク高いモンスターが出現しますのでダンジョンに挑む際は安全マージンを十分に取ることを推奨しています。」
そう、フォレ森のダンジョンに突撃しなかったのはこれが理由だ。もし8級モンスターが湧いていて、戦う事になればかなりまずい。
「道中で変異個体に出会うのも不運ですが、最悪なのはボスが変異個体の場合です。ダンジョンボスはダンジョンランクの1つ上のモンスターです。つまりこのダンジョンなら9級モンスターがボスモンスターです。つまりボスが変異個体だった場合7級モンスターの可能性があるのです。」
うん、そう、そうなのだ。俺もゲームではダンジョンボスの変異個体と戦い、負けた事がある。現実化した事で、遭難や、資源が尽きるなどの不安要素があるかもしれないがそれは対策していればなんとかなる。一番怖いのはボスの変異個体だ。自分の適性ランクよりも2ランクも上のモンスターが出てきたら一撃でやられることもあるかもしれない。気を引き締めよう。
冒険者の卵達も変異個体の脅威を思い知ったのか真剣な顔をするものに、怯えるもの、逃げればなんとかなるだろうと楽観するもの、様々だ。
「脅かしてしまったようで申し訳ありません。変異個体などなかなか出るものではないです。しっかり身の丈に合ったダンジョンにバランスのいいパーティメンバーで潜れば変異個体であろうと討伐できるでしょう。」
ふむふむ、真剣な雰囲気にして話に引き込ませ、最後に焚き付けた。
さすが先生だ。
先生の話に聞き入っている間に、いつのまにかダンジョン10階層。つまり最下層のボス部屋の前の安全地帯にたどり着いていた。
10級ダンジョンが狭いというのもあるが、最短ルートで来たというのもでかいだろう。
「さて、それでは試験の詳しい内容についてお話しします。」
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